東京オリンピック・パラリンピックでは大規模な警備が必要なため当初、全国から応援の警察官およそ1万人が派遣される計画で国は東京・大田区や江東区などに専用の簡易宿舎を整備しました。
しかし、新型コロナウイルスの感染拡大で病院だけで感染者を受け入れることが難しくなるおそれがあり、さらに、東京オリンピック・パラリンピックが延期されたこともあって、国は、警察官の宿舎を軽症者の療養施設として一時的に使用することを決めました。
昨年度の補正予算におよそ40億円を計上し、4か所の施設について、相部屋に仕切りを設けて個室にしたほか、看護師が常駐するスペースなども新たに設け、工事は急ピッチで行われました。
政府は当初、感染者が増えた場合に備えて800人くらいの軽症者を受け入れられるようにするなどと説明していましたが、結局、使われることはありませんでした。
警察官用の宿舎 40億円で新型コロナ軽症者用に改修も使われず
東京オリンピック・パラリンピックで警備にあたる警察官用の宿舎が、新型コロナウイルスの軽症者を受け入れるために多額の費用をかけて改修されたあと、一度も利用されないまま元の状態に戻されることが分かりました。改修の費用は総額で40億円あまりにのぼっていて、専門家は「詳しい経緯について検証が必要だ」と指摘しています。
国は、東京オリンピック・パラリンピックの警備のために全国から派遣される警察官の簡易宿舎を東京・大田区などに整備していましたが、去年4月、新型コロナウイルスに感染した軽症の人などを受け入れるため、4か所について改修工事を行いました。
もともと相部屋だった部屋に仕切りを設けて個室にしたほか、看護師が常駐するスペースなども新たに設けましたが、これまでに使われたことはありません。
関係者によりますとオリンピックが近づいていることから、国は改めて警察官の宿舎として使うため今月から部屋を元の状態に戻す工事を行うことにしています。
一連の改修にかかる費用は総額で40億円あまりにのぼるということです。
東京都は、軽症の人などについてホテルなどで受け入れていますが関係者によりますと警察官の宿舎は立地や設備の状況などから、使用する優先順位は低かったということです。
宿舎を管理している警察庁の幹部は「政府の判断に基づいて改修を行ったが、その後の運用方針については関知していない」としています。
公共事業に詳しい上智大学法学部の楠茂樹教授は「感染拡大で迅速な判断を迫られる中、当時の対応を責められない部分もあるが、多額の費用を投じながら一度も利用されなかったことについて詳しい検証が必要だ」と指摘しています。