HIP 41378とは? わかりやすく解説

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HIP 41378

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/10 06:35 UTC 版)

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HIP 41378
星座 かに座
見かけの等級 (mv) 8.93[1]
分類 F型星[1]
位置
元期:J2000.0[1]
赤経 (RA, α)  08h 26m 27.8492347858s[1]
赤緯 (Dec, δ) +10° 04′ 49.334005301″[1]
赤方偏移 0.000168[1]
視線速度 (Rv) 50.42 km/s[1]
固有運動 (μ) 赤経: -48.143 ミリ秒/[1]
赤緯: 0.059 ミリ秒/年[1]
年周視差 (π) 9.3799 ± 0.0590ミリ秒[1]
(誤差0.6%)
距離 348 ± 2 光年[注 1]
(106.6 ± 0.7 パーセク[注 1]
絶対等級 (MV) 3.8[注 2]
軌道要素と性質
惑星の数 6
物理的性質
半径 1.273 ± 0.015 R[2]
質量 1.16 ± 0.04 M[2]
平均密度 0.563 ± 0.006 ρ[2]
(0.794 ± 0.008 g/cm3
表面重力 4.294 ± 0.006 (log g)[2]
自転速度 5.6 ± 0.5 km/s[2]
自転周期 6.4 ± 0.8 [2]
スペクトル分類 F8[1]
表面温度 6,320+60
−30
K[2]
色指数 (B-V) 0.599 ± 0.012[3]
金属量[Fe/H] -0.10 ± 0.07[2]
年齢 31 ± 6 億年[2]
他のカタログでの名称
BD+10 1799[1]
EPIC 211311380[1]
Gaia DR2 600698184764497664[1]
GSC 00800-01325[1]
K2-93[1]
SAO 97816[1]
TYC 800-1325-1[1]
2MASS J08262784+1004493[1]
Template (ノート 解説) ■Project

HIP 41378は、地球から見てかに座の方向にある恒星である。2019年11月の時点で周囲を少なくとも6つの太陽系外惑星が公転していることが知られている[2]

特徴

大きさの比較
太陽 HIP 41378

HIP 41378は質量半径が共に太陽よりやや大きい恒星で、スペクトル分類ではF8型に分類される[1]。表面温度も6,320 Kで、太陽の5,778 K[4]よりもやや高い[2]。ケプラー宇宙望遠鏡の延長ミッション「K2ミッション」の観測対象でもあったため、K2-93とも呼称される[1]ガイア計画によって測定された年周視差の値に基づくと、地球からは約350光年(約110パーセク)離れていることになる。

惑星系

2016年に、太陽系外惑星の探索を目的とするケプラー宇宙望遠鏡の延長ミッション「K2ミッション」によって行われたトランジット法(食検出法)の観測で、HIP 41378の周囲を5つの惑星が公転していることが確認された[5]。この5つの惑星は最も小さいものでスーパー・アースほど、最も大きいものでは土星に匹敵する大きさを持つとされている。しかし、この時にK2ミッションによってHIP 41378が観測された期間は74.8日間で、それよりも公転周期が長い外側の3つの惑星HIP 41378 d、HIP 41378 e、HIP 41378 fは1回のトランジット(恒星面通過)しか観測されておらず、推定された公転周期には内側の2つの惑星よりもかなり大きな誤差が含まれていた[3][5]。その後、2018年の夏に50.8日間に渡って再びK2ミッションによるHIP 41378が位置する領域の観測が行われ、その結果、HIP 41378 dとHIP 41378 fのトランジットを改めて確認することに成功した。この2つの惑星のトランジットは地上から太陽系外惑星の探索を行っているKilodegree Extremely Little Telescope(KELT)、HATネットスーパーWASPによる観測でも検出された[3]

そして2019年に、オート=プロヴァンス天文台によるHIP 41378の視線速度の観測などを含めた様々な観測結果を分析した結果、それまで知られていなかった5つの惑星の軌道長半径軌道離心率、質量などが正確に求められ、さらに、HIP 41378 cとHIP 41378 dの間を6番目の惑星HIP 41378 gが公転していることが確認されたと発表された[2]。このHIP 41378 gは他の5つの惑星とは異なり、ドップラー分光法(視線速度法)で発見されたため、軌道傾斜角と半径は知られていない[2]。外側にある3惑星は公転周期の比が3:4:6に近く、結果として、HIP 41378系全体で1:2:4:18:24:36の平均運動共鳴の状態にある可能性がある。また視線速度による観測からは、HIP 41378 gとHIP 41378 dの間にさらに惑星が存在する可能性も示されている[2]

これらの惑星のうち、最も外側を公転しているHIP 41378 fは、主星からの距離と軌道離心率の低さからハビタブルゾーンの内側付近を公転しているとされており、表面温度は294 K(21 ℃)と推定されている。HIP 41378 fはその大きさから、土星サイズの巨大ガス惑星であると考えられているが、地球外生命が居住可能なほど十分な質量を持った衛星が存在するかどうかを調べるのに最も適した太陽系外惑星の1つとされている[2]。また、HIP 41378 fは土星ほどの大きさを持つが、質量が天王星よりも軽いため、密度が0.09 g/cm3と極めて小さくなっている。これは太陽系の惑星の中で最も密度が小さい土星(0.70 g/cm3)の約8分の1しかない。HIP 41378 fが質量の割にこれほどの大きさを持つ原因として、惑星の周りに厚いの存在している可能性、もしくは大気が大きく膨張している可能性が考えられている[2]

HIP 41378の惑星[2]
名称
(恒星に近い順)
質量 軌道長半径
天文単位
公転周期
()
軌道離心率 軌道傾斜角 半径
b 6.89 ± 0.88 M 0.1283 ± 0.0015 15.57208 ± 0.00002 0.07 ± 0.06 88.75 ± 0.13° 2.595 ± 0.036 R
c 4.4 ± 1.1 M 0.2061 ± 0.0024 31.70603 ± 0.00006 0.04+0.04
−0.03
88.477+0.035
−0.061
°
2.727 ± 0.060 R
g 7.0 ± 1.5 M 0.3227 ± 0.0036 62.06 ± 0.32 0.06+0.06
−0.04
惑星? (未確認)
d < 4.6 M 0.88 ± 0.01 278.3618 ± 0.0005 0.06 ± 0.06 89.80 ± 0.02° 3.54 ± 0.06 R
e 12 ± 5 M 1.06+0.03
−0.02
369 ± 10 0.14 ± 0.09 89.84+0.07
−0.03
°
4.92 ± 0.09 R
f 12 ± 3 M 1.37 ± 0.02 542.07975 ± 0.00014 0.004+0.009
−0.003
89.971+0.01
−0.008
°
9.2 ± 0.1 R

脚注

注釈

  1. ^ a b パーセクは1 ÷ 年周視差(秒)より計算、光年は1÷年周視差(秒)×3.2615638より計算
  2. ^ 視等級 + 5 + 5×log(年周視差(秒))より計算。小数第1位まで表記

出典

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u Results for BD+01 1799 -- Star”. SIMBAD Astronomical Database. CDS. 2019年11月30日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q Santerne, A.; Malavolta, L.; et al. (2019). "An extremely low-density and temperate giant exoplanet". arXiv:1911.07355v1 [astro-ph.EP]。
  3. ^ a b c Becker, Juliette C.; Vanderburg, Andrew; Rodriguez, Joseph E. (2019). “A Discrete Set of Possible Transit Ephemerides for Two Long-period Gas Giants Orbiting HIP 41378”. The Astronomical Journal 157 (1): 13. arXiv:1809.10688. Bibcode2019AJ....157...19B. doi:10.3847/1538-3881/aaf0a2. 
  4. ^ Williams, David R. (2016年12月16日). “Sun Fact Sheet”. NASA. 2017年3月26日閲覧。
  5. ^ a b Vanderburg, Andrew; Becker, Juliette C.; Kristiansen, Martti H.; Bieryla, Allyson; Duev, Dmitry A.; Jensen-Clem, Rebecca; Morton, Timothy D.; Latham, David W. et al. (2016). “Five Planets Transiting a Ninth Magnitude Star”. The Astrophysical Journal 827 (1): L10. arXiv:1606.08441. Bibcode2016ApJ...827L..10V. doi:10.3847/2041-8205/827/1/L10. ISSN 2041-8213. 

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