【SH-3】(えすえいちすりー)
Sikorsky SH-3 Sea king(シーキング)
アメリカのシコルスキー社が開発した対潜ヘリコプター。社内呼称S-61。
米海軍がHSS-1の後継として1957年に発注し、1959年にHSS-2として完成。
1961年には4軍統一の機体命名法によるSH-3Aへ改称されて就役している。
大型の機体ではあるが空母や戦闘艦などでの艦上運用が強く意識され、5枚ブレードのメインローターやテイルブームは自動的に折りたたむことができる。
また尾輪式のランディングギアを備えるが、胴体は船底型の水密胴体で、飛行中は主脚を胴体横のフロート兼スポンソンに引き込む。
飛行用の装備として自動航法装置、安定装置、ドップラーレーダー、電波高度計などを備える全天候型の機体である。
対潜戦闘装備としてはソナー、爆雷、魚雷などを搭載する。
多くの西側国家で採用され、イギリスではウェストランド社によって独自の発展型も開発された。
海上自衛隊では、なぜかHSS-2呼称のままで採用され、長きに渡って使用され続けた。
傑作機ではあったが老朽化や陳腐化の末、現在では退役が進み、後継のSH-60やAW101などに道を譲りつつある。
スペックデータ(SH-3H)
乗員:4名
全長:16.69m
全高:5.13m
主ローター直径:18.9m
全長:22.15m(主ローター含む)
空虚重量:6,201kg
全備重量:9,525kg
速度:267km/h(最大)/219km/h(巡航)
海面上昇率:616m/min
実用上昇限度:4,480m
ホバリング上昇限度:3,200m
航続距離:970km
発動機:GE T58-GE-10ターボシャフトエンジン(出力1,400hp)×2基
機内燃料容量:3,180リットル
武装:対潜魚雷または爆雷×4発、対艦ミサイル×2発を搭載可能。
SH-3(S-61)のバリエーション
- S-61:アメリカ軍のH-3に対するシコルスキーでの呼称。
- S-61A:デンマーク空軍向け。
- S-61A/AH:測量や捜索救難など民間向け汎用ヘリコプター。
- S-61B:海上自衛隊のHSS-2に対するシコルスキーでの呼称。
- S-61D-3:ブラジル海軍向け。
- S-61D-4:アルゼンチン海軍向け。
- S-61NR:アルゼンチン空軍向け。
- S-61L:民間向け陸上ヘリコプター。
- S-61N:民間向け水陸両用ヘリコプター。
- S-61「ペイローダー」:クレーン作業特化型。機体下部構造が特徴である。標準的なS-61Nより約900kg軽量化されている。
- S-61「ショートスカイ」:エンジン1基搭載と外部ペイロードを増やした設計で、S-61L/Nより機体を縮小された。
- AS-61:アグスタ社のライセンス生産型。
- CH-124:ユナイテッド・エアクラフト・オブ・カナダ社のライセンス生産型。
シコルスキー製
対潜型:
- XHSS-2:試作型。1機のみ。
- YHSS-2:先行量産型。9機が製造された。
- SH-3A(旧称HSS-2):初期型。
- SH-3D:エンジン出力向上型。
- SH-3H:ソノブイや対潜レーダーなどを搭載し、索敵能力を向上させた型。
- SH-3G:A型/G型を改修した輸送・連絡用。
- UH-3H:SH-3Hから対潜機材を撤去した汎用型。
- CH-3A:アメリカ海軍のSH-3Aがアメリカ空軍に移管された機体。
- CH-3B:CH-3Aの正式量産型。CH-3Aも後に統合された。
- CH-3C:アメリカ空軍向けの輸送ヘリコプター型。
- S-61A:民間輸送型。海上自衛隊は南極観測に利用。
- S-61A-1:南極観測用S-61Aの後継機。
- AS-61-4:アグスタ社によるイタリア海軍向けライセンス生産機。
捜索救難型:
- HH-3A:海軍向け。
- HH-3E:アメリカ空軍向けで、胴体後部にカーゴドアを追加。通称「ジョリー・グリーン・ジャイアント」。
- HH-3P:米沿岸警備隊向け。FLIRを装備。
- S-61AH:S-61Aに捜索救難装備を搭載した、三菱重工業による海上自衛隊向けライセンス生産機。
その他:
- RH-3A:機雷掃海用。
- NH-3A:アメリカ空軍向け実験機型。
- MH-3E:HH-3Eを改良した特殊作戦機。
- VH-3A:アメリカ海兵隊の大統領専用機。いわゆる「マリーン・ワン」。
- VH-3D:VH-3Aの改良型。
ウェストランド製
- HAS.1:イギリス海軍用の対潜哨戒型。米軍SH-3D相当。
- HAS.2:HAS.1 の出力増強型。
- HAS.2A:HAS.1をHAS.2並に改装した機体。
- HAS.5:HAS.2の電子装備を新型に換装した機体。
- HAS.6:HAS.5の出力増強型。
- HAS.6(CR):HAS.6から改装した多目的機型。
- Mk.42:対艦ミサイル搭載可能なインド海軍向け機体。HAS.1に相当。
- Mk.45:HAS.1にエグゾセ搭載能力を付加した、パキスタン軍向けの機体。
- Mk.47:エジプト海軍向けの海上哨戒機型。HAS.2相当。
- Mk.50:オーストラリア海軍向けの海上哨戒機型。HAS.1に相当。
早期警戒型: - AEW.2A:HAS.2 から改装した早期警戒機型。
- AEW.5:HAS.5 から改装した早期警戒機型。
- AEW.7:従来の早期警戒機型から対潜レーダーを除去した型。
- ASaC.7:AEW.7 の能力向上型。
捜索救難型: - HAR.3:HAS.2の捜索救難機型。
- HAR.5:HAS.5の捜索救難機型。
- Mk.41:HAS.1からソナー装備を撤去したドイツ海軍向けの捜索救難型。
- Mk.43:ノルウェー軍向けの捜索救難型機。Mk.41に相当。
- Mk.48:ベルギー空軍向けの捜索救難型機。Mk.41に相当。
- COMMAND Mk.1:エジプト空軍向けの捜索救難型機。Mk.41と同等。
多用途型: - HC.4:COMMAND Mk.2のイギリス海軍用戦術輸送機型。
- HU.5:HAS.5から改装した多目的機。
- COMMAND Mk.2:COMMAND Mk.1の出力を増強した戦術輸送機型。エジプト、カタール軍が採用。
- COMMAND Mk.3:カタール軍向けの武装多用途型機。
SH-3 (航空機)
SH-3 シーキング
- 用途:対潜戦・捜索救難・輸送
- 分類:哨戒ヘリコプター
- 製造者:シコルスキー・エアクラフト
- 運用者:
- 初飛行:1959年3月11日
- 運用開始:1961年
- 運用状況:アメリカ軍からは海兵隊のVH-3Dを除き退役
- 原型機:シコルスキー S-61
- 派生型:
SH-3 シーキング(英語: SH-3 Sea King)は、シコルスキー・エアクラフトが開発した双発哨戒ヘリコプターである。アメリカ海軍が運用していたH-34 チョクトーの後継に採用された。
開発
1957年、シコルスキーは全天候型哨戒ヘリコプターの開発をアメリカ政府と契約した。H-34 チョクトーの後継として対潜戦の役割も兼ねるものであった。試作機は1959年3月11日に初飛行。1961年6月にHSS-2 シーキングと命名され、アメリカ海軍で運用が決定した。
1962年、航空機の命名規則改正[注 1]によりHSS-2はSH-3に改正された。SH-3 シーキングは、主に対潜戦の任務で使用されたが、対艦攻撃、捜索救難、兵員輸送、通信、要人輸送、早期警戒など様々な用途に使用された。
民間向けのシコルスキー S-61も開発された。
設計
強力なタービンエンジン双発の大型機となったことで、これまでは捜索役と攻撃役の2機(ハンター/キラーチーム)で行わなければならなかった対潜作戦が単機で行えるようになった。開発段階で艦載機を想定していたため、メインローターブレードや尾部のテイルブームなどは折りたたむことができる構造になっている。メインローターブレードとテイルローターブレードは共に5枚である。水陸両用作戦での運用を想定して限定的な着水性能も有する。機体両側に配置されたスポンソンにはエアバッグが格納されており、着水時の衝撃緩和とフロートの役割をなす。
幅広い装備があり、それらは用途によって異なる。空母戦闘群(現 空母打撃群)での運用時は、魚雷4本と爆雷4個か空対艦ミサイル4本のいずれかを装備し、空母戦闘群を間接的に防御するためチャフを搭載した。
対潜センサとしては吊下式ソナー、ソノブイ、磁気探知機(MAD)があり、データリンクを介して得られたデータは艦隊に送信できた。捜索救難任務の際には軍医2名と22名の遭難者か、9名分の担架を搭載できた。
派生型
- XHSS-2
- 試作機。
- YHSS-2
- アメリカ海軍向け試作・評価機。
- SH-3A
- 旧HSS-2。最初の生産型。
- HH-3E
- アメリカ空軍の捜索救難機。
- CH-3A
- SH-3Aをアメリカ空軍向けに改修した機体。後のCH-3B。
- CH-3B
- アメリカ空軍の兵員輸送型機。
- VH-3A
- アメリカ海兵隊向け要人輸送型機。
- VH-3D
- アメリカ海兵隊が運用する政府専用輸送機(大統領の短距離移動機「マリーンワン」に使用される)。
- S-61
- アメリカ軍のSH-3に対するシコルスキーの型式番号。
- S-61A
- デンマーク空軍向け。
- S-61A/AH
- 測量や捜索救難など民間向け汎用ヘリコプター。
- S-61B
- 海上自衛隊のHSS-2に対するシコルスキーの型式番号。
- →詳細は「三菱-シコルスキー S-61」を参照
- S-61D-3
- ブラジル海軍向け。
- S-61D-4
- アルゼンチン海軍向け。
- S-61NR
- アルゼンチン空軍向け。
- S-61R
- アメリカ空軍(CH-3/HH-3)、イタリア空軍他向け。
- →詳細は「シコルスキー S-61R」を参照
- AS-61
- アグスタ社の型式番号。
- WS-61
- ウェストランド社の型式番号。
- →詳細は「ウェストランド シーキング」を参照
- CH-124
- ユナイテッド・エアクラフト・オブ・カナダ社の型式番号。
性能・主要諸元
SH-3H
- 全長:16.69m
- 全高:5.13m
- 主回転翼直径:18.9m
- 全長:22.15m(主回転翼含)
- 空虚重量:6.201t
- 全備重量:9.525t
- 超過禁止速度:267km/h=M0.22
- 巡航速度:219km/h=M0.18
- 上昇率:616m/min(海面上)
- 上昇限度:4,480m
- ホバリング上昇限度:3,200m
- 航続距離:970km
- 発動機:ゼネラル・エレクトリック T58-GE-10ターボシャフトエンジン×2基
- 出力:1,400hp
- 燃料容量:3,180リットル(機内)
- 武装:Mk.44対潜魚雷×4発、Mk.46対潜魚雷×4発、B57核爆雷×4発、対艦ミサイル×2発
- 諸装備:AN/AQS-13A/B/Eソナー、各種ソノブイ、ARR-75ソノブイ受信機、ASQ-81磁気探知機、AKT-22データリンク、TACNAVデジタルナビゲーションシステム
- 乗員:4名
採用国
登場作品
映画
- 『インデペンデンス・デイ』
- VH-3Dが登場。ホワイトハウス上空にシティ・デストロイヤーが飛来した際に、南庭に2機が駐機、待機する。その後、エイリアンが敵対勢力であると判明すると、1機が大統領達を脱出させるためにエアフォースワンまで送り届け、残った1機は離陸中にシティ・デストロイヤーがホワイトハウスに向けて発射した主砲の爆風に巻き込まれ破壊される。
- 『ターミネーター3』
- T-Xに追い詰められたジョン・コナーを救うため、T-850が操縦して格納庫に突っ込み、T-Xを下敷きにする。
- 『ファイナル・カウントダウン』
- ニミッツ級航空母艦「ニミッツ」の艦載機であるSH-3Hが登場。母艦とともに真珠湾攻撃直前の時代へタイムスリップし、漂流する民間人と日本海軍パイロットの救助活動や輸送を行う。
- 『ホワイトハウス・ダウン』
- VH-3Dが3機登場。大統領を救出するためホワイトハウスへ向かうが、テロリストがホワイトハウス屋上に設置したブローニングM2重機関銃による攻撃を受け、やむなく撤退する。
- 『レッド・オクトーバーを追え!』
- 原子力空母「エンタープライズ」の艦載機であるSH-3Hが登場。主人公のジャック・ライアン中佐を、ロサンゼルス級原子力潜水艦「ダラス」まで輸送する。
アニメ・漫画
- 『学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD』
- VH-3Dが登場。アメリカ政府首脳陣がホワイトハウスから脱出したことを報じるニュース映像の中に登場している。
ゲーム
- 『グランド・セフト・オート・サンアンドレアス』
- 「Leviathan」の名称で登場。フロートが装着されており、水上に着水することが可能。
脚注
注釈
- ^ 1962年以前はen:1922 United States Navy aircraft designation system(1922年からの米海軍命名規則)を参照
出典
参考文献
- Taylor, John W. (1966). Jane's All the World's Aircraft 1965-66. Sampson Low. NCID BA01536928
- Taylor, John W. (1974). Jane's All the World's Aircraft 1974-75. Key Book Service. ISBN 978-0354005029
- Taylor, John W. (1983). Jane's All the World's Aircraft 1982-83. Jane's Publishing Compny Limited. ISBN 978-0710607805
- Lambert, Mark (1991). Jane's All the World's Aircraft 1991-92. Jane's Information Group. ISBN 978-0710609656
関連項目
- ヘリコプター66:アポロ計画で搭乗員の回収を行った事で知られるSH-3シーキング。
外部リンク
- “H-3 Sea King helicopter” (English). The US Navy, Fact File (18 February 2009). 2012年3月22日閲覧。
- UK Sea King - naval-technology.com
SH-3 (SH7702/7708 - 動作周波数60MHz)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/04 01:34 UTC 版)
「SuperH」の記事における「SH-3 (SH7702/7708 - 動作周波数60MHz)」の解説
マイクロソフト社のWindows CEに対応したシリーズ。高速化と共にMMUなどのマルチタスクOSに必要な機能を追加し、カシオのPDA(カシオペアシリーズ)への搭載を前提として、カシオ計算機と共同開発された。またWindows CEに向け割込み機構を変更した。リトルエンディアンにも変更可能(SH-1、SH-2はビッグエンディアン)。1995年3月出荷。マイクロソフト社が当時開発中であったPDA向けOS(Windows CE)を動かすのに適したマイコンであると、カシオがマイクロソフト社に直々に推奨するなどした結果、カシオのカシオペアシリーズや日立製作所のPERSONAシリーズ以外にも、OSとしてWindows CE を採用したPDA製品にかなり幅広く使用された。そのほか、独自OSの「ザウルスOS」を搭載したシャープのZaurus(MIシリーズ)など、1990年代後半のさまざまなPDA製品にも使用された。
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