最近提案・実用化されている製鉄法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/10 03:41 UTC 版)
「鉄」の記事における「最近提案・実用化されている製鉄法」の解説
溶融還元製鉄法 溶融還元炉では粉状の一般炭を酸素吹きで燃焼させて高温の一酸化炭素ガスを発生させ、予備還元した粉鉄鉱石を一気に還元し溶かして溶けた銑鉄を作る。溶融還元炉を出た一酸化炭素ガスは流動床、回転炉、シャフト炉で鉄鉱石を予備還元する。予備還元炉を出た一酸化炭素ガスは石炭乾燥空気の加熱などを経て、発電やスラブの再加熱、化学原料などに使用される。 利点 コークス炉、焼結炉が不要で、反応速度が速く比較的小さな溶融還元炉で大きな生産能力を持つために製鉄所新設の設備投資が高炉法より安くつく。 一般炭100 %使用可能なため、資源メジャーの原料炭値上げで大きな損害を出さなくて済む。製鉄だけを目的とするなら、半無煙炭などの炭素含有量の高い石炭を使えば投入原単位を節約できるが、副生ガスを化学工業原料として販売できる立地なら、より安価な高揮発分石炭でガス産出を増やすこともできる。 予備還元炉の一部に流動床か回転炉を使えば、安価な粉鉱石も使える。 酸素製鉄の場合、発生する還元ガスである一酸化炭素に窒素が混入しないため、燃料としてもカロリーが高いばかりでなく、C1化学の出発原料である合成ガスとして活用できる。日本の製鉄石炭消費は年間1億トンに及び、その排ガスを活用してフィッシャー・トロプシュ法で軽油を生産したり、メタノールを生産した場合数千万トンの自動車燃料を自給できる可能性があると言われている。 鉄ガス併産・化学とのコプロダクション。 課題 日米欧とも上流設備は過剰気味である。日米欧とも鉄鋼需要は大きな成長はない。需要の増大している中国、インドでは国産鉄鋼の価格が安く、冷延鋼板より上流の製品では日米欧製品は価格が高すぎて売れないため、日本鉄鋼メーカーの設備投資は亜鉛、錫メッキ鋼板設備など下流高級用途に集中している。中国では熱効率が悪く二酸化炭素排出が多い中小高炉が乱立する様相を示しており、地球環境の視点からは、製鉄企業の適正な合併指導と新製鉄法の技術供与が望まれるが、それは中国・インド産鋼鉄の価格競争力を高め、日本産鉄鋼の価格競争力が地盤沈下するブーメラン効果の原因ともなりうる。 鉄鋼会社が溶融還元法に転換すると、現在コークスを鉄鋼企業に納品している企業はコークス炉の経営が立ち行かなくなる。そのため、現在稼動中のコークス炉が40年の寿命を迎える2015年まで溶融還元製鉄の導入は困難と見られていたが、昨今の原料炭価格の急激な上昇、韓国浦項総合製鉄の溶融還元製鉄炉操業開始など、切り替えの前倒しが必要になるかもしれない事象が起きている。 技術的には酸化鉄による炉壁の溶損の解決が課題のひとつのようである。 酸素製鉄法は膨大な酸素を消費する。東京湾・伊勢湾・大阪湾のような液化天然ガスの大消費地であれば液化天然ガスの冷熱利用で低コストに酸素を量産できる可能性があるが、そうでない場合、空気の分留によって酸素を製造するのに多大な電力を消費する。 炭材内装塊の高速自己還元技術 粉炭と粉鉱石を加熱成型した塊を高炉に装填した場合、コークスと塊鉱石を交互装填した場合の5倍の速さで還元反応が進む。また同様の混合ペレットを溶融還元炉に使用した場合、炉壁溶損原因となるFeOの溶出が3 %で済む。回転炉によるITmk3法も後述のフロートスメルター法も同技術を使用している。 フロートスメルター法 粉炭に窪みを作り、粉炭と粉鉱石と石灰を混合したものを窪みに充填し、周囲の石炭を燃焼して加熱する。 50万トン/年規模の小型プラントに適する。炭素の酸化発熱は炭素>一酸化炭素より一酸化炭素>二酸化炭素の発熱量が大であり、石炭をCO2まで酸化することで石炭の使用原単位が減り、CO2の半減効果が得られる。ただし、発生するガスは二酸化炭素であるため化学合成には使えない。 電解精製法 原料を溶解し、電気分解により純鉄を得る方法で、乾式と湿式に分かれる。合金の素材や薬品の原料等、鋼鉄や錬鉄、鋳鉄では代用できない高純度の鉄を得るために行われる。詳細は「高純度鉄」および「電解鉄」を参照
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