十七清浄句とは? わかりやすく解説

十七清浄句

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/17 08:41 UTC 版)

理趣経」の記事における「十七清浄句」の解説

真言密教では、「自性清浄」という思想根本にある。これは天台宗本覚思想対比、また同一視されるが、そもそも人間生まれつき汚れた存在ではないというものである。『理趣経』は、この自性清浄に基づき人間営みが本来は清浄なのである述べているのが特徴。 特に最初部分である大楽たいらく)の法門においては、「十七清浄句」といわれる17の句偈が説かれている。初句:「妙適清浄の句」の句とは文章の句のことではなく、ごく軽く事というほどの意味である。 また、初句総論で、四の四倍の十六各論総論一つ足して十七となっている。 妙適淸淨句是菩薩位 - 男女交合妙なる恍惚は、清浄な菩薩境地である 慾箭淸淨句是菩薩位 - 欲望が矢の飛ぶよう速く激しく働くのも、清浄な菩薩境地である 觸淸淨句是菩薩位 - 男女触れ合いも、清浄な菩薩境地である 愛縛淸淨句是菩薩位 - 異性愛し、かたく抱き合うのも、清浄な菩薩境地である 一切自在淸淨句是菩薩位 - 男女抱き合って満足し、すべてに自由、すべての主、天にも登るような心持ちになるのも、清浄な菩薩境地である 見淸淨句是菩薩位 - 欲心持って異性を見ることも、清浄な菩薩境地である 適悦淸淨句是菩薩位 - 男女交合して、悦なる快感を味わうことも、清浄な菩薩境地である 愛淸淨句是菩薩位 - 男女の愛も、清浄な菩薩境地である 慢淸淨句是菩薩位 - 自慢する心も、清浄な菩薩境地である 莊嚴淸淨句是菩薩位 - ものを飾って喜ぶのも、清浄な菩薩境地である 意滋澤淸淨句是菩薩位 - 思うにまかせて、心が喜ぶことも、清浄な菩薩境地ある 光明淸淨句是菩薩位 - 満ち足りて、心が輝くことも、清浄な菩薩境地である 身樂淸淨句是菩薩位 - 身体の楽も、清浄な菩薩境地である 色淸淨句是菩薩位 - 目の当たりにする色も、清浄な菩薩境地である 聲淸淨句是菩薩位 - 耳にするもの音も、清浄な菩薩境地である 香淸淨句是菩薩位 - この世香りも、清浄な菩薩境地である 味淸淨句是菩薩位 - 口にする味も、清浄な菩薩境地である このように、十七清浄句では男女性行為人間行為大胆に肯定している。 仏教において顕教では、男女性行為どちらかといえば否定される向きがある。これに対し理趣経』では上記のように欲望を完全否定ていないことから、「男女交歓肯定する経典」などと色眼鏡的な見方でこの経典語られることがあったり、十七清浄句は欲望単なる肯定であると誤解されたり、また欲望肯定或は男女性交)=即身成仏であると誤解されたりする向きも多い。しかしこれは真言密教自性清浄端的に表した句偈である。『理趣経』の最後十七段目は「百字の偈」と呼ばれ、一番中心となっている部分だが、「人間行動考え営み自体は本来は不浄なものではない。しかし、人たるものそれらの欲望誤った方向向けたり、自我とらわれる場合問題なのだ、そういう小欲ではなく世の為人の為という慈悲大欲持て大欲持ち衆生為に生死尽くすまで生きることが大切である」と説き、「清浄な気持ち汚泥に染まらず、大欲持って衆生利益を願うのが人の務めである」と説かれていることがその肝要である。 中村元は「欲望持ち煩悩悩まされている凡夫暮らしのなかに、真理生きる姿を認めようというのが『理趣経』の立場である」と解釈している。 このような思想両部大法のもう一方である『大日経』の「受方便學處品第十八」にも見られる。 復た次に祕密主、菩薩邪淫せざる戒を持て若しくは他の攝する所と、自らの妻と、自らの種族と標相の護る所とに貪心を發さざれ。況や復た非道に二りの身を交え會せんをや。餘の方便有らば、應に度すべき所に隨って眾生を攝護せよ。 復次祕密主。菩薩持不邪婬戒。若他所攝。自妻。自種族。標相所護。不發貪心。 況復非道。二身交會有餘方便隨所應度。攝護眾生。 — 『大正蔵第18巻39中段 ちなみに、『理趣経』を使った理趣経法』は、四度加行実践して前行をしてからでないと伝授してならないという厳し規則がある。

※この「十七清浄句」の解説は、「理趣経」の解説の一部です。
「十七清浄句」を含む「理趣経」の記事については、「理趣経」の概要を参照ください。

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