株価 終値2200円以上値下がり 終値では過去2番目の下落幅

2日の東京株式市場は、アメリカの景気の先行きへの懸念が急速に強まったことなどから、日経平均株価の終値は1日より2200円余り値下がりし、世界的に株価が暴落した1987年のブラックマンデーの翌日に次ぐ、2番目に大きい記録的な下落幅となりました。

2日の東京株式市場は、取り引き開始から全面安の展開となり、日経平均株価は取り引きが始まっておよそ1時間で、下落幅が2000円を超える急落となりました。

1日にアメリカで発表された製造業の景況感や雇用関連の経済指標が予想より悪かったことに加え、ニューヨーク株式市場で半導体などハイテク関連の銘柄が売られたことで、アメリカの景気減速への懸念が急速に広がりました。

さらに、ここ最近急速に進んだ円高ドル安への警戒感も重なり、売りが売りを呼ぶ展開となりました。

取り引きの終わりにかけても売り注文が膨らみ、結局、日経平均株価の2日の終値は、1日より2216円63銭安い、3万5909円70銭で、世界的に株価が暴落した1987年のブラックマンデーの翌日に次ぐ、2番目に大きい記録的な下落幅となりました。

また、終値が3万5000円台となるのは、ことし1月26日以来、およそ半年ぶりです。

東証株価指数=トピックスは166.09下がって2537.60。

一日の出来高は29億7030万株でした。

日経平均株価はことしに入って急ピッチに上昇し、およそ3週間前には4万2000円を超えて史上最高値を更新しましたが、一転、急落が続いています。

市場関係者は「アメリカの雇用統計が日本時間の今夜発表される。アメリカの景気の動向には多くの投資家が敏感になっていて、内容次第では週明けの東京市場に影響することも考えられる」と話しています。

林官房長官「緊張感持って市場の動向注視」

林官房長官は閣議のあとの記者会見で「株価は経済状況や企業の活動などさまざまな要因により市場で決まるもので、その日々の動向についてコメントすることは差し控えたい。政府としては引き続き緊張感を持って市場の動向を注視するとともに経済財政運営に万全を期していきたい」と述べました。

鈴木金融相「市場の動向を注視する必要」

株価が急落していることについて鈴木金融担当大臣は、閣議のあとの会見で「株価は金利や為替の影響のほか内外の経済状況や企業の活動など、いろいろな要因によって市場において決まるものであり、日々の動きについてのコメントは控えたい」と述べました。

そのうえで、国民生活に与える影響について問われたのに対して「ここ1日、2日の動きで、先のことを推測することは必ずしも適切ではない。今は市場の動向を注視する必要がある」と述べました。

齋藤経産相「積極的な産業政策を着実に展開」

株価が急速に下落していることについて、齋藤経済産業大臣は2日の閣議のあとの会見で「株価の日々の動向については市場において決定されるもので、コメントは差し控えるが、投資と賃上げの力強い動きは継続している。経済産業省としては金融市場や産業の動向を注視しながら、市場動向に一喜一憂せずに積極的な産業政策を着実に展開したい」と述べました。

新藤経済再生相 「経済の構造改革など着実に」

株価が急落していることについて、新藤経済再生担当大臣は閣議のあとの会見で、株価の変動にはコメントしないとしたうえで「株価の動きに一喜一憂することなく、株価は将来の経済の期待を示すので、今進めている経済の構造改革や新しい経済のステージに移行する取り組みを着実に進めたい。その中で、実体経済を強めて日本の経済力を高めることで、株価にもよい結果が出てくるのではないか」と述べました。

経済同友会 新浪代表幹事「実体経済と合った株価に」

株価の急落について経済同友会の新浪代表幹事は2日の会見で、「株価上昇の大きな要因として円安があったのは事実で、円安で株価が上がった分がはげて今後のことを考えたら、リスクを回避しようという投資家がいるのは当然のことだと思う。また、私はアメリカの消費経済はそれほど強くないと思っていたが、それがデータに出てきて、サプライズになったのではないか。アメリカの景気は底堅いけれど、厳しいなということになり、景気の先行きが怖くなってきたのではないか」と述べました。

そのうえで「本質的に日本の経済の状況、とりわけ企業は足腰がしっかりしているので、一喜一憂せずに株式市場は調整局面だと見ていくべきだと思う。円安に支えられた株価ではなく、実体経済と合った株価に変わっていくのではないか」と述べました。

個人投資家などは

株価の急落について、東京 中央区にある証券会社の株価ボードの前で個人投資家などに話を聞きました。

このうち、40代の会社員の男性は「これを機にしばらく様子を見ようと思っている。どうなるかわからず不安だが、ここまで株価は上がってきたので、これ以上、上がる材料はないのかなと感じている」と話していました。

50代の男性は「1月の水準と比べるとまだ株価は高いし、むしろ今までの株高が異常だったので、驚いてはいない」と話していました。

60代の男性は、これまでの円安について「通貨の価値を下げて、物の値段を無理やり上げただけで、一部のお金持ちの人がうまみを味わっているだけだった。株価がこうなるのは予想どおりで、下落は始まったばかりだと思う」と話していました。

専門家「株価は4万円近辺を目指すようになるのでは」

今回の株価急落について、大和証券の坪井裕豪 日米株チーフストラテジストは「日銀による今後の利上げのペースやどこまで利上げするのか、不透明な部分が色濃く残っている中で、アメリカ景気の不安という要素が新たに加わってきた。市場関係者の間で、アメリカの景気の先行きは予想よりもう少し速いペースで減速してしまうのではないかという警戒が強まった」と話しています。

一方で「リーマンショック前夜と同じかと言われると、そこまでではない。米国のクレジット市場は全く傷んでいない状況で、たとえ景気の減速が強まったとしても、景気不安や金融不安まで、問題が広がるリスクはかなり低いと思う」と述べました。

そのうえで、今後の株価の見通しについて、「日本時間の今夜発表される先月のアメリカの雇用統計や、週明けに発表されるアメリカの非製造業の景況感の指標が市場の予想どおりであれば、アメリカの景気に対する過度な不安に歯止めがかかり、自律反発の動きが出る。米国の経済指標や、今後の日銀の金融政策が確認できると自律反発が強まっていき、日経平均株価は4万円近辺を目指すようになるのではないか」と話しています。

別の専門家「米経済 この先も減速傾向出てくるのでは」

今回の株価下落の要因の一つとなったアメリカ経済について、松井証券の窪田朋一郎シニアマーケットアナリストは「もともと高い金利でもアメリカ経済は持続していたわけだが、さすがに疲弊するのではないかとみられている。この先も減速傾向が出てくるのではないか」と述べました。

また、「アメリカは大統領選挙前だ。FRB・連邦準備制度理事会のパウエル議長は9月の利下げの可能性を示唆しているが、中央銀行が政治的なバランスをとることを考えると、難しいかじ取りを迫られるので、金融政策という観点からも不安定な状況が続くとみている」と指摘しました。

一方、今後の日経平均株価の見通しについては、「日本は低金利が持続する一方でインフレ率が高まるという見方から4万2000円台まで大きく上昇したわけだが、日銀の追加の利上げによってその前提が変わったということであれば、ことしの上昇幅を吐き出してしまう可能性も出てきた。日銀で利上げに積極的な姿勢、タカ派の姿勢が続くのであれば、ことし初めの3万4000円という水準も視野に入ってくると思う」と述べました。

日経平均株価 過去最大の値下がり幅は

日経平均株価の過去最大の値下がり幅は、1987年10月20日の3836円48銭です。

ニューヨーク市場での株価暴落をきっかけに、世界的に株価が暴落したいわゆる「ブラックマンデー」の翌日の取り引きで、日本市場に影響が波及した形でした。

2日の日経平均株価の下落幅は、この時に次ぐ過去2番目の大きさとなります。

次いで値下がり幅が大きかったのは
▽1990年4月2日の1978円38銭
▽1990年2月26日の1569円10銭
▽1990年8月23日の1473円28銭と、いずれも1990年です。

日経平均株価は、バブル景気の絶頂期だった前年の1989年12月29日に終値で3万8915円87銭となり、当時の史上最高値を記録しましたが、翌年は状況が一変し、株価の下落が続いていた局面です。

また、2000年の4月17日に1426円4銭、値下がりしたときは、ニューヨーク市場で株価が急落したことを受けて東京市場でも電機や情報通信関連などの銘柄に売り注文が広がりました。

その後、いわゆるITバブルが崩壊し、日経平均株価は下落する場面が増えました。

今回の株価急落 その背景は

今回の株価急落はアメリカの景気減速への懸念が急速に強まったことに、円高ドル安への警戒感が重なったことが背景となりました。

まず、アメリカの景気減速への懸念は、1日に相次いで発表された経済指標がきっかけでした。

アメリカの製造業の景況感に関する経済指標が市場の予想を下回ったほか、失業保険の新規申請件数も予想より多い結果となりました。

加えて半導体メーカー、インテルが1日に発表したことし6月までの3か月間の決算で、日本円にしておよそ2400億円の最終赤字になったことを明らかにしました。

これまで相場をけん引してきたハイテク企業の業績の先行きにも不安が出始め、アメリカの景気減速への懸念が急速に高まりました。

これに、円高ドル安への警戒感も重なりました。

7月31日、日銀が追加の利上げに踏み切り、植田総裁が会見でさらなる利上げの可能性に触れる一方、アメリカの中央銀行にあたるFRB=連邦準備制度理事会のパウエル議長は31日、会見で「利下げは早ければ9月の会合で決定される可能性がある」などと発言しました。

金利の先行きをめぐって、日米の違いが鮮明になったという見方から、外国為替市場では一時1ドル=148円台まで円高ドル安が進みました。

企業の中には事業の計画をたてる際に想定している為替水準を145円程度と想定しているところもあり、投資家の間では、これ以上の円高ドル安は輸出企業の業績にマイナスになるのではないかといった警戒感が強まっています。