ファッション

北欧名作家具「フリッツ・ハンセン」と福岡・柳川の名勝「御花」の時空を超えたコラボで見えた地方創生の鍵

デンマーク名作家具「フリッツ・ハンセン(FRITZ HANSEN)」は2月8〜25日、福岡・柳川市の国指定名勝「柳川藩主立花邸 御花」で「フリッツ・ハンセン エキシビション イン 御花」を開催する。会場である「御花」は、約400年の大名文化を引き継ぐ柳川藩主の末裔が受け継ぐ知る人ぞ知る老舗旅館・料亭だ。北欧デザインと日本の歴史的建築と融合させた展示には、地域文化と未来の暮らしを紡ぐというメッセージが込められている。

九州の名勝で知り・触れる北欧名作家具

「御花」のある柳川は、川下りやウナギ料理で知られる柳川藩の城下町。人気の観光地として、国内外から多くの人が訪れる。雪がちらつく内覧会の日も、朝から川下りをしようとする多くの観光客の姿が見られた。「御花」は、明治時代につくられた伯爵時代の邸宅と庭園を含む2万3000 平方メートル以上の文化財だ。2〜4月には、“さげもん”と呼ばれる鮮やかな着物の端切れ作った小物吊るした飾りが街の至る所でみられ、多くの観光客で賑わう。

エキシビションの会場である「御花」の西洋館では、「フリッツ・ハンセン」のクラフツマンシップにフォーカスして紹介。名作“エッグチェア”の製造過程や歴史をカラフルに彩ってきた“セブンチェア”などを展示している。重厚でレトロな空間に、無駄を削ぎ落としたシンプルな北欧家具が見事にマッチしている。

100畳以上ある大広間には、“スワンチェア”など、「フリッツ・ハンセン」を代表する20脚の椅子を展示。名作椅子に座って、カモが泳ぐ広々とした庭を眺められる。北欧デザインは和洋問わず、あらゆる空間に自然と馴染むと実感する展示になっている。

地元販売店が結びつけた時空を超えたコラボ

国は違えども、「フリッツ・ハンセン」も「御花」も100年以上の歴史がある。それら2つを結びつけたのが、イベントを主催する福岡のインテリアショップの「フラムティーデン(FREMITIDEN)」だ。同ショップは、福岡で不動産事業や病院を運営する企業サワライズが、インテリアで地元の暮らしを豊かにしようと昨年4月にオープンした「フリッツ・ハンセン」の販売店だ。文化財と「フリッツ・ハンセン」の家具を通して、地域・暮らし・物作り“を再認識してほしいという思いで実現した。久富俊之サワライズ ライフ デザインセンター インテリア事業課課長兼「フラムティーデン」ブランドマネジャーは、「コラボするなら、伝統だけでなく時代に合った提案をする『フリッツ・ハンセン』だと決めていた」と話す。

会場は、婚礼など晴れの日に使われる伝統的建築物がふさわしいと「御花」に相談した。「御花」を運営する立花家18代の立花千月香社長は、「時空を超えたコラボレーションだ。100年以上続く本物と本物が融合した展示になっている」と話す。エキシビション会期中、「フリッツ・ハンセン」の家具で設えたスイートルームの宿泊プランも販売している(税・サービス料込み8万3200円〜。2人1室2食付1人)。企画を担当した御花の竹中逸人デザイナーは、「文化財に新しい魅力が生まれた。歴史と文化を感じる夢のような空間になっている」と語った。

世界的ブランドが発信する地方文化の魅力

展覧会やイベントの開催は、時間と手間がかかる。しかも、ポップアップとは異なり、直接、売り上げに反映されるわけではない。京都・自社主催の展示を行ったばかりの「フリッツ・ハンセン」。昨年末〜1月に両足院で開催した「ポール・ケアホルム展 in 京都」には、想定の1.5倍が来場した。フリッツ・ハンセン・ジャパンの鈴木利昌代表は、「展示を通してより幅広い人に感動を届け、ブランドを知ってもらいたい。また、地方でイベントを開催することで、地方文化の魅力を伝えられる」と話す。展示という文化的アプローチを通して地方にリーチすることで、ビジネスの分母が拡大できるという考えだ。

「御花」の立花社長は、「文化財を維持することは大変なことだ。残されたものに感謝し100年後にも残さなければという思いが大切。その思いがあれば、民間でも守っていくことができる」と語る。「“文化財を遊び倒す”がテーマ。多くの人に来ていただくことで支えられる」と続ける。藩主から伯爵、その土地に根差し文化を守り続けるという強い意志から、柳川に観光客を呼び込み、現地での雇用を生み出している。

「フラムティーデン」の久富マネジャーは、「われわれをはじめ、『フリッツ・ハンセン』も『御花』も目指していることは同じだ。それは、100年先も残り続けるブランドであること。このようなコラボにより、人と人との触れ合いが生まれ、楽しんでもらえる風景が見たい」と話す。今後も、ネットワークのある日本全国の工房と協業で体験を届けていくという。

■FRITZ HANSEN EXHIBITION in 御花
会期:2月8〜25日
会場:柳川藩主立花邸 御花(福岡県柳川市新外町1)
時間:10:00~16:00
入場料:一般1000円、高校生500円、小中学生400円

関連タグの最新記事

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

ラン&フィットネス特集2025  イノベーションが加速するラン市場を深掘り!【WWDJAPAN BEAUTY付録:転換期迎えるドラッグ&バラエティーストアのPB 新たな流れを創出】

「WWDJAPAN」2月24日号は、“ラン&フィットネス”と題した恒例のスポーツ特集です。今回は、改めて国内外で熱を帯びているランニングのマーケットにフォーカス。3月2日には、約3万8000人が出走予定の東京マラソンも控えており、ランニングを意識する機会は増えそうです。

詳細/購入はこちら

CONNECT WITH US モーニングダイジェスト
最新の業界ニュースを毎朝解説

前日のダイジェスト、読むべき業界ニュースを記者が選定し、解説を添えて毎朝お届けします(月曜〜金曜の平日配信、祝日・年末年始を除く)。 記事のアクセスランキングや週刊誌「WWDJAPAN Weekly」最新号も確認できます。

ご登録いただくと弊社のプライバシーポリシーに同意したことになります。 This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.

メルマガ会員の登録が完了しました。