Smoothed Particle Hydrodynamics
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/17 14:12 UTC 版)
Smoothed Particle Hydrodynamics (SPH、SPH法)は流体力学や材料力学にて用いられる微分方程式の数値解析手法(CFD)の一つ。
対象となる1個の連続体を有限個の粒子の集団に置き換えて計算する粒子法の、その代表的なもの。連続体を計算粒子集団に置き換え、連続体の支配方程式を元に導かれる粒子間相互作用を粒子集団に与えて移動させる。
Smoothed-Particle(SP、滑らか粒子)とは、中心で最大、周辺に向けてゼロへ連続変化する滑らかな密度分布をもつ粒子である。このSPはオーバーラップするように配置され、個々のSPの密度分布の重ね合わせで連続体の密度場や他の物理量の分布を表すことが根本のコンセプトである。
いわゆるフルラグランジュと言われるタイプの手法であり、基本的に移流項がなく、保存性がよい、メッシュフリー近似を実現できる、といったメリットがあり、物体や界面の大変形/大移動をともなう対象では有効である。
天体物理学、構造力学(主に破壊や亀裂進展など)、流体力学など多くの分野で利用されている。しかし、メッシュ手法に比べれば適用数は桁違いに少ない。計算妥当性や境界条件の扱い方など、十分に確立されていない部分もある。
歴史
SPHは1977年のGingoldとMonaghanによる天体物理のシミュレーションに関する論文[1]が起源とされており、手法の名前もこの論文が元となっている。しかし、この論文の謝辞でも述べているようにSPHの離散化はLucyのアイディアであり、Lucyも同年に少し遅れて同様の離散化を用いた論文を公開している[2]。
空間離散化
SPHでは粒子1個の密度分布として補間関数を定義する。補間関数は伝統的にカーネルと呼ばれる。このカーネルという語は離散データの補間関数の呼び名として一般的に用いられる。
SPHでは、このカーネルの重ね合わせで物理量を置き換える。すなわち物理量分布はカーネルの足し合わせで表され、空間微係数はカーネルの微係数の足し合わせで表される。この空間離散化コンセプトがSPHのベースである。
SPHカーネル
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