シリア 反政府勢力が中部でも攻勢強める 人道状況の悪化も懸念

内戦が続く中東のシリアでは、反政府勢力が政権側が支配してきた北部の主要都市に対して、大規模な攻撃を行い大部分を制圧し、中部でも攻勢を強めています。戦闘の拡大に加えて、避難民の増加など人道状況の悪化も懸念されています。

シリア国内の情報を集めているシリア人権監視団によりますと、11月27日以降、一部の反政府勢力がアサド政権が支配してきた北部の主要都市アレッポなどに向けて大規模な攻撃をはじめました。

この攻撃で、新たに反政府勢力が、アレッポでは空港を支配下においたほか、首都・ダマスカスにもつながる交通の要衝、中部ハマ県にある一部の集落も制圧したとしています。

シリアのアサド大統領は30日、UAE=アラブ首長国連邦のムハンマド大統領との電話会談で「シリアはすべてのテロリストとその支援者を打ち負かすことができる」と述べるなど反撃の構えを見せています。

また、アサド政権を支援するロシアは、反政府勢力の拠点などに空爆を行ったと伝えられています。

シリア人権監視団によりますと、これまでにアレッポなどでは、民間人を含む320人以上が死亡したということです。

こうした中、AP通信はアレッポの隣県に設置された避難民キャンプの30日の様子を配信しました。

現地ではマットレスや救援物資が準備され、子どもやお年寄りが身を寄せている様子が確認できます。

戦闘の拡大に加えて、避難民の増加など人道状況の悪化も懸念されています。

シリアでは2011年、「アラブの春」と呼ばれる民主化運動が波及する形で反政府デモが各地に広がり、これをアサド政権が弾圧したことで激しい内戦に発展しました。

アメリカは反政府勢力を支援しましたが、アサド政権と反政府勢力の戦闘が激しくなるなか、混乱に乗じるかたちで過激派組織IS=イスラミックステートが勢力を拡大させ、内戦が泥沼化しました

アレッポは反政府勢力の最大の拠点でしたが、2016年にロシアの支援を受けたアサド政権側が完全に制圧していました。

今回の反政府勢力による大規模攻撃を受けて、ロシアは反政府勢力の拠点を空爆したほか、アサド政権側に追加の軍事支援を約束したと報じられています。

アメリカのCNNテレビは、「反政府勢力は奇襲攻撃を始め、長年、ほとんどこう着していた紛争を再燃させた」と伝えていて、戦闘の拡大や避難民の増加など、情勢の悪化が懸念されます。

アメリカ サベット報道官 “攻撃はテロ組織主導”

アメリカ・ホワイトハウスのNSC=国家安全保障会議のサベット報道官は先月30日、声明を出しました。

この中でサベット報道官は「状況を注視している」としたうえでアサド政権が国連の安保理決議に基づく政治プロセスを拒否し、ロシアやイランに依存してきたことがこうした事態を招いたと批判しています。

一方で、今回の攻撃にアメリカは関与しておらず、テロ組織が主導したものだとしています。

アメリカとしては中東でガザ情勢やレバノン情勢への対応に追われるなか、シリア情勢まで悪化することは避けたく、地域の同盟国などとともに緊張緩和を求めていくとみられます。