リンパ系の病気
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/17 03:17 UTC 版)
リンパ浮腫は組織液を輸送するリンパ系が障害を受け、リンパ液が滞留・蓄積することで発生した腫脹である。通常四肢に異常の所見を認めるが、顔、首、腹部に異常が認められる場合もある。これらの異常所見とともに下記のような原因を特定して診断される。この病気の患者は推定1億7千万人いるとされる。診断により以下のように3段階で進展の程度を分ける。 第1段階:四肢の腫れ部位を押すとくぼみが残り元に戻るまでしばらくかかる。繊維形成(硬化)はほとんど見られない。部位を高く上げることで腫れは引く。この段階からの回復はしばしば見られる。 第2段階:腫れの部位を押してもくぼみは残らない。高く上げても腫れは引かない。この段階で放置すると表皮や皮下組織中の繊維化が進む。 第3段階:一見して明らかな部位表面の異常を認める。皮膚は弾力を失って肥大、硬化し、色素の沈着も見られる。この段階はしばしば象皮病と呼ばれる。 リンパ浮腫の最もありふれている原因として、リンパ系フィラリアによる寄生虫症があり、リンパ管の閉塞を引き起こす。リンパ管腫はしばしばターナー症候群に付随して現れる良性腫瘍だが、リンパ管肉腫は悪性の軟部組織腫瘍(軟部組織肉腫)である。この他、先天性のリンパ輸送系の障害や、リンパ節の術的摘出による後遺症障害で浮腫が現れることがある。象皮病は、浮腫が放置などで長期に及んで滞留したリンパ液の刺激により皮膚や皮下組織の肥厚亢進が顕著に起こった病変である。特に毛細血管の末梢部が多い上腕、下肢、乳房や陰嚢、陰茎、外陰部などの生殖器で極端な肥大と硬化を引き起こし、日常生活の困難をきたす。象皮病に至っては刺激を取り除くためのリンパ管の再建が困難で、特に下肢は血圧がかかりやすく回復は難しい。 エプスタイン・バール・ウイルス(EBV)によるリンパ系感染症は伝染性単核球症として知られている。 リンパ脈管筋腫症(LAM)はリンパ管の平滑筋内に発生し、主に肺に多発性嚢胞を形成する進行性の良性腫瘍で難病指定されている。 悪性リンパ腫はリンパ内の血球のがんで全身性の疾患である。ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫が知られ、がん性細胞化した血球がリンパ系に乗って全身を廻り転移を引き起こす。
※この「リンパ系の病気」の解説は、「リンパ系」の解説の一部です。
「リンパ系の病気」を含む「リンパ系」の記事については、「リンパ系」の概要を参照ください。
- リンパ系の病気のページへのリンク