嫌悪
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/29 04:19 UTC 版)
嫌悪(けんお)とは、憎み嫌うこと。嫌厭(けんえん)や厭悪(えんお)ともいう。反義語は愛好。
汚い物、食用に適しない物、伝染性がある物、逆らいたい物、存在してほしくない物など、不愉快な思いを催す物事に関連した感情である。 チャールズ・ダーウィンは、『人間と動物の表情について』で嫌悪感が不愉快な物に関連していると書いた。
類義語に憎悪(ぞうお)があるが、「憎悪」は相手に対する敵意や攻撃性を示唆するのに対して、「嫌悪」「嫌厭」「厭悪」は不愉快だとして拒否したいという意図を示唆する(用例:自己嫌悪)。
英語における’’hatred’’は、広く「嫌いだ」「消し去りたい」と念ずる感情を指すのに対して、’’disgust’’は、第一に味覚によって惹き起こされ、次に嗅覚、触覚、視覚によって惹き起こされる「むかつき」を指す。嫌悪感はロバート・プルチックによって基本的な感情の一つと書かれた。またポール・エクマンの基礎的な六感情の一つにも含められている。恐れ、怒り、悲しみなどと異なり、嫌悪感は心拍数の低下を引き起こす。
概要
嫌悪感は、食中毒を防ぐか、感染症のリスクを低減できる傾向に起源を持ち、自然選択によって進化したと考えられている。嫌悪感は多くの場合、糞尿や人体からの分泌物、解体された肉、昆虫などと結びついている。他の直観的な感情と同様に、嫌悪感にも本能的な側面と社会構築的な側面がある。心理学者ポール・ロジンは子供たちの嫌悪感の発達を調査した。ジョナサン・ハイトは嫌悪感と道徳に関するさまざまな伝統的な概念の結びつきを調査した。ハイトは社会的・直観的な理論で道徳的規範の違反に対しておきる明らかに合理的でなく感情的な反応(規範を破った人への嫌悪、処罰的な態度)を説明しようと試みている。
進化人類学者ウィリアム・マコークルは、人間が死体を特殊化された方法で取り扱いたいと願う儀式化された衝動が、感染症の接触感染に関連しており、嫌悪感の起源と結びついていると考えている[1]。マコークルは嫌悪感の伝播が、実際の毒性や感染症の危険性と無関係に起きると主張した。しかし死体は行動の主体性に関する様々な精神的システム、例えば心の理論を刺激し、また捕食者の存在などを示唆することによって社会的知性を刺激する。このような刺激が死体(と遺骨のような残りの物)の儀式化された取り扱いの起源となった。さらにマコークルは嫌悪感の伝播が、嫌悪のような生物学的警報システムを利用する進化的精神システムの一種だと推論した。
アメリカの指導的な哲学者マーサ・ヌスバウムは『Hiding From Humanity: Disgust, Shame, and the Law』と題された2004年の著書で、嫌悪感や恥と社会的規則の関係を論じている。近年の研究では、女性と子供は男性よりも嫌悪感に陥りやすいことが明らかになっている[2]。研究者は進化の視点からこの発見を説明しようとした。
脳の構造
fMRIでの調査は、人が嫌悪感を覚えたとき、不快な味を感じたとき、嫌悪の表情を見せられたときに前島皮質(島皮質の前部)が活発に反応することを明らかにした[3]。
ハンチントン舞踏病
ハンチントン舞踏病をわずらう多くの患者は嫌悪の表情を認識することができず、また嫌悪感を催す味や匂いに反応することができない[4]。嫌悪感に対する認識の欠如は、ハンチントン舞踏病の患者の中で他の兆候より早く現れる[5]。
脚注
- ^ McCorkle Jr., William W. Ritualizing the Disposal of the Deceased: From Corpse to Concept. Peter Lang, 2010.
- ^ Druschel, B. A., & Sherman, M. F. (1999). Disgust sensitivity as a function of the Big Five and gender. Personality and Individual Differences, 26:739-748.
- ^ Phillips ML et al. A specific neural substrate for perceiving facial expressions of disgust. Nature. 1997 Oct 2;389(6650):495-8. PMID 9333238
- ^ Mitchell IJ, Heims H, Neville EA, Rickards H. Huntington's disease patients show impaired perception of disgust in the gustatory and olfactory modalities.[リンク切れ] Journal of Neuropsychiatry and Clinical Neuroscience, 17:119-121, February 2005. PMID 15746492
- ^ Sprengelmeyer R, Schroeder U, Young AW, Epplen JT. "Disgust in pre-clinical Huntington's disease: a longitudinal study." Neuropsychologia. 2006;44(4):518-33. Epub 2005 Aug 11. PMID 16098998
関連項目
嫌悪
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「ハリー・ポッター (架空の人物)」の記事における「嫌悪」の解説
同学年のスリザリン寮生のドラコ・マルフォイには最悪の第一印象を抱き、入学前から対立関係となる。劇中では、流血の決闘も繰り広げる。 ダーズリー一家に対しては表向きは服従しつつも、内心では強い憎しみを抱いている。一家の親戚であるマージョリー・ダーズリーとは特に折り合いが悪く、手ひどい侮辱を浴びせられ、無意識のうちに魔力を暴走させるほどの激しい怒りをあらわにする。彼らに関しては事情を知ったうえで、マージを除いて最終的には和解する。 ハリー最大の敵は両親の仇であるヴォルデモートであり、額の傷にある呪いを通じて精神的に繋がっている。またヴォルデモートの部下である死喰い人、その中でもシリウスを殺害したベラトリックス・レストレンジを憎悪するようになり、ハリーが初めて「許されざる呪文」のひとつである「磔の呪い」を使う相手となる。 自身が支持するダンブルドアを追放し、自分や友人達にも執拗な嫌がらせを行ったドローレス・アンブリッジの事も激しく嫌悪している。ホグワーツ追放後の彼女とも対峙しており、失神呪文をかけて無力化した。 父親もろとも自身を憎み、つらく当たるセブルス・スネイプのことも長らく嫌悪するが、第7巻でスネイプの過去を知り、考えを改めて尊敬するようになる。ただ、スネイプのほうはジェームズに対する憎しみの根が深く、内心では気に掛けながらも死の間際まで終始突き放した態度をとり、直接和解することはなく終わる。なお、ハリーとスネイプの共通点として、幼少期に陰湿な環境で養育されたことや、グリフィンドール・スリザリン両方に適性を持ち合わせている点がある。また、三大魔法学校対抗試合ではスネイプの魔法薬の材料を使用し、スネイプから閉心術の個人授業を受けたり、スネイプの記述した「『半純血のプリンス』の蔵書」の研究に没頭したりもする。スネイプの最期を看取るのもハリーである。
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嫌悪
「嫌悪」の例文・使い方・用例・文例
- 政治家に嫌悪感を抱いている
- その男に嫌悪を感じた
- 私は暴力に対して嫌悪を感じる
- 反ユダヤ主義者とはユダヤ人に対して嫌悪感を持つ人のことです。
- 彼は自己嫌悪からくる汚辱の思いにくじけた。
- 詩人は自己嫌悪に満ちて自殺した。
- 授かり効果は、人間が既に所有している物を失うことを嫌悪するものだということを意味する。
- 彼女は彼に嫌悪を感じている。
- あなたを嫌悪している。
- もしあなたが私を嫌悪しなければ、私はあなたに会いたい。
- 酒を飲みすぎた時、よく自己嫌悪に陥る。
- 裁判官はその未決囚の行動に対する嫌悪の念をためらうことなくあからさまにして、できるだけ過酷な刑を下した。
- ひどい仕打ちに彼の嫌悪感は憎しみに変った。
- 彼はクモを異常に嫌悪する.
- 嘲笑(ちようしよう)[嫌悪(など)]される.
- 人を嘲笑[嫌悪]する.
- 私が最初に感じたのは嫌悪感だった.
- 我々はその大虐殺の現場を目撃して心底から嫌悪を感じた.
- 嫌悪して, ぞっとして.
- 強い嫌悪感.
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