製品としての歴史
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/08/11 03:41 UTC 版)
「Intel i960」の記事における「製品としての歴史」の解説
最初の960プロセッサ・i960MCは1985年10月にテープアウト(チップ製造のためのマスクパターンが完成)して工場に送られ、最初の実動するチップが出来たのは1985年末から1986年初にかけてであった。BiiNは市場の変化に伴って消滅し、960MXだけが使われずに残された。MyersはBiiNシステム向けのアーキテクチャからサブセットを抜き出した。Myersはインテル経営陣を説得し、i960を汎用プロセッサ市場に出そうとした。当時の市場は80286が主力で、同時期に80386も市場に出ようとしていた。また、UNIXシステムなどのRISC市場もターゲットとし、NeXTで使ってもらうことも打診した。インテル内外のライバルとしてはi860もあった。 Myersはインテル経営陣を十分に説得できず、i960を汎用あるいはUNIX市場に売り出すことはできなかったが、ハイエンド32ビット組み込みシステム市場に活路を見出した。保護付きメモリ機能はBiiN特有とみなされ、製品の説明書では触れられなかった。このため多くの人がi960MCが無駄に大きくて使わないピンが多いことをいぶかしんだ。メモリ管理を省いたものはi960KAと名づけられ、FPUを省いたものはi960KBと名づけられた。ただし、これらのバージョンはラベルが違うだけで中身は同じチップだった。 完全なi960MXは軍用以外には販売されなかったが、i960MCはハイエンド組み込み用途で使われ、i960KAはレーザープリンタ市場や初期のグラフィック端末などの組み込み用途で低価格32ビットプロセッサとして成功した。最初の純粋なRISC実装はi960CAで、スーパースケーラ方式であり、珍しいアドレスを持ったオンチップキャッシュを持っていた。i960CAは一般的に世界初のシングルチップのスーパースケーラRISCと考えられている。Cの付くシリーズはALUをひとつしか持っていないが、算術演算命令とメモリ参照命令と分岐命令を並行して実行できた。i960CFはFPUを内蔵したが、MMUは削除したままだった。 インテルはi960をI2O標準の入出力機器コントローラとして売り出して梃入れしようとしたが、あまり成功せず、結局開発を終了することになった。1990年代中盤、価格性能比で後発のチップに抜かれるようになった。また、インテルは低電力版を出そうともしなかった。 1990年、i960の設計チームはi386の後継プロセッサの第二設計チームに移行し、Pentium Proの設計に携わることになる。i960のプロジェクトはより小さなチームに引き継がれ、終焉を迎えることになる。
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