政府は、26日の閣議で、イギリス・イタリアと共同開発を進めている次期戦闘機について、自民・公明両党の合意に基づき、歯止めを設けた上で第三国への輸出を容認する方針を決定しました。
この中では「わが国の安全保障環境にとって必要な性能を満たした戦闘機を実現し、日本の防衛に支障をきたさないようにするためには、第三国に移転しうる仕組みを持つ必要があるとの認識に至った」として、第三国への輸出を認めるとしています。
一方、実際に輸出する際には与党で協議を行うようにするため、通常の審議に加え、個別の案件ごとに閣議で決定するとしています。
また政府は26日の閣議決定を受けて、持ち回りでNSC=国家安全保障会議の閣僚会合を開き、防衛装備品の輸出ルールを定めた「防衛装備移転三原則」の運用指針を改正しました。
政府 日英伊で共同開発の次期戦闘機 第三国への輸出容認を決定
イギリス・イタリアと共同開発を進めている次期戦闘機について、政府は第三国への輸出を容認することを決定しました。実際に輸出する際には、与党で協議を行うようにするため個別の案件ごとに閣議で決定するほか、戦闘が行われている国には輸出しないなどとしています。
この中では第三国への輸出を認める一方、歯止めとして、対象を次期戦闘機に限り、輸出先を日本が防衛装備品の輸出などに関する協定を結んでいる国に絞るとともに、戦闘が行われている国には輸出しないとしています。
木原防衛相「平和国家としての基本理念堅持 より明確に示す」
木原防衛大臣は閣議のあと記者団に対し「厳格な決定プロセスを経ることで平和国家としての基本理念を引き続き堅持することをより明確な形で示すことができると考えている。また今回の決定でイギリス・イタリアと同等に貢献しうる立場の確保が可能になったと考えていて、わが国の安全保障環境にふさわしい戦闘機の実現を目指して、両国との協議をしっかりと進めていく」と述べました。
また開発スケジュールについては「現在3か国で設計作業をしているところで、緊密に連携しながら、今後5年程度で戦闘機の仕様や性能を確定させたいと考えている」と述べました。
立民 岡田幹事長「議論が十分になされていない」
立憲民主党の岡田幹事長は記者会見で「いろいろな理由があるにしろ戦闘機を輸出するとなると、憲法の平和主義に基づく理念そのものを変えることになるが議論が十分になされていない。閣議決定で勝手に決めてしまうのは極めて遺憾だ。国会での集中審議が必要で、新年度予算案が成立したあと、関係する委員会や予算委員会に岸田総理大臣に出てきてもらい議論すべきだ」と述べました。
維新 音喜多政調会長「一歩前進だ」
日本維新の会の音喜多政務調査会長は、記者団に対し「決定が遅くなった印象だが、共同開発して輸出されていくことは極めて重要で、一歩前進だ。わが党としては、防衛政策について、政府の方針を後押しすべきは後押ししていきたい。与党協議で時間がかかったり、政策が曲がったりすることがないよう、自民党に要望していきたい」と述べました。
公明 山口代表「丁寧に説明を重ねていくことが重要」
公明党の山口代表は記者会見で「議論の経過や政府・与党で決定した内容をしっかり国民に理解してもらえるよう丁寧に説明を重ねていくことが重要だ」と述べました。一方、日本単独で生産する装備品の輸出は「救難」や「輸送」など5つの類型に限定しているルールを見直すかどうかについては「これまでの議論の経過や趣旨を踏まえ、慎重に議論していくべきだ」と述べました。
共産 穀田国対委員長「抗議し 撤回を求めたい」
共産党の穀田国会対策委員長は記者会見で「国家のあり方を大転換する非常に危険な道であり、抗議し、撤回を求めたい。自民・公明両党が密室で輸出の容認を合意したのは、国会を無視した暴挙と言わなければならない。歯止めのない戦争する国づくりへの大きな一歩で、平和国家の理念と憲法を踏みにじるもので、断じて許せない」と述べました。
国民 玉木代表「真の防衛力を強化する上では必要」
国民民主党の玉木代表は記者会見で「平和を重視する国家として一定のルールや歯止めは必要だが、単に完成品をアメリカから買うだけでなく、自国の防衛に資する装備を他国と共同して開発していくことは、真の防衛力を強化する上では必要だ。共同開発するのなら、相手国とある程度、歩調をあわせなければ、相手にされなくなるのではないか」と述べました。
設計開始に向け検討本格化
次期戦闘機をめぐっては、開発を担う企業が機体の設計開始に向けた検討を本格化させています。
機体の製造で中核を担う三菱重工業は先週、防衛装備庁の担当者を交えて愛知県豊山町の工場で打ち合わせを行い、機体の大きさや形状などが異なる複数の案の設計スケジュールについて、意見を交わしました。
この企業では、こうした打ち合わせを月に数回開いて検討を進め、3か国の企業が集まる会議で、具体的な設計の案として、提示することにしています。
イタリア企業「日本と協力できるとてもよい機会だ」
次期戦闘機の開発には、イギリスやイタリアの企業も参画します。
三菱重工業などと機体の開発を担うイタリアの航空・防衛大手、レオナルド社のロベルト・チンゴラーニCEOが25日、NHKの取材に応じ、「日本と協力できるとてもよい機会だ。次期戦闘機のプログラムを日本やイギリスと進めていけることをうれしく思う」と述べました。
そのうえで「次期戦闘機は単なる航空機ではない。多くのドローンをコントロールし、飛行させる。AI=人工知能を使った高性能なコンピューターのようなものだ」と述べました。
また、日本の防衛費が5年間の総額で43兆円に拡大することについて「日本の防衛産業の市場が成長することを好ましく思っている」と述べ、日本での事業に期待感を示しました。
中国外務省「深刻な懸念を表明する」
次期戦闘機について、日本政府が第三国への輸出を容認することを決定したことについて、中国外務省の林剣報道官は26日の記者会見で「深刻な懸念を表明する。近年、日本は安全保障政策を大幅に見直し、防衛予算を年々増額させ、近隣諸国や国際社会の強い懸念を引き起こしている。日本がこうした懸念を真摯(しんし)に尊重することを求める」と述べました。