木材流送とは? わかりやすく解説

木材流送

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/18 19:04 UTC 版)

カナダのバンクーバーへの輸送(2006年8月)。

木材流送(もくざいりゅうそう)は、河川の水流を利用して木材を搬出すること。林道を含めた道路の建設や自動車が出現し、性能が向上するまでは、大型で重量のある木材を最も早くかつ大量に遠隔地へ運搬する一般的な手段であり、広く用いられていた。

管流

管流(くだながし)は木材を一本ずつ流下させる方法で、もっとも原始的である。欠点は、河岸や河床などに衝突して損傷し、質や量の低下が少なからず生じること、また時代が下るにつれてが架かるようになると、それらに与える被害も無視できないものとなった。流送を行う時期は、積雪地域では春先の流量が豊富な時期に、それ以外の地域は秋から冬にかけて行われた。川の水深は、0.5m-1.0m程度があれば十分(むしろ網場で木材を回収しやすい)とされたが[1]、水量が少ないが地形的な条件の良い場所では、鉄砲堰が組まれて一度に流送する手段も取られた[2]。薪炭材とする広葉樹は、比重が重いため二ツ割、四ツ割にしてから流すことも行われた[3]

筏流し

筏流し(1912年)

筏流し(いかだながし)は、多数の木材を筏に編んでから流下させる方法である。運材の費用は長距離輸送になるほど陸運と比べて安いものとなった。筏の編み方は地方により異なったが、数本から数十本の木材を並べて結束して床(とこ)をつくり、数枚の床を連結して筏とした。乗下げに当たっては、通常は2人(大型のものは4人)が筏に乗り、棹とあおり(オール)で操作を行い下流へ向かった。筏流しに適した大河川では電源開発が進み、天竜川では大型のダム建設が進んだ1956年前後には陸送に転換、米代川でも1965年前後には姿を消している[4]

筏乗りについては「筏師」の項を参照のこと。

日本国内では一時的に消滅した筏下りだが、各地域において歴史的な再評価が行われるようになった。和歌山県北山村では1979年から観光振興も兼ねた筏流しが行われるなど、各地で運送業ではなく伝統の視点で復活が試みられている[5]

2022年、ヨーロッパオーストリアチェコドイツラトビアポーランドスペインの6カ国の筏流しはUNESCO無形文化遺産に登録される[6]

編筏

紀伊半島北山川の例では、丸太の両端に「メガ穴」をあけて捻木(ねじき)を通し、必要な本数を集めて緊縛する手法が採られていた。これらは穴を開ける手間や穴を開ける分、長く採材しなければならないデメリットがあったため、大正年間になると丸太の両端に鉄釻(てつかん)と呼ばれる金具を打ち込んで緊縛する手法に変わった。編筏は幅4尺、長さ2間で緊縛したものを1床とし、8床連結したものを並筏と呼んだ。この単位は地域により異なり、隣接する吉野地域では倍近くの長さでも並筏と呼んでいた[7]

角乗

角材になったものを人が乗って水上で動かすことを角乗という[8][9][10]

筏乗りの出身地

富山県岐阜県は多くの筏乗りを輩出した。大正年間の地方からの出稼ぎを語る上で、県を代表する職種の一つとなっている[11]

脚注

  1. ^ 斎藤栄吉「くだながし」『新版 林業百科事典』第2版第5刷 p170 日本林業技術協会 1984年(昭和59年)発行
  2. ^ 中津川の鉄砲堰製作技術”. 文化遺産オンライン. 2020年5月14日閲覧。
  3. ^ 岡田利夫 『戦中戦後20年 北海道木材・林業の変遷』p16 北海道林材新聞刊 昭和63年6月10日刊 全国書誌番号:90001781
  4. ^ 斎藤栄吉「いかだ」『新版 林業百科事典』第2版第5刷 p25
  5. ^ わかやま歴史物語100”. 和歌山県. 2020年5月14日閲覧。
  6. ^ UNESCO - Timber rafting” (英語). ich.unesco.org. 2022年12月3日閲覧。
  7. ^ 島田錦蔵『流筏林業盛衰史 : 吉野北山林業の技術と経済』p28,30 1974年10月15日 林業経済研究所 全国書誌番号:70000450
  8. ^ 角乗』 - コトバンク
  9. ^ 江東区. “木場の角乗(きばのかくのり)”. 江東区. 2022年10月28日閲覧。
  10. ^ 伝承の技「木場の角乗」3年ぶり復活!”. テレ朝news. 2022年10月28日閲覧。
  11. ^ 「失業者救済対策に地方からの出稼ぎを制限」『時事新報』1925年10月31日(大正ニュース事典編纂委員会『大正ニュース事典第7巻 大正14年-大正15年』本編pp..244-246 毎日コミュニケーションズ 1994年)

関連項目


木材流送

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/30 15:44 UTC 版)

米代川」の記事における「木材流送」の解説

道路整備途上自動車発達していない時代には、上流伐採した木材秋田スギ)を短期間にかつ大量に輸送する手段は木材流送しかなかった。米代川水量が豊富であることなどから、全国的に見てもいかだ流し適した川であり、1965年前後姿を消すまで盛んに行われていた。

※この「木材流送」の解説は、「米代川」の解説の一部です。
「木材流送」を含む「米代川」の記事については、「米代川」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「木材流送」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「木材流送」の関連用語

木材流送のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



木材流送のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの木材流送 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの米代川 (改訂履歴)、白老川 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS