Z800とは? わかりやすく解説

Z800

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/09/15 03:44 UTC 版)

Z800 は、ザイログ1985年にリリースを予定して設計していた16ビットマイクロプロセッサZ80とは命令レベルの互換性を維持しつつ多数の命令を追加し直交性を大幅に強化していた。また、オンチップのキャッシュメモリと16MBのメモリ空間を管理するメモリ管理ユニットを備えていた。しかし、32ビットZ80000の方が優先され、大量生産されなかった。1987年にはZ800のアーキテクチャを引き継いでCMOS化したZ280プロセッサが製品化されている。

概要

レジスタセットの拡張はないが、命令セットは大幅に直交化され、汎用性を高めた。多数の8ビット操作や16ビット操作が追加され、Z80では用途が限定されていた HL、IX、IY レジスタは、16ビット幅の汎用のアキュムレータとされた。Z80でも可能なレジスタオペランドへの使用に加え、即値データ、直接アドレス、レジスタ間接、インデックス付きオペランド、プログラムカウンタ相対などにも使えるようになった。8ビット演算でも、スタックポインタ相対アドレッシングと8ビットまたは16ビットの即値オフセットが可能となっている。

アドレスバスは16MBのメモリを扱えるよう24ビット幅に拡張された。製品としては外部バスを19ビットに制限して40pinのパッケージに収めて512kBメモリを扱えるバージョンと、24ビット外部バスで16MBメモリを扱える64pinのパッケージに収めたバージョンが用意された。Z80と同様、DRAMコントローラとクロックを内蔵している。256バイトのRAMを内蔵し、スクラッチパッドとしても使えるし、キャッシュとしても機能する。キャッシュとして利用する場合には、命令キャッシュ/データキャッシュ/両用の設定ができる。

さらに、マルチプロセッシングという野心的な構想もあり、疎結合または密結合のスレーブプロセッサ群を構成可能で、メモリを共有するか否かも選択可能とされた。これを extended processing architecture および extended processing units (EPU) と称した。

もう1つのオプションとして、Z80と互換性の高い8ビットデータバスの他に16ビットデータバスの製品もあり、メモリシステムが適切に設計されていればデータ転送レートが2倍になる。外部アドレスバスの幅も2種類あるので、このチップには4つのバージョンが存在した。

part # ピン数 データバス幅 アドレスバス幅
Z8108 40 8ビット 19ビット (512kB)
Z8116 40 16ビット 19ビット (512kB)
Z8208 64 8ビット 24ビット (16MB)
Z8216 64 16ビット 24ビット (16MB)

失敗の原因

Z800は全体として、ミニコンピュータに影響された「超Z80」とも言うべきもので、大きなプログラムを非常に高速に実行できたと推測される。しかし、アドレスバスとデータバスのピンは多重化されており、プログラミング的にもインタフェース的にも複雑化していた。正確な実行時間の計算もZ80に比べると非常に難しかった。

モトローラは、Z800より早くMC68020という32bitマイクロプロセッサを発売しており、インテルもZ800とほぼ同時期にIntel 80386という32bitマイクロプロセッサを発売したため、16bitのZ800がコンピューター用途で使われることはなかった。もっともザイログは、32bitのZ80000をコンピューター用と位置付けていたが、Z80000はZ80と互換性がなく、モトローラとインテルの32bit CPUよりも遅く発売されたため、需要がなく消えていった。

Z80が得意とした組み込みシステムにおいて、Z800は過剰性能であった。当時の大抵の組み込みシステムにおいて普通のZ80で十分であり、多くの場合Z800の複雑さに見合うほどの高性能が要求されなかった。

Z800は技術的に扱いにくいだけでなく、コンピューター用としては時代遅れで組み込みシステムにおいては過剰性能というマーケティング上の失策も影響したと見られる。

日立製作所は、後にHD64180を開発した。これはZ800ほど野心的な設計ではないが、大いに成功を収めた。それは、Z80に比較してプログラムやインタフェースの複雑さがほとんど増していなかった事が要因と見られる。HD64180から若干設計を変更したZ180が後にザイログからリリースされ、その後20年以上に渡って開発・生産が続いている。

その他のザイログ製Z80派生製品

HD64180やZ180以外にも、Z80アーキテクチャの拡張の試みは行われている。

32ビット化したZ3801994年にリリースされた。商業的には成功しなかったが、通信分野で需要があるため今[いつ?]も生産されている。

2001年にはアドレスバスを24ビット幅とし、パイプライン化で高速化をはかったeZ80がリリースされた。これは商業的にも成功し、各種技術賞も受賞した。eZ80 は、単に16ビットレジスタを24ビットに拡張してメモリ空間を256倍にし、同時に内部をパイプライン化することでZ80命令をオリジナルの3倍の速度で実行できるようにしている[1]。Z800やZ280、Z380 とは異なり、命令を追加したりアドレッシングモードを追加したりはしていない。

出典


Z800

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/20 04:51 UTC 版)

Z80」の記事における「Z800」の解説

Z8016ビットCPUとして大幅に拡張するとともに周辺チップ集積したもの。命令体系拡張として、乗除命令追加16ビットオペランド命令増強PC相対アドレッシングモードSP相対アドレッシングモード拡充などを行い、また従来隠し命令となっていたIXIYレジスタ分割操作する命令などが公式にサポートされる。システムとしてはユーザーモード・スーパーパイザーモードの区別持ち内蔵MMUによるメモリ保護機能提供される。256byteのRAM内蔵し、ローカルメモリとして使用する他に、キャッシュとして使用することも可能である。外部バス従来Z80互換性の高い8ビット幅のZ80-BUSと、16ビット幅のZ-BUSを選択することが可能で、またMMU機能により512KBアドレス空間と16MBアドレス空間選べる。このバス種別サポートするアドレス空間種別により4つ製品 (Z8108,Z8116,Z8208,Z8216) が計画された。のちにC-MOS化されZ280引き継がれた。

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「Z800」を含む「Z80」の記事については、「Z80」の概要を参照ください。

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