高野ムツオとは? わかりやすく解説

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高野ムツオ

高野ムツオの俳句

かまきりの卵嚢よりの寒暮光
げんのしようこから夕闇の子守唄
のたりのたりと海は死にゆく蛍草
ふわふわの黄金であり冬の蜂
みどりの夜子は一本の眠れる矢
アトピー性皮膚炎のわが月見草
ジャズが湧く蔦ことごとく枯れ尽くし
チエルノブイリ夜の菫のその先に
人間に戻りてプールより上る
人頭に鳥身みどりの夜を歩き
冬田の闇ざっと一億瓲ぐらい
勾玉の中に醒めたる秋の雨
四人家族雪夜は蘭の蕾ほど
土曜日は我もさざなみ蒸鰈
地下鉄晩夏翅毟られし者ら乗せ
坂口安吾とは霜月の蝶番
塩竈の初夏まずは蛸の足
天牛やまもなく霧の時代来る
奥歯あり喉あり冬の陸奥の闇
子の喉の火柱見える秋の暮
宵闇の末の松山より少年
寒気団整列したり敏雄の忌
愛咬のまま陸前の月夜茸
放蕩のはじめに金糸南瓜あり
族集えり一人は赤き眼の大蛾
梅一輪一輪ずつの放射能
梅雨の夜の書物に海が一つずつ
永劫の酸性雨なり兎の眼
河凍るうすもも色の唇を閉じ
波音に鉄道草の月日あり
海の音聞くために祖母禾となる
瓶中の蝮の夢や天の川
畦を来る一本足や夏雲雀
眠る子は大きなしずく葛の谷
祖霊集めるため寒鯛の目玉喰う
秋風の見える望遠鏡が欲し
童子の眼碧むやませが滲み通る
羽の音籠る春暮の郵便局
艮に棲めば眼窩に光り苔
葛の葉を繰り出す夜の機械あり
蓮根に空飛ぶ話もちかける
蟹の泡積乱雲に続くべし
谷底の螺鈿となりて残る虫
貝殻一つ一つ濃霧のオルゴール
車にも仰臥という死春の月
近づけば暗黒であり大紅葉
野に拾う昔雲雀でありし石
長距離走者おそらく冬のかすみ草
闇生まる花桐二本歩み寄り
阿弖流為の鼓膜を張りし春田なり
 

高野ムツオ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/03 04:59 UTC 版)

高野 ムツオ(たかの ムツオ、1947年7月14日 - )は、宮城県出身の俳人。本名は高野睦夫金子兜太の「海程」所属を経て佐藤鬼房に師事、鬼房の跡を継ぎ現「小熊座」主宰。2024年、現代俳句協会会長に就任[1]多賀城市在住[2]

経歴

岩ケ崎町(現栗原市)に生まれる。栗駒町立岩ヶ崎中学校、宮城県古川工業高等学校を経て、國學院大學文学部文学科を卒業。小学生のころより父に連れられて句会や吟行会に参加。10歳のころ、初の投句が句会で来町していた阿部みどり女の選に入る。中学時代には『河北新報』のみどり女選の俳句欄に投句、高校時代よりみどり女主宰の俳誌「駒草」に投句した。神奈川県地方公務員として勤務する傍ら、国学院の夜間部では俳句研究会に入会し機関誌を発行。また金子兜太の「海程」に入会し同神奈川支部にも出入りする。

大学卒業後は仙台で中学校の国語科教諭として勤務。1972年、海程新人賞準賞を受賞。1985年、佐藤鬼房の「小熊座」が創刊され、翌年より校正に携わる。1987年、金子兜太の勧めにより第一句集『陽炎の家』を出版。1988年、第24回海程賞を受賞。1993年、第二句集『烏柱』出版。1994年、宮城県芸術選奨、第44回現代俳句協会賞を受賞。2002年の佐藤鬼房の逝去ののち「小熊座」を主宰。

2007年に咽頭癌手術を経験、2011年に東日本大震災に直面し、以降積極的に震災詠を作る。2013年、「四肢へ地震ただ轟轟と轟轟と」「車にも仰臥という死春の月」「みちのくの今年の桜すべて供花」など、震災詠を多数含む第五句集『萬の翅』を上梓。同句集により第65回読売文学賞(詩歌俳句賞)、第6回小野市詩歌文学賞、第48回蛇笏賞受賞。蛇笏賞は戦後生まれ初の受賞者。また深見けん二『菫濃く』と同時受賞であり、2作受賞は31年ぶりとなる[3]

その他の句集に『雲雀の血』(1996年)、『蟲の王』(2003年)がある。俳句研究賞選考委員、角川俳句賞選考委員、河北俳壇選者、日本現代詩歌文学館館長などを務める。

2023年度「NHK俳句」第4週選者[4]

著書

  • 陽炎の家(1987年)
  • 烏柱(1993年)
  • 雲雀の血(ふらんす堂〈21世紀俳人シリーズ〉、1996年)
  • 蟲の王(角川書店〈小熊座叢書 69>、2003年)
  • 高野ムツオ集(邑書林〈セレクション俳人 10〉、2007年)
  • NHK俳句 大人のための俳句鑑賞読本 時代を生きた名句(NHK出版、2012年)
  • 萬の翅(角川学芸出版、2013年)
  • 片翅(邑書林、2016年)
  • 語り継ぐいのちの俳句 - 3・11以後のまなざし(朔出版、2018年)
  • 鑑賞 季語の時空(角川文化振興財団、2020年)
  • あの時―俳句が生まれる瞬間(写真・佐々木隆二、朔出版、2021年)

脚注

  1. ^ 現代俳句協会 役員
  2. ^ 俳句が多賀城の文化をつくる 「壺の碑」全国俳句大会 俳句を募集中”. 多賀城市市民活動サポートセンター“たがさぽPress”. 2021年8月30日閲覧。
  3. ^ 俳句・蛇笏賞の2人、高野ムツオと深見けん二 31年ぶりの2作受賞 朝日新聞デジタル 2014年6月3日
  4. ^ NHK俳句”. NHK. 2023年4月1日閲覧。

参考文献

  • 坂口昌弘著『平成俳句の好敵手』文學の森
  • 高野ムツオ 『高野ムツオ集』 邑書林、2007年。(小熊座HPに略歴の転載あり[1]

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