TiMiとは? わかりやすく解説

Timi

名前 ティミー

System/38

(TiMi から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/11 18:20 UTC 版)

System/38
System/38 のコンソール

System/38 は、IBMが1979年にリリースしたオフィスコンピュータであり、AS/400の前身である。IBM の技術者フランク・ソルティスがいくつかの革新的機能を考案し、実装されている。

歴史

System/38 は 1978年に発表され、1979年8月に出荷開始された。System/34 の後継であるが、System/36 は後から登場した。コード名は "Eagle"。System/38 は中止された Future Systems プロジェクトから派生したものである。

機能

System/38 のアドレッシングは48ビットで、当時としては珍しい(アドレッシングが48ビットなのであり、いわゆる「48ビットCPU」なのでは無い)。

また、革新的なデータベース的ストレージ手法を備えている。System/38 のオペレーティングシステムCPF(Control Program Facility)である。CPF は System/34 や System/36 のオペレーティングシステム SSP(System Support Program)とは無関係である。

サポートするプログラミング言語としては、RPG IIICOBOLBASICPL/I がある。JCL相当のスクリプト言語として CL(Control Language)がある。CL はシェルスクリプトに似ているが、コンパイルでき、実行ファイル化することができる。

System/38 は当時のハードウェアとしては極めて先進的であった。開発当初、当時としては巨大なOS(ディスク上で60MB)のオーバーヘッドに悪戦苦闘した[1]。プロジェクトメンバーの1人が内部コード名を PACIFIC にしようと提案したこともあった。これは、"performance ain't critical if function is complete"(機能が完全なら性能は問題ではない)の頭字語である。数十年後、かつて考慮に値しないと評されたその同じソフトウェアが、企業や政府などの数千のシステムでうまく機能していた。

単一レベル記憶

System/38 とその後継シリーズは、単一レベル記憶(SLS)を使った、商用では初のシステムである。全ての主記憶装置と、磁気ディスク装置などの補助記憶装置が、単一の仮想アドレス空間にマッピングされる。

System/38 以外の多くのコンピュータでは、ディスク上に格納されるデータはファイルという論理的単位に分割して格納される。データをあるファイルに追加する場合、そのためのセクターが用意され、そのセクターがいっぱいになると新たなセクターが使われる。System/38 では、データは個別に格納され、システムのどこに置かれてもよい。ファイルという概念はなく、OSがストレージ上の全データを管理する。

TIMI

System/38 とその後継シリーズは、TIMI(Technology Independent Machine Interface)によって、アプリケーションソフトウェアやOSの大部分を、ハードウェアに依存しない実装にしている(System/38 では 単に MI、Machine Interface と呼んでいた)。TIMIは水平マイクロコードによって実現され、ソフトウェアは中間コード(バイトコード)により配布され、インストール時に最適化される。後のJavaVMのような一種の仮想機械であるが、ソフトウェアでインタプリトする仮想機械に比べ、性能を犠牲にしていない。

System/38 の後継である AS/400 は、途中でCPUを独自CISCから、アーキテクチャの異なるRISCPOWERに変更したが、TIMIの効果でユーザーにはほとんど意識されることは無かった。

ハードウェアRDBMS

System/38 とその後継シリーズは、商用では初めてRDBMSをハードウェア(マイクロコード)に実装したシステムでもある。外見上はOSの標準機能としてRDBMS機能があるように見えるが、内部的にはハードウェアに標準でRDBMSが付属しており、極めて高速・高信頼性である。

このため System/38 とその後継シリーズは、簡単に使用できる本格的RDBMSシステムとして広く使われた。なおマーケティング上の理由で、この RDBMS は AS/400 の時代に DB2/400 、DB2 for OS/400 などとDB2ファミリーのブランドとなったが、実際にはミドルウェア・ソフトウェアで実現しているのではなく、ベース部分はハードウェアの標準機能として実現されている。

その他の特徴

System/38 は商用では珍しい capability-based addressing を採用している。なお、その手法は AS/400 や System i といった後継シリーズには受け継がれていない[2]

販売状況

IBM は約2万台を5年間で販売した。よく売れた System/34 の後継として登場したが、アップグレードには困難が伴った。周辺機器や言語は似ていたものの、実際には細部がかなり異なっていた。このため、IBM は System/34 と互換性のある System/36 (OSはSSP)を後から発売することになった。

このため、IBM は互換性がなく相互にオーバーラップする3種類のプラットフォーム(System/34と36、System/38、System/360)を持つことになった。当時、DEC はこれを IBM の弱点と考え、1つのアーキテクチャで幅広い製品展開をしようとした(シングルアーキテクチャ)。IBM はこれに対抗して小型メインフレーム 4300シリーズ、更に9370シリーズをリリースしたが、あまり成功しなかった(ただし4300の専用OSであるVSEは、z/VSEとして今も続いている)。

System/38 (OSはCPF)の先進的な機能は AS/400 (OSはOS/400)に受け継がれた。AS/400 はその後 iSeries、さらに System i と改称され、2008年にはPower Systemsに統合された(iエディション。OSは IBM i)。

脚注

参考文献

  • R. L. Hoffman and F. G. Soltis. Hardware organization of the System/38, IBM System/38 Technical Developments (G58060237), 1980, 19-21.
  • M. E. Houdek and G. R. Mitchell. Translating a large virtual address, IBM System/38 Technical Developments (G58060237), 1980, 22-24.
  • Viktors Berstis, Security and protection of data in the IBM System/38, Proceedings of the 7th annual symposium on Computer Architecture, p.245-252, May 06-08, 1980, La Baule, United States
  • W. David Sincoskie, David J. Farber: SODS/OS: Distributed Operating System for the IBM Series/1. Operating Systems Review 14(3): 46-54 (July 1980)
  • ME Houdek, FG Soltis, RL Hoffman IBM System/38 support for capability-based addressing Proceedings of the 8th annual symposium on Computer, Minneapolis, Minnesota, United States. pp. 341 - 348 (1981)
  • フランク・ソルティス (著) 、日本アイ・ビー・エム(株) AS/400製品事業部 (翻訳/監修) 、『Inside the AS/400 : featuring the AS/400e series : 日本語版 第2版』、インフォ・クリエイツ、1998年、ISBN 4-900741-88-4

外部リンク


TIMI

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2016/06/12 03:45 UTC 版)

System/38」の記事における「TIMI」の解説

System/38その後シリーズは、TIMI(Technology Independent Machine Interface)によって、アプリケーションソフトウェアOS大部分を、ハードウェア依存しない実装にしている(System/38 では 単に MIMachine Interface呼んでいた)。TIMIはマイクロコードによって実現されソフトウェア中間コードバイトコード)により配布されインストール時最適化される。後のJavaVMのような一種仮想機械であるが、ソフトウェアでインタプリトする仮想機械比べ性能犠牲にしていないSystem/38後継である AS/400 は、途中でCPUを独自CISCから、アーキテクチャ異なRISCPOWER変更したが、TIMIの効果ユーザーにはほとんど意識されることは無かった

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