MSX‐2
MSX2
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/03/12 13:44 UTC 版)
MSX2(エム・エス・エックス・ツー)とはMSX規格の一つで、1985年5月7日に発表され[1]、6月から規格適合機種が発売された[2]。
後方互換性に配慮しつつ、従来の初代規格と比べ、主にグラフィック機能が大幅に強化された。規格の末期には低価格路線を推し進めたことでユーザー数が大幅に増加したことや、後継となった規格のMSX2+が性能的にほぼ据え置きとなったこともあり、一連のMSX規格のうち事実上の標準と見なされることもある。
一方で、MSX2になってもゲームマシンとしてはファミコンに及ばない面もあり、パソコンとしてもパソコン御三家などからグラフィックを書き直して移植されたものが大多数で、MSX2オリジナルのパソコン然としたソフトは少なかった。解像度が他の国産機と異なっていたことや、漢字ROMがオプションだったことも移植に影響した。またMSXのバンク切り替えを多用する規格上の制約並びに、インターフェイスの設計からフロッピーディスクドライブなどの転送中はCPUの割り込み処理を止めざるを得なかったため、サウンドの再生が途切れるなどの制約も存在する。
歴史

MSX2は当初MSX1と並行して販売され、マーケティング上の差をつけるためにFDD・漢字ROM・128KiBから256KiBのマッパーメモリーを搭載した。さらに本体・キーボードが分離するセパレートタイプで「本格的なパソコン型」の高価な製品が多かったが、これは、新規設計されたMSX-SYSTEMやMSX-SYSTEMII、V9938などの主要パーツや、8ビットパソコンとしては破格の大容量メモリーを搭載したために製造原価が押し上げられたことによる。
1985年の年末には参入各社からMSX2のセパレートモデルが市場投入されたが、同時期にPC-8801mkIIFR、X1turbo II、FM77AV20が同価格帯で発売されており、競合機種がひしめいていた。
MSX2発売当初はまだメガROMカートリッジは存在せず、FDDのない標準的仕様のMSX2ではその拡張されたグラフィック機能を活かすことが難しかった。また高級機は、一般向けには他の独自仕様ホビー・ビジネス機と対象が重なり、16ビット機の台頭も著しかったことから、一般ユーザーのMSX2への移行は緩やかであった。こうして発売後しばらくは「2〜6万円のMSX1」・「FDD非搭載、キーボード一体型で10万円弱のMSX2」・「FDD・漢字ROM内蔵、キーボードセパレートタイプで15万円程度の高級MSX2」の3路線のマシンが併売された。当時はワープロ専用機の全盛期でもあり、ワープロソフトを内蔵または付属した製品は数多く、10万円クラスの製品にはプリンターと一体化した製品も存在した。
1986年秋、本体・キーボード一体型の低価格機として松下電器産業が定価29,800円のFS-A1を、ソニーが定価32,800円のHB-F1をそれぞれ発売する。これは前出のMSX-SYSTEMやMSX-SYSTEM II、V9938の製造設備の償却が終了し単価が大幅に下げられたことと、他社16ビットパソコンの普及でメモリーの価格が低下していたことなどの相乗効果による。その直前にメガROMカートリッジが登場したことで、向上した映像表現を実現できるようにもなり、価格差が無くなったMSX1と置き換わる形で主にゲーム機として低年齢層を中心に普及した。
1987年、この両機種の上位モデルとなるFS-A1F/HB-F1XDが登場。1基のFDDを内蔵して、定価はいずれも54,800円だった。同時期に外付けFDD(I/Fユニット含む)も3万円台にまで値が下がったことで主要メディアがROMカセットから廉価なFDに移行し、競合他機種にFDベースでソフトをリリースしていたメーカーがMSX2にもソフトを供給する体制が整った。また、ユーザーがそのグラフィックを中心としたデータを自由に扱える環境が整い、その後のMSX2規格を牽引していった。両シリーズが普及したことで、MSX2以降も「キーボード一体型の、安価なオモチャのパソコン」というイメージが定着するとともに、カートリッジスロット2つにFDD1台の環境を標準的なシステムとして、それに合わせたソフトウェアが用意されるようになった。
一方、低価格化の波は差別化を困難にし、ソニー、松下電器産業、三洋電機以外の各社はMSX/MSX2規格から撤退した。ホビーパソコンの市場は既に8ビットから16ビットの転換期にあり、パソコンから撤退したメーカーや、16ビットのAX規格にも参入するメーカーもあった。
世界的には400万台が出荷(MSX1も含む)されたと公称されている。
主な仕様

MSX1とは高い互換性を保っていたものの、MSX2で追加された仕様によって特定の状態を期待しているものが、期待される状態にならなくなったものや、ROM Versionに依存する形でのROM内ルーチンの直接コール等、初代MSX用のハードウェア並びにソフトウェアの一部に少数ながら動作しないものが存在している。
- CPU
- ザイログ社 Z80A相当品(クロック周波数3.579545MHz、割り込みはモード1)
- VDP
- ヤマハV9938
- 画面モード
- 〔〕内はVRAM64KiBの機種の場合
- SCREEN0
- テキスト40×24または80×26文字(1文字6×8ピクセル) - 文字・背景とも(512色中)16色パレット中1色 スプライト使用不可
- SCREEN1〜3
- MSX1準拠に加え、固定16色ではなく512色中16色を選択可能
- SCREEN4
- グラフィック256×192ピクセル 512色中16色(横8ドット内2色まで) - ライン単位色指定のスプライト使用可能(以下の画面モードも同じ)スプライト機能以外はSCREEN2と同一。
- SCREEN5
- グラフィック256×212ピクセル×4画面〔2画面〕 - 512色中16色
- SCREEN6
- グラフィック512×212ピクセル×4画面〔2画面〕 - 512色中4色
- SCREEN7
- グラフィック512×212ピクセル×2画面〔使用不可〕 - 512色中16色
- SCREEN8
- グラフィック256×212ピクセル×2画面〔使用不可〕 - 固定256色
- SCREEN9
- 韓国版MSX2にのみ搭載(ハングル表示用のモードで、日本国内版を含め他国版には搭載されていない)
- 512色は赤・緑・青各8階調、256色は赤・緑は8階調、青は4階調
- メインメモリー
- 64KiB〜
- VRAM
- 64KiBまたは128KiB
- サウンド
- MSX1準拠
- PPI
- MSX1準拠
VDPの一新
VDPはTMS9918とソフトウェア的な互換性を保ちつつ、ビットマップ画面の追加やスプライトの拡張などの性能の向上を図ったV9938へと変更された。VRAMの容量は64KiBまたは128KiBで、メーカーによる増設サービスやユーザーによる改造などの例外を除けばその機種の標準構成で固定である。システムの起動時には縦スクロールして大きいMSXロゴが現れ、VRAM搭載容量が表示された。
テキスト画面も80桁表示が可能になった。家庭用テレビの使用時には見づらくなり、フォント当たりの横幅が6ピクセルとなっているため一部の文字の表示が欠けてしまうものの、プログラムの作成、入力などで画面当たりのテキスト情報量が増えた。
一方で、V9938は「スプライトの同時表示枚数が強化されていない」「ビットマップの描画があまり速くない」「PCGは強化されていない」「横方向のハードウェアスクロール機能がない」など、ゲーム用途で用いるには優れているとは言い難く、価格帯として競合したゲーム専用機と比較して本格的なアクションゲームを作るには不向きだった[注釈 1]。作るとしても、VRAMの使用量が比較的少なく、速度的に余裕がある16色横256ドットのモードが使用されることが多かった。横スムーススクロールについては後に、表示位置の補正機能を用い実現するソフトウェアが現れた。
SCREEN4以上の画面モードでのスプライトはモード2とされ、横ライン毎の着色指定と重なり合った二枚のスプライトによりスプライト1の色・スプライト2の色・両者のORを取った色・透明の4色の表示が可能となった。また、横方向に同時に表示できる枚数が4枚から8枚になり、実際の色が重なっている座標を検出する割り込みモードの追加などが強化されている。ただし、一画面同時表示が32枚までであることに代わりはない上に重ね合わせの多色表示を行うとそれらの恩恵は利用できないという制約があったため、シューティングゲームの敵などは相変わらず単色のことも多かった。後に画面割り込みを利用して、見かけ上倍の64枚表示を売り物にしたゲームも発売された。
ビットマップグラフィックスモードでは、新設されたVDPコマンドが使用でき、CPUのアドレス空間を超える容量のVRAMに対するアクセスをサポートした。転送や描画には論理演算を行えるなど当時としては高機能であり、スプライトなどの機能を含むこれらの機能によってBASICコマンドで実現する描画処理は直接VDPを制御するのに肉薄する速度で動作し、当時のパソコン誌には他の機種では難しかったユーザーによって作成されたリアルタイムゲームが多数掲載された。また、GRAPHIC 3(BASICでいうところのSCREEN4)以外の追加された画面モードはビットマップグラフィックであり、VDPコマンドの存在をもってしてもゲームの背景としてダイナミックな動きを実現することは難しかった。
理論上、VDPはCPUとの並列処理が可能である。しかし、VDP自体が高速なものではなく、VDPのみで完結する処理が限られていること、CPU自体が高速ではないことから並列性は上がらず、現実的にはアクセスに対するウェイトの存在やVDPを介してVRAMに対してアクセスする構造はコーディングによる工夫の壁となり、他の実装のハードウェアに対して大きくパフォーマンスを向上させることはなかった。そしてVDPが表示制御をする構造は、後継規格であるMSXturboRでCPUが高速化した際にシステムパフォーマンスの足を引っ張る原因となった。
テレビへ表示することを前提に作られていることもあり、最大解像度そのものも横幅が最大512ドットで、他の同時期のコンピュータより狭く設定されている。一方で、256色同時発色のモードは少色・高解像度一辺倒だった当時のパソコンの中では特色のある仕様であり、この後にシャープから256色表示のMZ-2500が、富士通から4096色表示のFM77AVが発売された。また、少色表示のモードではカラーパレットが使えるようになり、表示色の選択の自由度が増した。初代MSX規格用のソフトウェアの一部では、機種を判定し、カラーパレットによる表現を追加しているものもある。なお、起動時に設定されるカラーパレットのデフォルト色はMSX1に近いものに設定されたが、表示色の分解能などからカラーテーブルに完全な互換性がないため、実際にテレビに写る色は微妙に異なる[3]。
SCREEN5以降のモードでは、2画面切り替えでインターレース表示をすることで、縦方向の解像度を見かけ上、倍にすることができた。標準のBASICでは設定ができるのみで活用されてはいなかったが、後に発売された漢字BASICでは正式に使用された他、一部のゲームソフトやグラフィックツールでも使われていた。これにより、漢字表示の文字数などでは当時の他のパソコンにほぼ並ぶことができた。ただし、「家庭用テレビにつなげて使える」はずのMSXにあっては、アナログRGB入力端子つきのテレビ・モニターを所有しているか、RF・ビデオ出力では目立ってしまうちらつきを許容する必要があった。
メモリマッパの追加
オプション規格ではあるが、メモリマッパが追加された。各スロット上に4MiBのメモリ空間を持つことができ、その中の任意のセグメントをそのスロット上の任意のページに割り当てることができる。セグメント、ページはともに16KiBである。これによりシステム全体で64MiBのメモリ空間を持つことができる。 メモリマッパはマッパレジスタによって管理され、レジスタはI/O空間のFCH~FFHにマッピングされる。このポートは全てのスロットで共用なので、基本的に書き込み専用である。
MSX2ではメイン・メモリーが最低64KiBと規定され、メモリマッパを搭載すれば4MiBのRAMを持つことができた。ただし、MSX-SYSTEMIIなど、本体内蔵LSIのメモリマッパが512KiBまでしかデコードされておらず、当時はメモリが高価であり実際にフル実装された環境はまれだった。初期のハイエンド機でこそ128KBや、256KBを搭載した機種があったものの、MSX-DOS1並びにMSX-BASICとそのBIOSではサポートルーチンが用意されず、規格としてオプションだったことなどから、ディスクリート部品で構成された国産機種などでは搭載されていない機種も多く存在する。このような条件も重なって、国内の市販ソフトウェアで積極的に対応することはなく、メモリマッパをサポートするソフトウェアは独自流通のユーザーによるプログラムの方に多く見られた。
システム全体を管理する仕組みがないため、MSX-DOS1上のプログラムなどで、常駐プログラムなど複数の対応ソフトウェアを併用する場合はその使用状況の競合などへの考慮が必要となる。海外ではメインメモリが64KiBでもメモリーマッパーを内蔵している機種が標準とされ、存在することを前提にMMUの代わりに使用しているようなプログラムも見られる。 システムからのサポートにはMSX-DOS2が必要となり、最も大きいメモリが接続されているメモリマッパーがプライマリマッパーとして選択され、その際管理される最大容量は4096KiBとなっている。
アスキーからは、768KiBのマッパーRAMカートリッジが発売されている。個人ユーザーによるものではあるが、カートリッジ内で拡張スロットを増設し、その全スロットに目一杯のRAMを搭載した16MiBメモリマッパカートリッジ[4]も発表されている。
その他の変更点
16Byteと小容量ながら乾電池によるバックアップ機能も付加され、RTCや起動時の画面モードの保存、起動時パスワードの保持、Beep音の設定保存などに排他的に使用された。
BASICは強化された表示回りのサポートの強化のほか、カナの入力にローマ字入力がサポートされるなどの機能追加が行われている。
サウンドではオプションとして、文字多重放送とキャプテンシステムに対応したFM音源/ADPCM音源を採用したMSX-AUDIO(Y8950)も規格に盛り込まれた。しかし、松下電器産業が商品化したMSX-AUDIO対応カートリッジは、34,800円と本体価格に比して高価でかつ対応ソフトもほとんど発売されなかったこと、その特殊な形状などから国内では普及しなかった。標準ではMSX1から据え置きのPSG音源のままであり、この頃からFM音源をオプションとして用意、もしくは標準搭載され始めた他のパソコンに遅れを取っていた。このためコナミは独自の拡張音源「SCC」を開発するに至り、この状態は1988年に松下電器産業から7,800円とより安価なFM音源カートリッジFM-PAC(MSX-MUSIC)が発売されるまで続いた。
MSX1規格からのアップグレード
MSXという規格の柔軟さを生かし、当初より拡張アダプターによるMSX1規格からのアップグレードパスがアナウンスされ、いくつかのメーカーで発売の検討がされた。しかし、コストや互換性などの問題から最終的に製品としてリリースされたのは1986年夏に発売されたNEOSのMA-20のみである。MA-20はMSX-BASICカートリッジと、VDP等を内蔵したカートリッジで構成される。64KBのRAMを搭載していないMSX1で使用するには別途RAMの増設が必要で、合計3スロットを要することから標準的な2スロットモデルでは拡張スロットも必要になった。MA-20単体の価格は29,800円で買い替えより安価だったが、拡張RAMや拡張スロットを追加で購入すると買い換えとの価格差は殆どなくなった。さらには同年末にMA-20と同価格のMSX2が発売されたことで程なくして市場から淘汰された。
構造的にVDPは置換することができないため、このアダプタではカートリッジ内のV9938とMSX-BASIC2.0をシステムに追加する形で動作する。MSX規格ではVDPに対しアプリケーションがBIOSを介さずメインROMの6、7番地に格納されているアドレスを介して直接アクセスすることを許容しており、バージョンアップアダプタも既存のVDPとの競合を避けるため、標準ではないI/Oアドレスに接続されている。このような条件のハードウェアは少ないことから問題が露呈することが少なく、標準のI/OアドレスにVDPが存在する前提でプログラムが組まれていて正常に動作しないソフトウェアも少なからずあった。構造上はMSX2+やMSXturboRに接続しても、カートリッジ上のソフトウェアが優先されるため、増設したハードウェアによってMSX2にダウングレードして動作するようになっている[注釈 2]。
MA-20のプロトタイプとなるMA-10は、MSX2が初出展された「マイコンショウ'85」で既に展示されていた。MA-20と異なり据置型のユニットをカートリッジスロットを介して接続する形状で、ユニット側にカートリッジスロットが1スロット搭載されていてスロット数が減らないようになっていた[5]。最終的にカートリッジ2本組の構成になったのは「価格を下げるのに極限まで無駄を削った結果」とのことであった[6]。
参入したメーカーと発売した主な機種
太字はVRAM64KB、斜体は本体・キーボード分離型のセパレートタイプを表す。
- キヤノン - V-25,V-30F
- 三洋電機 - WAVY25F,WAVY25FD,WAVY25FK,WAVY25FS,WAVY23,WAVY-77,WAVY-55FD2
- WAVY-25FはセパレートタイプでVRAM 64KB、1DDドライブ搭載のレアなモデル。25FDはVRAM 128KBで2DDドライブ搭載。25KKは漢字ROM追加。25FSは海外専用で25FのVRAMを128KBにしたモデル。
- WAVY-77はワープロソフトMSX-JE(日本語MSX-Write)内蔵・24×24ドットマトリクス熱転写プリンター搭載のワープロ型機種。RAM64KB、VRAM128KB、FDD1基搭載。電源投入時に本体スイッチ操作でMSX2モード、ワープロモードを選択して起動する。[7]
- WAVY-23はFS-A1, HB-F1に続いて発売された3万円MSX2。独立テンキーを標準搭載。
- ソニー - HB-F5,HB-F500,HB-F700,HB-F900,HB-T7,HB-T600,HB-F1,HB-F1mk2,HB-F1XD,HB-F1XDmk2
- HB-F1シリーズは漢字ROM非搭載、CPUを断続的に停止させ、実行速度を遅くする機能であるスピコン・スペースキーを連射化する連射ターボ・CPU動作を一時停止させるポーズキー付き。
- HB-F900はRAM256KB、2DDディスクドライブが2基で本体色は白と黒、別売の専用デジタイザ(HBI-F900、色は黒のみ)を接続可能。分離型キーボード、マウスとワープロソフト「WORD SHIP」が附属。[8]
- HB-T7とHB-T600は通信モデムと漢字ROMを搭載。
- HB-T600はFDD1基とRAM128KBも搭載、株式ターミナルと銘打って株式パッドと専用の株式管理ソフトが同梱された。標準キーボードはオプションで、HB-F900等と同一のものを使用。
- HB-F1XDの筐体はMSX2+以降も採用され、ソニーのMSX撤退まで使われ続けた。
- HB-F500の初期モデルはスロットマップに問題があり一部動作しないソフトがあった。これを故障として修理に出すとメーカー側でスロットマップを修正して返却された。なお後期モデルはスロットマップが変更されているのでこの問題は発生しない。
- 東芝 - HX-23、HX-23F、HX-33、HX-34
- 日本ビクター - HC-80,HC-90,HC-95
- HC-90,HC-95(HC-90のFDD2基版)は3.58MHzのZ80Aの他に、日立のZ80上位CPUHD64180を搭載し、6.144MHzの高速動作にする「ターボモード」が存在する。PSGの音程はそのままだが、ほとんどのゲームソフトはスプライトがちらついたり画面が崩れたりと正常に動作しない(ESCキーを押しながら起動するとメモリウエイトなどの設定が行える)。スーパーインボーズ機能と、VHDカードなどが挿せる独自のJVCスロットを外部に2基、独自の内部拡張スロットを4基備える。標準仕様のスロットは1基。
- HC-95の後期機種(HC-95T)はVDPがV9958になっており、メーカー非公認だがマシン語レベルでMSX2+専用プログラムが動作する。搭載メモリも64KBから256KBに増設されている。MSX2+登場以降も業務用途に販売が続けられ、時期により前面パネルやキーボードコネクタの形状に違いがある。RGBコネクタは独自仕様のD-Sub25pin。
- 日立製作所 - MB-H3,MB-H70
- MB-H3は本体から分離が可能な手書きタブレット(パッド上にテンキーのシルク印刷がされていてソフトウェアキーボードとしても使用可)を搭載。標準ではVRAMは64KBで、基板には、増設用のパターンが設けられており、メーカーが増設サービスを行っていたほか、改造でVRAM128KBに増設できた。
- MB-H70は三菱ML-G30とキーボードが同一で、それ以外の箇所も酷似しておりOEMの可能性がある。漢字ROMとRAM128KiB搭載。
- 三菱電機 - メルブレーンズ ML-G10,ML-G30,ML-TS2,ML-TS2H
- ML-G30はセパレート機で漢字ROMとFDDとメインRAM128KiB搭載。FDD搭載数とRS-232Cの有無で2モデル存在する。標準スロット1基のほか内部スロット3基搭載。「メルブレーンズ・ノート」という統合ソフト(ワープロ・表計算・ペイント・通信)が添付される。
- ML-TSシリーズは松下電器産業A1・ソニーF1等と同期販売のモデム内蔵機で第2水準漢字ROMも搭載されている。ML-TS2Hは電話器が付属。

- 松下電器産業(現:パナソニック)
- ナショナルブランド - FS-4500,FS-4600F,FS-4700,FS-5000F2,FS-5500F1/F2
- FS-4500,4600F,4700はワードプロセッサー内蔵モデルで感熱式プリンターが内蔵されている。
- 4600FはMSX-JE内蔵でメインRAM128KiB搭載。5000F2はメインRAM128KiB搭載、ワープロソフト付属。
- パナソニックブランド - FS-A1,FS-A1mk2,FS-A1F,FS-A1FM
- ナショナルブランド - FS-4500,FS-4600F,FS-4700,FS-5000F2,FS-5500F1/F2
- 日本楽器(現:ヤマハ) - YIS604/128,CX-7/128,CX-7M/128,YIS805/128,YIS805/256
- 河合楽器 - KMC-5000
- パナソニックのFS-A1FのOEM。
- 大山工業(ダイセン) - MX2021
- 業務用途向けで機器組み込みを前提とした機体。メインRAM128KiB搭載。ベースモデルはメインボードと電源が取り付け済みの箱形の大型筐体で、キーボードやカートリッジスロット用バスもオプションとなっている。S-100バスや2HDドライブもオプションで用意された。なお、2HDはMSX規格外である。その他にも映像出力がRGB出力しかないなどMSXの仕様を満たしていない点がある。
- NTT - Captain Multi Station
- キャプテンシステムの端末。
- 大宇電子(韓国、日本国内での発売は無し) - 大宇ポスコム CPC-300,CPC-400,CPC-400S
- CPC-300はFDD非搭載の普及型モデルで「大宇ポスコム IQ-2000」のブランド名で販売された。『IQ教室』というチュートリアルプログラムが内蔵されており、初期状態では電源を入れると自動で起動するようになっている。BIOSにも手が加えられており、起動時のMSXロゴが「IQ-2000」のロゴに書き換えられている。
- CPC-400はFDD搭載のセパレートモデル。韓国では殆ど使われなくなった漢字を表示するための漢字ROMも搭載されている。『IQ教室』は添付のユーティリティディスクに収録される形になった。
- CPC-400Sはスーパーインポーズ、デジタイザーなどの映像編集機能を搭載、松下電器の『ビデオグラフィックス』に酷似した編集ソフト(アイコンのデザインのみ異なる)が付属する。
- いずれのモデルも、MSX-BASIC 2.0をベースに大宇電子が拡張したハングルBASIC 3.0が搭載されており、ハングルの表示モードを設定する
SET HAN
命令や、高精細でハングルを描画する専用モードSCREEN 9
等が追加されている。
- テレマティカ(アルゼンチン、日本国内での発売は無し) - タレント TPC-310
この他、MSX規格に準拠した業務用(店頭端末用・工場などでの制御用・キャプテンシステム・ビデオタイトラー)の特殊な製品も存在する。
参入を検討したメーカー
- 新日本電気/日本電気ホームエレクトロニクス(現:日本電気、NECグループ各社)
脚注
注釈
出典
- ^ 日本経済新聞 1985年5月8日付
- ^ a b MSX Magazine 1985年8月号. アスキー. (1985年). p. 137
- ^ TMS9918Aに針路をとれ。
- ^ MSX2/2+/turboR用 16MBメモリー拡張カートリッジ | クラシックPC研究会
- ^ 徳間書店 月刊テクノポリス1985年7月号 p.84
- ^ MSX Magazine 1986年11月号. アスキー. (1986年). p. 108
- ^ 木村よしひさ「新製品速報 ワープロもパソコンもOK! カタチも機能もとてもユニークなMSX2パソコン 三洋“WAVY77(PHC-77)”」『マイコンBASICマガジン』1987年2月号、(第6巻第2号)、電波新聞社、46 - 47頁。
- ^ 木村よしひさ「新製品速報 マウスとワープロ・ソフト附属のMSX2の最高峰マシン ソニー“HB-F900”」『マイコンBASICマガジン』1987年2月号、(第6巻第2号)、電波新聞社、43 - 45頁。
- ^ しおんパパのひみつきち: 東芝MSXのRGB出力ピンアサイン
- ^ MSX2 : FS-A1 Slot Cover by cloudree - Thingiverse
- ^ アスキー書籍編集部編『みんながコレで燃えた!NEC8ビットパソコン PC-8001・PC-6001 永久保存版』(2005年、アスキー)
MSX2+
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/10/30 11:40 UTC 版)
MSX2+(エム・エス・エックス・ツープラス)とはMSX規格の一つで、1988年に発表された。
MSX1からMSX2への大幅な変更と異なり、MSX2+での変更点は、VDP変更による表示機能の追加や一部オプション規格の標準化に留まっている。
主な仕様

- CPU
- ザイログ社 Z80A相当品(クロック周波数3.579545MHz、割り込みはモード1)
- VDP
- ヤマハV9958
- 画面モード
- SCREEN0〜8:MSX2準拠
- (SCREEN9:ハングル表示用のモードのため日本のMSX2では欠番)
- SCREEN10・11:グラフィック256×212ピクセル×2画面 固定12,499色(ドット単位の色指定不可)+512色中16色(ドット単位に色指定可能)
- SCREEN12:グラフィック256×212ピクセル×2画面 固定19,268色(ドット単位の色指定不可)
- メインメモリー
- 64KB〜
- VRAM
- 128KB
- サウンド
- MSX1準拠
- PPI
- MSX1準拠
VDPの変更による機能の追加
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MSX2+では、従来のV9938に対し上位互換のV9958を搭載した。このことにより、多色表示である自然画モードと横方向のピクセル単位のスクロール機能が追加された。この二点が、MSX2+での規格上の最大の変更点と追加機能ともいえる。
自然画モードは、SCREEN8と同じVRAM容量・解像度で扱える色数を増加させた画像モードで、色相を4ドット単位で丸め(輝度は1ドット単位)、なおかつ青の色相値を省く(赤と緑の色相値から相対的に求める)ことで画像の精度は落ちるものの発色数を論理値で19,268色に上げている。その特性からドット単位で色が指定できず、自然画以外では4ドット単位でブロック歪みが顕著になる扱いづらさがあり、市販ソフトでも特典映像で取り込み画像を表示する程度の使い方しかされなかった。
なお自然画モードとRGB形式の色情報は変換式により相互変換が可能で(丸め誤差は生じる)、機種判別を行った上でMSX2の場合は自然画を256色にダウンサイズしてSCREEN8で表示するソフトもあった。
横スクロール機能もVDPの位置補正の機能を利用することによって、制限や制約が付くものの同様の動作をMSX2で実現するものも現れた。それらの処理は、機種判別を行いMSX2+の場合はハードウェアの機能を利用するように作られたものもあった。
上記の変更点を除き、従来からあった機能や速度の強化はされていないため、ビットマップモードでは動きの多いソフトウェアを作成しづらいという状況も変わりは無く、結果としてMSX2+は、MSX2に対して大幅なアドバンテージを有していたとは言えなかった。
オプション規格の標準化
MSX2ではオプション扱いだった漢字ROMが標準搭載とされた。なお、MSXの漢字ROMはフォントの形状は規定しておらず、特定の文字コード以外は、各社該当する文字が同一であれば、フォントそのものは同一であることを要求していない。
また、詳細は各社でまちまちだったフロッピーディスク・ドライブ(MSX DISK-BASIC)の規格や内部スロット配置が標準化された。
規格にはオプションとしてMSX-JE、MSX-MUSICが盛り込まれた。実際に発売されたMSX2+機の大半は、これらの規格を内包した仕様で発売されている。
本体仕様に密接なVDP以外は拡張仕様であり、オプションとして商品も存在したため、結果的にMSX2もV9958で追加された機能以外はMSX2+相当の機能にすることが可能になっていた。これらの状況から、市販のMSX用ソフトウェアはMSX2+発売以降も「要・漢字ROM」等の但し書き付きのMSX2対応製品がメインとなり続けた。MSX2+専用ソフトは数えるほどしかなく、兼用のソフトウェアでMSX2+では最適化された動作をするという形となっていた。
その他の変更点
MSX2までの実装では、裏RAMに起動可能なROMイメージをコピーすると起動時にそのイメージを起動可能なROMとして認識し、自動的にそれが起動する可能性があった。通常DRAMは揮発型の記憶装置であり、電源断と共に有意な値は持たなくなることが期待されていたが、現実にはメインメモリーのチップのCMOS化と、バイパスコンデンサーに蓄積された電力などの要因により内容が保持されてしまい、電源を切っても5分近くその状態が維持されてしまうような状況が発生していた。そのためMSX2+では、起動時にメインメモリーのROM識別IDに該当するエリアをクリアするように変更されている。
システムの起動画面は、左右から横スクロールで大きいMSXロゴが現れ、メインメモリーの搭載容量がKB表記で表示された。市販された製品は64KB搭載のものだけだったが、拡張すればその分も加えての表示となる。
MSX2では起動時に消去しなかったSCREEN5のページ1は、起動時のスクロール処理に使用されるため実装の都合上、クリアされるという挙動の変化も存在している。
平仮名など一部の8ドットフォントが改善され、SCREEN0で横2ドットが切れて読み辛くなることが無くなった。
追加された漢字モードでは、シフトJISコードを使用するため、MSX固有のひらがなやグラフィック文字などのMSXフォントは文字化けする。
参入したメーカーと発売した機種
MSX2+規格に参入したのは日本のメーカーのみで、ソニー、三洋電機、松下電器産業の3社だけとなった。ヤマハはVDPとFM音源、東芝はZ80カスタムCPU(MSX-ENGINE2)などの部品を提供するのみになった。
発売された機種は全てキーボード一体型となり、セパレートタイプのマシンは発売されなかった。また、規格の上では必須ではないが大半の機種でFDDを1〜2基搭載していたことから、供給ソフトのメディアの主流は完全にROMから価格の安いFDへと置き換わった。
- 三洋電機
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- WAVY70FD、WAVY70FD2、WAVY35
- BASICコンパイラ(「MSXべーしっ君ぷらす」相当)を内蔵。単漢字変換で、MSX-JEは内蔵しない。
- WAVY35(PHC-35J)は日本国内の一般向けのモデルではなく、FDD非搭載。
- WAVY35(PHC-35JN)は日本能率協会が教材として販売していたモデルで、こちらもFDD非搭載。「パソコン入門」という教材がカセットテープで供給されていた。
- WAVY70FDはフロッピーディスクドライブを1機、70FD2は2機搭載。
- ソニー
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- HB-F1XDJ、HB-F1XV
- ゲーム開発ツールディスクを付属、筐体はMSX2のHB-F1XDシリーズから流用。MSX-JEを内蔵。漢字ROMにはJIS X 9051のビットマップフォントが使用されている。XDJは1年ほど使用しているうちにFM音源の音が小さくなるという回路の不具合があり、メーカーでコンデンサー交換による対応を取っていた。またメモリーは64KBながらハード的にはマッパーRAMとなっており、ページを跨いでのセグメントの移動が可能となっている。メモリマッパー規格は最低128KBで切り替えBIOSがなくてはならないので厳密にはメモリマッパー対応ではない。
- XVは本体のカラーリングを変更してバンドルソフトウェアを充実。F1シンセサイザー(シンセサウルス相当品)、F1ツールディスク(グラフィックエディター、らくらくアニメ、ボイスレコーダー、BASICファイラー)、文書作左衛門(ワープロソフト)。
- シリーズ全体を通して、キーボードの隙間から混入したゴミによりフィルム上のパターンが断線する[1]という問題を抱えており、2019年現在はこれを解決するための同人ハードが作られている[2]。
- 松下電器産業(現パナソニック)
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- FS-A1WX、FS-A1FX、FS-A1WSX
- Wシリーズはワープロ内蔵、FXはFM音源・MSX-JEなし。WSXはS端子を付けた代わりにカセットテープ端子を削除。改造して後付けすることは可能。
- 10.7MHzのオシレータ出力を搭載している。MSX規格のCPUクロックである3.58MHzは、これを3分周して生成する。また、これを2分周した5.38MHzのモードを持ち、内蔵ワープロを高速に動作させるために使用された。BASIC等からも利用が可能で、BASICより「OUT 65,154」と打ち込むなどの方法でI/Oポートに規定の値を出力することで、入力周波数が変化する。ただしMSX2-ENGINEに対する入力周波数が変化するため、PSGの音程、データレコーダの転送速度、ハードウェア制御に対するCPUクロック依存のウェイトなどのタイミングが影響を受けるため非互換となる。
脚注
出典
MSX2
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/12/11 07:05 UTC 版)
機種は明言されていないが、Panasonic A1のイラストが描かれている。中学生には高価な品だったが、誕生日+クリスマス+お年玉のプレゼントとして買ってもらったもの。ROMカセットによる拡張性を体験。通信教育でBASICプログラムの勉強もしたが、あまりものにはならなかった。
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