描かれている男性の特定
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/18 05:18 UTC 版)
「ティモテオスの肖像」の記事における「描かれている男性の特定」の解説
イーストレイクが一行目の銘を「Timotheos」と転写したのは正しいと考えられており、この銘が固有名詞であることもまず間違いない。しかしながら16世紀の宗教改革以前には、アルプス以北の北方ヨーロッパにおいて「ティモテオス(ティモシー)」という名前はほとんど見られない。ゲルマン風の名前でもないため、「ティモテオス」はルネサンスが理想とした古代ギリシアの人名に仮託されているのではないかとされてきた。このため美術史家たちは、古代ギリシアの歴史や伝説の人物から、この「ティモテオス」を特定しようと試みている。アテネやシリアで有名な「ティモテオス」は軍人であり、『ティモテオスの肖像』の男性が軍服姿ではないため、候補から外されてきた。聖パウロの弟子で宣教旅行にも同行した、エフェソスの初代主教聖ティモテオスも、『ティモテオスの肖像』の男性が高位の聖職服姿ではないため除外されている。美術史家エルヴィン・パノフスキーは、古代ギリシアの詩人、音楽家ミレトスのティモテオス (en:Timotheus of Miletus) だという説を唱えた。そしてこの『ティモテオスの肖像』に描かれている男性も音楽家であり、当時のブルゴーニュ宮廷で高く評価されていた教会音楽家ジル・バンショワだと推測した。しかしながらパノフスキーよりも後世の美術史家ローン・キャンベルはパノフスキーの説には懐疑的で、描かれている男性が「聖職服を着ていない」ことを指摘し、描かれている男性が法律の専門家であるという説を唱えた。その根拠として三行目の銘の文体が法律文書に酷似していることを挙げ、男性が法律の専門家であることをファン・エイクが強調しているのではないかとしている。パノフスキー以降の研究者で、描かれている男性が法律関係者だったと推測する美術史家は他にも存在し、ガイ・バウマンやウェンディ・ウッドはキャンベルと同じく三行目の銘が法律文書のような文体であることを、ティル=ヘルガー・ボルヘルトは男性が手にする巻物を、それぞれ根拠としている
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