クライシス
「クライシス」とは・「クライシス」の意味
「クライシス」には「危機」や「難局」という意味があり、破局をもたらす極めて不安定な状態を指し、医療や看護の世界で用いられることが多い。看護や医療においては、患者さんが危機的状況に陥ったことを「クライシス」と呼び、迅速な対応が必要となる。医療ドラマにおいても、「クライシス」はよく耳にする言葉である。心理学においては、「クライシス」は「発達段階におけるクライシス」と「状況的なクライシス」の2種類に分類されている。また、20代後半〜30代が陥ることが多い幸福の低迷期が「クォーターライフ・クライシス」と呼ばれ、40代~50代がこれまでの生き方や将来に対して抱く不安や葛藤が「ミッドライフ・クライシス」と呼ばれている。「クライシス」の英語のスペルは「crisis」である。
「クライシス」の語源・由来
「クライシス」は英語の「crisis」のカタカナ語である。「crisis」はギリシャ語で「決定する」という意味の「krinein」を語源としている。「krinein」+抽象名詞語尾「sis」の「krisis(決定的なもの)」がコアの語源である。「クライシス」の熟語・言い回し
クライシスアクターとは
クライシスアクターは、消防や救急訓練で被害や事件の被害者役を演じるボランティアや役者のことである。特殊メイクなどを施し、本物の被害者さながらに演じるため、臨場感のある訓練が行える。
コロナクライシスとは
コロナクライシスは「コロナ禍」や「コロナ危機」という意味で、コロナによってもたらされた医療や経済、教育などを含む危機のことを指す。医療がひっ迫したり、倒産する企業や店舗が増えたりしたことはコロナクライシスの一例である。
アフタークライシスとは
アフタークライシスは、2010年に公開されたイギリス映画のタイトルである。テロリストによる核爆発で壊滅したロンドンで、シェルターに逃げ込んだ人々に起こるその後の物語を描いた作品である。
マンティスクライシスとは
マンティスクライシスは、直訳すると「カマキリの危機」という意味となるボーカロイド曲である。歌い手はしゅーずで、2017年にリリースされている。交尾の後にメスがオスを食べるという習性を持つカマキリと人間の女性の情欲をかけた歌である。
オイルクライシスとは
オイルクライシスは、1970年代に2度起こった石油ショックのことである。1度目は1973年にOPECが原油価格を4倍に引き上げたことで起こり、2度目は1979年にイラン革命が勃発したことにより起こった。原油価格の高騰により、世界経済に大きな混乱をもたらした。
センチメンタルクライシスとは
センチメンタルクライシスとは2020年にリリースされた曲で、アニメ「かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜」のエンディングテーマである。アニメの世界観に基づいて作られており、片思いの切な気持ちを歌っている。
「クライシス」の使い方・例文
・クライシスアクターは緊張感のある訓練をするために必要な存在である。・コロナクライシスによって、リモートワークやマスクの着用など人々の生活は一変した。
・我が家では16歳の娘が妊娠したことにより、ファミリークライシスが起こった。
・ほとんどの国民が、経済クライシスを政府の責任だと非難している。
・今ならまだ、クライシスの平和的な解決策を見つけることは可能かもしれない。
・住宅価格の下落は、建設業界が直面しているクライシスである。
・医療クライシスが起こると何度も危ぶまれながらも、なんとか持ちこたえている。
・クォーターライフ・クライシスを打開するために、彼女は仕事を辞めて世界一周旅行をすることにした。
・世界的に名の知れた大企業であっても、社会情勢が不安定であるためいつクライシスが起こるかわからない。
・ミッドライフ・クライシスが原因で離婚に至る夫婦も多い。
・温暖化や世界情勢によるフードクライシスが心配だ。
crisis
crisis(クライシス)とは、いわゆる「危機」を意味する英語の名詞。不意に発生し、物事の安定や存続を脅かし、そのまま悪化すれば破局をもたらしかねない、重大な危険な局面のこと。重大局面、難局、急場、緊急事態、いざという時。
crisis の複数形は crises である。発音は末尾の s が /z/ になり「クライシズ」のようになる。
「危険な局面」のうち、突発的に発生し、かつ緊急性の高い(一刻も早い対処が望まれる)事態は、特に emergency(エマージェンシー)という。emergency は「緊急事態」あるいは「非常事態」と訳されることが多い。
crisis(クライシス)の関連表現
crisis は、経済(経済危機)、社会(社会的危機)、心理(人格の危機)等々、さまざまな分野における「危機」を指す表現に用いられる。identity crisis(アイデンティティークライシス)
identity crisis は、アイデンティティの危機。自己喪失。「自分は何者なのか」「本当の自分らしさはどこにあるのか」「自分は社会にとって必要なのか」という疑問を抱えた危険な精神状態のこと。思春期に抱えることが多い。
quarter-life crisis(クォーターライフクライシス)
quarter-life crisis は、青年の危機。人生100年の4分の1ほどを生きたことになる20代半ば~30代初頭くらいの青年が陥りやすい心理的危機のこと。社会に出た自身の姿と理想像との齟齬に悩む時期とされる。
20代も半ばを過ぎれば、青春時代も過ぎ、若者扱いされなくなる。とはいえ、まだ大人扱いされるには戸惑いもある。同年代の成功者に後れを取っているという焦燥感や、自分が思い描いていた理想の将来像とのズレに対する不満、これからの人生に対する不安、などに苛まれやすい。
mid life crisis(ミッドライフクライシス)
mid life crisis は、中年の危機。middle age crisis ともいう。中高年を迎える年代に陥りやすい心理的不安のこと。加齢による心身の限界を悟らざるを得なくなったり、これからの人生が下り坂に向かうという不安を抱えたりして、自己肯定感を失いやすい。過去への後悔、出世した同世代人への嫉妬、子育てが終わった空虚感、夫婦関係の冷え込み等も危機を助長する。
中年の人格の危機は、アルコール依存症や不安障害などの身体的不調を招きやすい。
existential crisis
existential crisis は「実存的危機」と訳される。いわゆる存在意義の喪失、人生の意味の消失、生きている意味を見失うこと。
existential crisis は、identity crisis、quarter-life crisis、mid life crisis 等の心理的危機の総称として用いられることが多い。
「existencial crisis」は誤字(ミススペリング)である。
economic crisis
economic crisis は「経済危機」のこと。資本主義経済において、市況が突如として悪化し、経済に急速かつ深刻な混乱や打撃が加わること、または、そうなりかねない危険な状況のこと。
経済危機のうち、通貨の価値の急落により生じる経済危機を特に「monetary crisis(通貨危機)」といい、株価や債権といった金融商品の価値の急落により生じる経済危機を特に「financial crisis(金融危機)」という。
financial crisis
financial crisis は「金融危機」のこと。金融の分野における状況悪化を端緒とする経済危機のこと。金融機関の経営破綻や株価の暴落などにより金融の要といえる信用が収縮し、金融経済の安定的存続が危ぶまれる事態。
「金融危機」は、金融経済の安定が危ぶまれる(が崩壊には至っていない)状態を指すことが多い。もはや崩壊が始まったとみなされる状況は「金融恐慌(panic)」と呼ばれることが多い。
food crisis(フードクライシス)
food crisis は「食糧危機(食料危機)」のこと。食料が危機的に不足する、深刻な食料不足になる、という状況のこと、および、そうなると懸念される状況のこと。要するに、食物の生産量が消費量に追いつかない状態である。
water crisis(ウォータークライシス)
water crisis は「水危機」または「水の危機」と和訳される語。主に1970年代以降の、水資源の安定供給が危ぶまれる世界的状況を指す意味で用いられる語である。
恐慌(crisis ; panic)
危機
危機(きき)とは、安全、経済、政治、社会、環境等の面で、個人、組織、コミュニティ、もしくは社会全体に対して不安定かつ危険な状況をもたらす、もしくはもたらしかねない突発的な出来事のことである。英語のクライシス(crisis / 複数形: crises)は、ギリシア語の「クリシス」(κρίσις)に由来している[1]。
危機の定義
危機とは、a) 家族、経済、社会等複雑なシステムにおいて、b) 機能が低下し、c) 即時的な決断が必要とされるが、d) 機能低下の原因が判っていない状態と定義される。以上 a) から d) を以下に詳述する。
- a) 複雑なシステムで発生する – 単純なシステムでは危機にはならない。例えば、道徳的価値や経済的、政治的な危機はあり得るが、自動車危機というのはあり得ない。
- b) 機能の低下 - システムの機能は低下するものの停止するわけではなく、機能し続けてはいる。
- c) 即時的な決断が必要 - システムのさらなる崩壊を食い止めるための決断を急ぐ必要がある。
- d) 原因が判らない - 原因が多数あるか未知であるため、状況を好転させるために合理的な、既知の情報に基づいた決断を下すことができない。
危機を定義付ける特徴はいくつかある。シーガー、セルナウ、およびアルマーの説によると、危機は4つの特徴を持った、「組織の高優先度の目標に対して、高レベルの不確定要素および脅威(もしくは脅威と感じられるもの)を生み出す、特定の、想定外の、そして非日常の出来事もしくはその連続」であるとされている[2]。従って、危機を定義付ける最初の3つの特徴としては、ある出来事が、
- 想定外である。
- 不確定要素を生み出す。
- 重要な目標に対して脅威となると見られる。
ということになる。
これに対し、ベネットは「危機とは、古いシステムがもはや維持し得なくなったところでの移行の過程である。」と反論している[3]。従って、危機を定義付ける4つ目の要素は、変化の必要性ということになる。変化が必要でない場合は、その出来事は失敗と呼んだほうがより正確である。
その性質上予知することのできない、火山の噴火や津波等の自然災害を除けば、人間が直面する危機の多くは人間によって造り出されるものである。それ故、危機の特徴の1つである「想定外であること」の根源は、危機的状況の凶兆に気づくことのできなかった人間に帰せられる。人間が危機的状況の凶兆を危機に陥る前に気づけなくしている要因のいくつかは、人間の感情に対して救いや保護をもたらす、拒否等の心理的な反応にある[4]。
危機の凶兆に気づけない別の理由としては、人間は誤った理由によって何かをしていると信じ込むという「ひっかけ」に遭いやすくなるということが挙げられる。換言すれば、人間は正当な理由で誤ったことをしてしまうということである。例えば、人間は気候に実影響を与えない経済活動に携わることで、気候変動の脅威を解決していると信じてしまうこともあり得る。ミトロフおよびシルバーズは、こうした類の過誤に対する2つの理由を仮定し、タイプ3(不注意)およびタイプ4(故意)に分類している[5]。
行動の結果に対する注意の欠如が、結果として危機を引き起こすこともある。この観点から人間は、難局の真の原因を理解しないとやがては下降線をたどり続けかねないということを学ぶこともある。
しかし一方で、危機とは「転機」と言う解釈も存在する。山本(2000)
キャプラン,G(1960-1968)は、その過程の介入の試みに拠っては、結果的に良い結果をもたらすか、逆の結果をもたらすか達成には相違が生じるとしている。
経済危機
経済危機とは急速に訪れる深刻な不況のことであり、恐慌とも呼ばれる。経済危機は金融危機や通貨危機など、細分化されて呼ばれることもある。歴史上には1929年の世界恐慌をはじめ、1971年のドル・ショック、1973年および1979年の石油危機、1992年のポンド危機、1997-98年のアジア通貨危機、2007年に始まった世界金融危機などの例がある。
経済危機は個人に対しても危機的な悪影響を及ぼし得る。経済危機に伴う雇用の激減で失業すれば、収入を得ることができなくなり、衣食住に困るようになったり、健康保険に加入できなくなることによって安価に十分な医療を受けることができなくなったりと、直接的に健康に悪影響を及ぼし得る。また厚生年金に加入できなくなることにより、将来的な収入の減少にもつながる。さらに、社会や他人との接点が減り、一日の起きている時間の大部分を無為に過ごすことによって、自信の喪失やうつ病の原因にもなり得る。
環境危機
環境に関する危機としては、環境災害、自然災害、種の絶滅の危機などが挙げられる。
環境災害
環境災害とは、人間の活動による生態系の変化が広範囲もしくは長期間にわたった結果として起こる災害である。後述の自然災害と混同されやすいが、こちらはあくまでも人間が引き起こす災害である。動物(人間を含む)や植物の死滅、移住を余儀なくされるほど深刻な人間の生活の混乱などがここに含まれる。
自然災害
自然災害とは、火山の噴火、地震、津波、地すべり、台風等、潜在的であった自然界の危険の活動が活発化した結果として、人間の活動に影響を与えることである。これに計画の不備や適切な危機管理の欠如といった人間側の脆弱性が重なると、経済的、構造的、そして人命の損失につながる。損失の大きさは災害の起こる場所の人口規模や復興力によって異なる[6]。このことから、自然災害は自然界の危険と人間側の脆弱性が重なり合ったときに起こると言える[7]。自然界の危険は人間側の脆弱性無しには自然災害にはつながらない。例えば、人間が全く住んでいない場所で強い地震が起きても、それは自然災害にはならない。
危機に瀕する種
危機に瀕する種とは、個体数の減少、もしくは環境や捕食関係の変化による生存への脅威によって、絶滅の危険性が高まっている種のことである。国際自然保護連合(IUCN)は、2016年の調査で、地球上に存在する82,954種のうち23,928種(29%)が、絶滅が危惧される種であるとしている[8]。
また、分類学上の種ではないが、似たような意味で「危機」という語を用いる例として、危機に瀕する言語(危機言語)というものがある。これは、話者数の著しい減少によって、消滅が危惧される言語を指している。国際連合教育科学文化機関(UNESCO)によると、2012年時点で世界には約6,000の言語が存在しているが、そのうちの約半数は消滅の危険にさらされている[9]。
国際危機
国際関係における危機とは、国家間の緊張や不安が高まり、脅威が感じられ、暴力的な展開が予想され、何らかのアクションを取ることによって広範囲に影響が及び得ると信じられている状態であると、大雑把に定義することができる[10]。
マイケル・ブレチャーは、国際危機行動プロジェクト(International Crisis Behavior, ICB)のケーススタディーに基づいて、国家が絡んだ場合の危機を定義する別の方法を提案し、当事国の最高レベルの意思決定者が下記に示すような懸念を抱えている状態であるとした[11]。
- 同時、もしくは直後に、戦闘状態に巻き込まれる確率が高いこと、および
- 外的な価値の脅威に対応する時間が限られていることを思い知らされることによる、
- 基本的な価値に対する脅威
歴史における危機一覧
- 2000年以降のヨーロッパの危機状況と不安
現在進行形の危機
- 新冷戦による第三次世界大戦の勃発
- クリミア危機
- ウクライナ危機
- イエメン危機
- ロシア・ウクライナ危機
- 2022年ロシア財政危機
- ペルシャ湾危機
- 2022年-2023年北コソボ危機
- 2021年北コソボ危機
- 2011年-2013年北コソボ危機
- 世界的エネルギー危機
解決した危機
- キューバ危機
- スエズ危機
- 2017年北朝鮮危機
- アジア通貨危機
- ポンド危機
- ロシア財政危機
- 世界金融危機
- サブプライム住宅ローン危機
- 韓国通貨危機
- 2010年欧州ソブリン危機
- 2010年ギリシャ経済危機
- エジプト危機
- 1946年イラン危機
- 1958年レバノン危機
- アデン危機
- プレシェヴォ渓谷危機
- 北コソボ危機
- ペレヒル島危機
- 湾岸危機
- 冷戦時における第三次世界大戦
- テキサス州電力危機
- イラク戦争の人道危機
- 2021年-2022年アルメニア・アゼルバイジャンの衝突危機
- 2019年-2022年ペルシャ湾危機
関連項目
註
- ^ Liddell, Henry George and Robert Scott. κρίσις. A Greek-English Lexicon. Perseus.
- ^ Seeger, M. W., T. L. Sellnow, and R. R. Ulmer. "Communication, organization, and crisis". Communication Yearbook. Vol.21. pp.231-275. 1998.
- ^ Venette, S. J. "Risk communication in a High Reliability Organization: APHIS PPQ's inclusion of risk in decision making". Ann Arbor, MI: UMI Proquest Information and Learning. 2003.
- ^ Mitroff, I. "Why some companies emerge stronger and better from a crisis". p.36. 2005.
- ^ Mitroff & Silvers, "Dirty rotten strategies". 2009.
- ^ Bankoff G., G. Frerks, and D. Hilhorst. (eds.) "Mapping Vulnerability: Disasters, Development and People". 2003. ISBN 1-85383-964-7.
- ^ Wisner B., P. Blaikie, T. Cannon, and I. Davis. "At Risk – Natural hazards, people's vulnerability and disasters". Wiltshire: Routledge. 2004. ISBN 0-415-25216-4.
- ^ Numbers of threatened species by major groups of organisms (1996–2016). IUCN. 2016.
なお、IUCNは絶滅寸前(CR)、絶滅危惧種(EN)、および危急種(VU)の3カテゴリーに入る種を「絶滅が危惧される種」としている。 - ^ Endangered languages. UNESCO. Accessed August 10, 2012.
- ^ Lebow, RN. "Between Peace and War: The Nature of International Crisis". pp.7-10. The Rancho Bernardo Hopkins University Press, 1981. ISBN 0-8018-2311-0.
- ^ Shlaim, Avi. "The United States and the Berlin Blockade, 1948–1949: a study in crisis decision-making". p.5. Berkeley, California: University of California Press. 1983.
推奨文献
- Borodzicz, E.P. "Risk, Crisis and Security Management". John Wileys, Chichester. 2005. ISBN 0-470-86704-3
- Fotopoulos, Takis. "The Multidimensional Crisis and Inclusive Democracy". Special Issue, "The International Journal of Inclusive Democracy", 2005.
固有名詞の分類
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