宮崎駿監督がマグサイサイ賞を受賞 “アジアのノーベル賞”

アジアの平和や発展に尽くした個人や団体をたたえ、「アジアのノーベル賞」とも呼ばれるマグサイサイ賞に、ことしは平和や環境の問題をテーマに数多くのアニメーション映画を手がけ、海外でも高く評価されている宮崎駿監督が選ばれました。

マグサイサイ賞は毎年、アジアの平和や発展に尽くした個人や団体に贈られ、「アジアのノーベル賞」とも呼ばれています。

過去には、貧困や飢餓に苦しむ人たちの救済に生涯をささげたマザー・テレサや、チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世などが受賞しています。

フィリピンの首都マニラにある財団は31日、ことしの受賞者として個人4人と1つの団体を発表し、このうち日本からは数多くのアニメーション映画を手がけ、海外でも高く評価されている宮崎駿監督が選ばれました。

宮崎監督について財団は「環境の保護や平和の提唱など、複雑な問題を子どもたちが理解できるよう芸術を駆使した。世界で最も記憶に残り愛されている映画を数多く手がけた」と評価しました。

そして、「人間のあり方を照らし出すことに取り組んできた模範的な芸術家だ」とたたえています。

マグサイサイ賞にはこれまでに、アフガニスタンで人道支援などに携わった医師の中村哲さんなど、あわせて27人の日本人が受賞しています。

ことしの受賞者は宮崎監督のほかに
▽ベトナム戦争でアメリカ軍が散布した枯葉剤の健康被害を究明し、被害者の救済に取り組んできたベトナム人の女性医師
▽ブータンで貧しい若者の教育を支援している男性
などが選ばれています。

授賞式は11月にマニラで行われます。

アニメ映画界の巨匠として世界的に知られる

宮崎駿監督は東京出身の83歳。1979年「ルパン三世 カリオストロの城」で長編映画デビューしたあと、「となりのトトロ」や「もののけ姫」など数々のヒット作を発表。

2001年に公開された「千と千尋の神隠し」はベルリン国際映画祭の最高賞にあたる金熊賞や、アメリカのアカデミー賞の長編アニメーション賞を受賞するなど、アニメーション映画界の巨匠として世界的に知られています。

ほぼすべての監督作品で原作と脚本を手がけ、スタッフが描いた膨大な原画を監督みずからチェックして修正する制作手法で、手描きアニメのクオリティーを追求してきました。

人間や自然に対する鋭い観察眼で登場人物の表情やしぐさを生き生きと描くとともに、「トトロ」や「ネコバス」、「コダマ」といった世界中で愛される印象的なキャラクターを数多く生み出してきました。

環境問題や平和などが背景にある物語を、子どもから大人まで楽しめる魅力的な冒険活劇として描き、国内外のクリエーターにも大きな影響を与えています。

2013年、一度は長編アニメからの引退を表明しましたが、その後、撤回。

およそ7年かけて作り上げた「君たちはどう生きるか」は、ことしのアメリカのアカデミー賞で自身2度目となる長編アニメーション賞を受賞するなど、いまも世界的な映画監督として活躍しています。