翼竜とは? わかりやすく解説

よく‐りゅう【翼竜】

読み方:よくりゅう

翼竜目の爬虫(はちゅう)類の総称中生代ジュラ紀出現し白亜紀末に絶滅飛行のため、長く伸びた前肢第4指支持され皮膜の翼をもつ。尾が長く歯をもつ嘴口(しこう)竜と、歯がなく尾が退化した翼手竜とに分類。プテロサウルス。


翼竜

読み方:ヨクリュウ(yokuryuu)

中生代の空に進出した爬虫類

学名 Pterosauria


翼竜

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/11/16 07:03 UTC 版)

翼竜類
Pterosauria
生息年代: 三畳紀後期–白亜紀後期, 220–65 Ma
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 爬虫綱 Reptilia
亜綱 : 双弓亜綱 Diapsida
階級なし : 主竜様類 Archosauromorpha
階級なし : 主竜類 Archosauria
階級なし : 鳥頸類 Ornithodira
階級なし : 翼竜様類 Pterosauromorpha
: 翼竜目 Pterosauria
学名
Pterosauria
Kaup1834
和名
翼竜類(よくりゅうるい)
下位分類群

[1][2]

翼竜(よくりゅう)あるいは翼竜類(よくりゅうるい、学名: Pterosauria)は、翼竜様類に属する爬虫類の一群である。

概要

初めて空を飛んだ脊椎動物である。現代の鳥類ほどは上手く空を飛んだり、地上を歩いたりすることはできなかった。恐竜と同様に三畳紀に現れ、白亜紀末に絶滅した。

分類

上位分類

爬虫類に分類される。恐竜に近縁な動物だが、恐竜とは別のグループである。

2020年、内耳の研究に基づき、ラゲルペトン科が翼竜の祖先筋だったとする仮説が提唱された[3]

翼竜様類 Pterosauromorphaは、恐竜より翼竜に近縁な全ての鳥頸類として定義されている[4]

下位分類

旧来は嘴口竜亜目翼指竜亜目の2群に分けられていた。現在では、嘴口竜亜目は側系統であることが明らかになっている。分岐学の使用が増えるにつれて、旧来の分類はほとんどの科学者の間で支持されなくなった[5]

代表的な種としてはランフォリンクスプテラノドンケツァルコアトルスなどが知られている。

発見史

1784年、イタリア人博物学者コジモ・アレッサンドロ・コリーニによって最初に報告された。当初はその分類の帰属や生態にさまざまな説が飛び交い、哺乳類や水生動物であると考えられていたこともある。初めて翼竜が空を飛ぶ爬虫類だとしたのは、19世紀フランスの博物学者ジョルジュ・キュヴィエである。これまでに60以上の属が発見されている。

特徴

大きさは小鳥ぐらいの大きさから翼開長12メートルを超えるものまでさまざまである。どれも大きな頭部と翼、それに対して小さな胴体をもつ。長い尾を持つものも、まったく尾を持たないものもある。

は膜構造であったと考えられている。つまり、長く伸びた前足の指によって薄い膜を広げているという、コウモリの翼に似た構造である。ただし、コウモリであれば親指以外のすべての指が膜を支えているのに対し、翼竜の翼は第4指(第5指は退化)と脚の間だけに膜が張っている。翼から独立している指の数が多かったのでコウモリよりずっと自由に物をつかめたはずだが、指1本だけで膜を支えた翼では飛行の自由さなどの点でコウモリには及ばないものであったと思われる。しかしその一方、飛膜には神経や筋肉が張り巡らされていたと思われる痕跡もあり、膜の形状を変化させることにより高度な飛行制御を行えた可能性も指摘されている。また、歩行や地上活動に関しては後述するように鳥類には大きく劣っていたが、足跡の研究からは翼竜が蹠行性の四足歩行をしており、地上でははい回ることしかできないコウモリより地上適応性が高かったことが示唆されている。

背心骨を有すること、骨格が中空で軽量な含気骨から成るのは、鳥類と同じである。含気骨を有することから、やはり鳥類と同じく気嚢も備えていた可能性が高い。(恐竜も気嚢を有しており、恐竜と翼竜の共通祖先の段階で既に気嚢を獲得していた可能性が高い。)体重は非常に軽く、翼開長10mを超えるケツァルコアトルスでも70kgほどだったと見られる。

また、翼竜の化石からも恐竜・鳥類に似た羽毛が発見されており[6]、恐竜類との共通祖先(鳥頸類)の段階から羽毛を有していたと考えられる。

また、空では逆光で見えにくいため色は今の海鳥と似ていて派手な色は少なく、背中は紫外線を防ぐため黒で、腹側は色素の節約で白だったという説もある[7]

とさかがある種も多く、その用途については雌雄のコミュニケーションに使われたという説や、同種と別種を見分けるためという説などがある[8]

クンペンゴプテルスという翼竜の胃から見つかったペリット化石英語版の発見から、鳥類などに見られる消化できなかったものをペリットと呼ばれる塊として吐き出す習性を持っていたことが示唆されている[9][10]

飛行などについて

「十分はばたけるだけの筋肉は持たなかったのではないか」、「翼が膜構造であるために嵐などの強風の中では翼が破れて飛行出来なかったのではないか」という説もある。しかし、その後の研究でまったく羽ばたかなかったという説はほぼ否定され、現生の鳥類から見ても大型種は滑空が主だが多少なりとも羽ばたいたことは間違いないと考えられている[11]。また、翼も単なる皮膜ではなく、強靱な繊維の入ったある程度厚みの有るものだったと判明している。

上記の体重も含めて、骨格構造は飛行のために特殊化しており、陸上生活への適応は低く、鳥類のような活発な歩行などはほとんどできなかったとされている。歩行姿勢は、前肢も使っての四足歩行であった可能性が高いことが近年の研究で判明しつつある(嘴口竜亜目#生態の項も参照)。 飛行制御を行うだけの高度な知能や、それだけの脳を使うために内温性(恒温動物)であったことや体温を維持する羽毛を持っていた可能性などが指摘されている。

三畳紀からジュラ紀にかけてはランフォリンクスなど、小型で尾の長いものが多かったが、ジュラ紀末に多くが絶滅し、衰退(最後の化石記録は以前はジュラ紀末期までだったが、白亜紀前期のものも僅かだが発見されるようになった)。白亜紀後期にはプテラノドンやケツァルコアトルスなど大型で尾の短い翼指竜亜目に属するものばかりになった(翼指竜亜目は小型で尾の長いものからジュラ紀後期に進化し、白亜紀前期にかけては多様性の頂点を迎えて小型の種も多かったが、後期にはその多様性を減少させていた)。この頃には鳥類が飛行を始めていたようなので、小型種は鳥類との競争に敗れ、異なるニッチにある大型種が残ったとも言われている。

おもな属

ゲオステルンベルギア
ランフォリンクス Rhamphorhynchus
ジュラ紀に出現した。長い尾の先が菱形になっていたが、これは飛行時にの役割をしたのではないかとする説がある。翼開長は最大175センチメートル。
プテロダクティルス Pterodactylus
ジュラ紀に出現した。翼開長は50 - 75センチメートルほど。
プテラノドン Pteranodon
白亜紀北アメリカに出現した。翼開長は7~9メートルにも及ぶ大型の翼竜で、大きなくちばしをもち、頭部の後ろにも大きな突起がある。
ケツァルコアトルス Quetzalcoatlus
白亜紀の北アメリカに出現した。翼開長は10メートルを超え、目下空を飛んだ最大の動物とされている。属名はアステカ神話のケツァルコアトルに由来する。

脚注

  1. ^ Andres, B.; Clark, J.; Xu, X. (2014). “The Earliest Pterodactyloid and the Origin of the Group”. Current Biology 24 (9): 1011–16. doi:10.1016/j.cub.2014.03.030. PMID 24768054. 
  2. ^ Baron, Matthew G. (2020). “Testing pterosaur ingroup relationships through broader sampling of avemetatarsalian taxa and characters and a range of phylogenetic analysis techniques.”. PeerJ 8: e9604. doi:10.7717/peerj.9604. PMC 7512134. PMID 33005485. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7512134/. 
  3. ^ 『翼竜につながる特徴 三畳紀の二足歩行爬虫類―国際チーム』(2020:JIJI.COM)
  4. ^ Padian, K. (1997). "Pterosauromorpha", pp. 617–18 in Currie, P.J. and Padian, K. The Encyclopedia of Dinosaurs. Academic Press. ISBN 0122268105.
  5. ^ Lü J.; Unwin D.M.; Xu L.; Zhang X. (2008). “A new azhdarchoid pterosaur from the Lower Cretaceous of China and its implications for pterosaur phylogeny and evolution”. Naturwissenschaften 95 (9): 891–97. Bibcode2008NW.....95..891L. doi:10.1007/s00114-008-0397-5. PMID 18509616. 
  6. ^ Cincotta, A., Nicolaï, M., Campos, H.B.N. et al. Pterosaur melanosomes support signalling functions for early feathers. Nature (2022). https://doi.org/10.1038/s41586-022-04622-3
  7. ^ 川上和人 2018, pp. 236–238.
  8. ^ 川上和人 2018, pp. 232–234.
  9. ^ 翼竜の「ペリット」の化石を初めて発見!翼竜の食性知る手掛かりに--人民網日本語版--人民日報”. j.people.com.cn. 2024年9月30日閲覧。
  10. ^ Magazine, Smithsonian. “Like Owls, Some Prehistoric Flying Reptiles May Have Regurgitated Pellets” (英語). Smithsonian Magazine. 2024年9月30日閲覧。
  11. ^ 天宮陽史 2013, p. 111.

参考文献

  • 天宮陽史、スペース探査室 編 編『宇宙137億年の謎が2時間でわかる本 宇宙はこうして宇宙になった!』河出書房新社〈KAWADE夢文庫〉、2013年。ISBN 978-4309498706 
  • 川上和人『鳥類学者 無謀にも恐竜を語る』新潮社〈新潮文庫〉、2018年7月1日(原著2013年3月16日)。 

関連項目

外部リンク


翼竜

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/05 14:06 UTC 版)

白亜紀と古第三紀の間の大量絶滅」の記事における「翼竜」の解説

翼竜のうち、ニクトサウルス科とアズダルコ科マーストリヒト期確実に生息していたが、どちらもK-Pg境界絶滅したとされている。マーストリヒト期には他にも、オルニトケイルス類、プテラノドン科タラソドロメウス類、タペヤラ類、さらには断片的な化石しか見つからないため分類こそできないものの、歯をもつことが分かっている基部系統の翼竜なども生息していた可能性がある。この期間には、現代鳥類につながる系統では多様化起きていた。伝統的な説では、現代鳥類は、近縁系統群鳥翼類)や翼竜と直接競争関係にあって置き換わったか、すでに空白となっていたニッチ埋めただけであると考えられてきた。しかし、翼竜と鳥類多様性の間には相関がないことが分かり競争仮説支持されていないまた、小型の翼竜は白亜紀後期まで存在しており、K-Pg境界直前には、鳥類占めていたニッチ一部を翼竜が取り戻していた。

※この「翼竜」の解説は、「白亜紀と古第三紀の間の大量絶滅」の解説の一部です。
「翼竜」を含む「白亜紀と古第三紀の間の大量絶滅」の記事については、「白亜紀と古第三紀の間の大量絶滅」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「翼竜」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ

翼竜

出典:『Wiktionary』 (2021/08/04 13:24 UTC 版)

名詞

  (よくりゅう)

  1. 翼竜目に属す爬虫類総称学名:Pterosauria

翻訳


「翼竜」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「翼竜」の関連用語

翼竜のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



翼竜のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
デジタル大辞泉デジタル大辞泉
(C)Shogakukan Inc.
株式会社 小学館
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの翼竜 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの白亜紀と古第三紀の間の大量絶滅 (改訂履歴)、星刻の竜騎士 (改訂履歴)、秘密情報部トーチウッド (改訂履歴)、怪奇ゾーン グラビティフォールズ (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。
Text is available under Creative Commons Attribution-ShareAlike (CC-BY-SA) and/or GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblioに掲載されている「Wiktionary日本語版(日本語カテゴリ)」の記事は、Wiktionaryの翼竜 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、Creative Commons Attribution-ShareAlike (CC-BY-SA)もしくはGNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS