12月2日移行、マイナ保険証の疑問答えます

いまの健康保険証からマイナ保険証を基本とする仕組みに、12月2日移行します。

国がそのメリットとしてあげているのが、病院から処方された薬などの医療情報の共有です。
ただ、現場からはその実効性などに疑問の声もあがっています。

国が定めた期日が迫るなか、それぞれの立場の専門家に取材した内容をまとめました。

【NHKプラスで配信中】(2024年12月6日(金) 午後5:00 まで)↓↓↓

Q.マイナ保険証とは

健康保険証の登録をしたマイナンバーカードのことです。

医療機関の顔認証付きカードリーダーなどで、健康保険証としての利用登録をすれば、これまでの健康保険証の代わりになります。

政府は、12月2日に健康保険証の新規発行を停止して、この「マイナ保険証」を基本とする仕組みに移行します。

ただし、健康保険証も12月2日以降、1年間は、使うことができます。

その後も、資格確認書と呼ばれるものが送られてきて、健康保険証とおなじように使うことができます。

自営業者などが入る「国民健康保険」や、75歳以上が入る「後期高齢者医療制度」の保険証には、それぞれ有効期限(多くが来年7月から8月)があります。

保険証に記された有効期限を確認して下さい。

Q.マイナ保険証、患者からみたメリットは?

厚生労働省はマイナ保険証を利用した「電子処方箋」というシステムの導入を医療機関と薬局の間で進めています。

このシステムでは、患者に処方された薬が端末に瞬時に共有され、医師が同じ薬や一緒に飲んではいけない薬を処方しようとすると、アラートが表示されます。

この結果誤った処方を防ぐことができ医療の安全性が向上します。

取材した医師によると、患者が複数の医療機関にかかった場合、同じ種類の痛み止めの薬を処方されてしまうことがしばしばあるということです。

こうした誤った処方の防止は、医療業界では長年の課題であり、余分な処方を減らすことで薬の保険料負担を抑えることにもつながるといいます。

このシステムの導入が進めば、いま使われている「お薬手帳」は将来的には使わなくてもよくなるとされています。

ただ、現時点では普及していないため引き続き「お薬手帳」が必要です。

Q.医療機関や薬局にとってのメリットは?

薬局にとっては、電子処方箋のデータをそのまま活用することで、薬を出す時などに必要な端末への入力作業を短縮できるといいます。

また、電子処方箋を利用することで診療・調剤報酬の点数に加算されるケースもあるということです。

医療機関が限られる地方にとっては、オンライン診療のニーズがいっそう高まることが予想され、電子処方箋ならば、患者は自宅で診療を受けたのちに、近くの薬局で薬を受け取ることが可能です。

また、薬剤師からオンラインで薬の飲み方などの説明を受ければ薬を自宅に配送してもらうことも可能で実際すでに、こうしたサービスを行っているドラッグストアチェーンもあるということです。

Q.災害時に役に立つ?

電子処方箋は災害時でも携帯電話の電波が通じれば、スマホのマイナポータルアプリから確認できます。

避難先で薬を切らしてしまったときにも、「DMAT」(災害派遣医療チーム)の医師などがこれまで処方された薬を確認することで、適切な薬を処方することができます。

実際に、ことし1月に発生した能登半島地震の時にも広く利用されたということです。

Q.導入のコストはどれぐらい?

厚生労働省の試算では、
▼病床数が200以上の大規模な病院でおよそ490万円、
▼それ以外の病院でおよそ330万円、
▼診療所や薬局でおよそ40万円かかると見込んでいます。

導入にあたっては、国の補助金や都道府県の助成金でおよそ半額の支援が受けられるということです。

ただし、その後のシステム改修や、ランニングコストについては、現時点で国からの支援はないということです。

Q.オンライン資格確認と電子処方箋の違いとは?

国は2023年4月に、マイナ保険証などを利用して、患者の医療保険の資格をオンラインで確認できる仕組みの導入を医療機関に義務づけました。

これに伴って各医療機関や薬局で、医療情報を共有できるようになりました。

この普及率は、現在、全国で9割あまりにのぼっています。

ただ、情報共有に1か月ほどかかるため現場からは、「知りたい情報が分からず、『お薬手帳』のほうが便利」といった声もあがっています。

一方の電子処方箋は、オンライン資格確認と同じく患者に処方された薬などの医療情報を共有することができます。

厚生労働省によりますと、こちらは、情報共有に1か月ほどかかるオンライン資格確認のシステムと違って、すぐに情報共有することができるとされています。

Q.電子処方箋の低い利用率そのわけは?

ただし、電子処方箋の仕組みはまだ全国に普及していません。

現時点で導入しているのは、医療機関が4.3%、薬局が55.6%で、全体でも18.9%にとどまっています。

国は導入費用を補助するなどして、普及を図りたいとしています。

導入が進まない理由を複数の医療機関に取材すると、その一つがコストの高さです。

東京のクリニックは、ことし4月に電子処方箋を導入しましたが、あわせて院内のデータを管理するシステム(電子カルテ)の改修などもした結果、費用は430万円ほどに上りました。

さらに、毎年メンテナンスに50万円あまりが必要になるといいます。

このランニングコストは導入費用ではないため、国からの補助はないということです。

Q.コスト以外の理由も

さらに、コスト以外の懸念としてあがったのが、セキュリティーの問題です。

病気や薬の情報は、重要な個人情報であるため、電子処方箋のような外部とつながった仕組みの場合、サイバー攻撃にあうことで、外部に流出するリスクが払拭しきれないといいます。

また、それ以外にも、患者は、電子処方箋に対応する薬局に薬をとりにいく必要がありますがまだ半数近い薬局がこのシステムを整備していないため、使いにくいという側面があります。

マイナ保険証を基本とする仕組みへの移行まであとわずかです。

私たちは、取材を続けますので、皆さんからの情報や意見、こちらまでお待ちしています。