アルミニウム合金とは? わかりやすく解説

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アルミニウム合金

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/09/10 14:20 UTC 版)

アルミニウム合金(アルミニウムごうきん、: aluminum alloy)は、アルミニウムを主成分とする合金である。アルミニウムは軽いという特徴がある一方軟らかい金属であるため、(Cu)、マンガン(Mn)、ケイ素(Si)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)などを添加して合金にすることで強度などの特性の向上が図る。アルミニウム合金を加工する場合は大きく分けて展伸法と鋳造法が採用される。

アルミニウム合金の軽さと強度を応用した例として、航空機材料としてのジュラルミンの利用が挙げられる。ジュラルミンはAl-Zn-Mg-Cu系のアルミニウム合金である。

アルミニウム合金は高い強度を持つ反面、溶接溶断が難しく、アルミ合金製品の用途変更に応じた改造や、修繕での溶接・溶断作業はなどに比べて困難である。

なお、近年ではリチウムを添加した合金も実用化されている[1][2]

展伸用合金

一般に展伸法で利用されるアルミニウム合金には、4桁の数字からなる国際アルミニウム合金名が使用されている。日本工業規格(JIS H 4140)においても、国際アルミニウム合金名がアルミニウム合金名の一部に取り入れられ準用されている。名称としては、例えばA3003P-H12 のようにアルミをあらわすAの後に合金の種類を示す4桁の数字が続き、ハイフン以降は加工硬化熱処理などの調質記号である。

1000番台
アルミニウム 加工性、耐食性、電気伝導性熱伝導性はよいが強度が低い
用途:アルミ箔化学工業タンク類、導電材・航空機
2000番台
Al-Cu系合金
  • 2011 快削アルミとして知られ、機械切削性に優れる。耐食性、対応力腐食割れ性が劣る。
  • 2017 (2017 aluminium alloy 熱処理系高強度アルミ合金。「ジュラルミン」として知られる。熱処理によって高強度化が可能。耐食性、対応力腐食割れ性が劣る。溶接割れ感受性が高いため溶接性が劣る。
  • 2024 (2024 aluminium alloy 熱処理系高強度アルミ合金。「超ジュラルミン」として知られる。熱処理によって高強度化が可能。耐食性、対応力腐食割れ性が劣る。溶接割れ感受性が高いため溶接性が劣る。
  • 2117 熱処理系高強度アルミ合金。耐食性、対応力腐食割れ性が改善している。熱処理によって高強度化が可能であるが、A2017、A2024ほどの高強度は得られない。溶接割れ感受性が高いため溶接性が劣る。
  • 2219 (2219 aluminium alloy 熱処理系高強度アルミ合金。溶接割れ感受性を低減し溶接性を改善している。熱処理によって高強度化が可能。耐食性が劣る。鋳造が不可。
3000番台
Al-Mn系合金 加工性、耐食性、強度が良好
用途:航空機・ビール・ジュースボディ部
4000番台
Al-Si系合金 耐摩耗性が良好
5000番台
Al-Mg系合金
用途:船舶車両、航空機・自動車アルミホイール、建築用内外装、圧力容器、ビール・ジュース缶蓋部分
  • 5052 (5052 aluminium alloy 1100・3003より強度を持つ合金、強度・耐食性・加工性・溶接性のバランスに優れている
  • 5056 5052のMgの含有量を2.5%から5.0%に上げた合金、溶接性は良くない
6000番台
Al-Mg-Si系合金 強度、耐食性が良好
7000番台
Al-Zn-Mg系合金・Al-Zn-Mg-Cu系合金 高強度材でありCu系はアルミ合金中の最高強度である
8000番台
それ以外の合金。
  • 8006
  • 8009
  • 8011
  • 8014
  • 8019
  • 8025
  • 8030
  • 8090
  • 8091
  • 8093
  • 8176
アルミニウム合金の成分表
合金番号 化学成分(wt%)
ケイ素 マンガン マグネシウム クロム 亜鉛 チタン その他 アルミ
1050 0.25以下 0.40以下 0.05以下 0.05以下 0.05以下 - 0.05以下 0.03以下 V 0.05以下 99.50以上
1060 0.25以下 0.35以下 0.05以下 0.03以下 0.03以下 - 0.05以下 0.03以下 V 0.05以下 99.60以上
1070 0.20以下 0.25以下 0.040以下 0.030以下 0.030以下 - 0.040以下 0.030以下 V 0.050以下
その他 0.030以下
99.70以上
1080 0.15以下 0.15以下 0.03以下 0.02以下 0.02以下 0.03以下 - 0.03以下 - 99.80以上
1100 Si+Fe 0.95以下 0.05-0.20 0.05以下 - 0.10以下 - - - 99.00以上
1145 Si+Fe 残り 0.05 0.05 0.05 - 0.05 0.03 - 99.45
1199 0.0060以下 0.0060以下 0.0060以下 0.0020以下 0.0060以下 - 0.0060以下 0.0020以下 V 0.0050以下
Ga 0.0050以下
その他 0.0020以下
99.99以上
1200 Si+Fe 1以下 0.050以下 - 0.0060以下 - 0.10以下 0.050以下 その他 0.15以下 99.0以上
2011 0.40以下 0.7以下 5.0-6.0 - - - 0.30以下 - Bi 0.20-0.6
Pb 0.20-0.6
残り
2014 0.50-1.2 0.7以下 3.9-5.0 0.40-1.2 0.20-0.8 0.10以下 0.25以下 0.15以下 - 残り
2017 0.20-0.8 0.7以下 3.5-4.5 0.40-1.0 0.40-0.8 0.10以下 0.25以下 0.15以下 - 残り
2024 0.50以下 0.50以下 3.8-4.9 0.30-0.9 1.2-1.8 0.10以下 0.25以下 0.15以下 - 残り
2117 0.20-0.8 0.7以下 2.5以下 - 0.3以下 0.10以下 0.25以下 0.15以下 - 残り
2219 0.20以下 0.3以下 5.8-6.8 0.20-0.40 0.02以下 - 0.10以下 0.02-0.10 V 0.05-0.15
Zr 0.10-0.25
残り
3003 - - - 1.0~1.5 - - - - - 残り
3004 0.30以下 0.7以下 0.25以下 1.0-1.5 0.8-1.3 - 0.25以下 - - 残り
5005 0.30以下 0.7以下 0.20以下 0.20以下 0.50-1.1 0.10以下 0.25以下 - - 残り
5052 0.25以下 0.40以下 0.10以下 0.10以下 2.5以下 0.25以下 0.10以下 0.03以下 0.05以下
(計0.15以下)
残り
5056 - - - - 5.0以下 0.25以下 - - - 残り
5086 0.40以下 0.50以下 0.10以下 0.20-0.7 3.5-4.5 0.05-0.25 0.25以下 0.15以下 - 残り
5652 0.4以下 0.4以下 0.04以下 0.01以下 2.2-2.8 0.15-0.35 0.1以下 - 0.15以下 残り
6063 0.20-0.6 0.35以下 0.10以下 0.10以下 0.45-0.9 0.10以下 0.10以下 0.10以下 - 残り
7075 0.40以下 0.50以下 1.2-2.0 0.30以下 2.1-2.9 0.18-0.28 5.1-6.1 0.20以下 - 残り
7204 0.30以下 0.35以下 0.20以下 0.20-0.7 1.0-2.0 0.30以下 4.0-5.0 0.20以下 V 0.10以下
Zr 0.25以下
残り

Vはバナジウム、Zrはジルコニウム、Pbは、Biはビスマス、Gaはガリウム

鋳造用合金

AC・・が鋳物用、ADC・・がダイカスト用、AJ・・が軸受鋳物用となる。

  • AC1C,AC1B - Al-Cu系
  • AC2A,AC2B - Al-Cu-Si系
  • AC3A - Al-Si系
  • AC4A,AC4C - Al-Si-Mg系
  • AC4B - Al-Si-Cu系
  • AC4D - Al-Si-Cu-Mg系
  • AC5A - Al-Cu-Ni-Mg系
  • AC7A - Al-Mg系
  • AC8A,AC8B - Al-Si-Cu-Ni-Mg系
  • AC9A,AC9B - Al-Si-Cu-Mg系
  • ADC1 - Al-Si系
  • ADC3 - Al-Si-Mg系
  • ADC5 - Al-Mg系
  • ADC6 - AL-Mg-Mn系
  • ADC10,ADC12 - Al-Si-Cu系
  • ADC14 - Al-Si-Cu-Mg系

ろう材

アルミニウム合金のろう材は、単体のほか、心材となる合金の片面もしくは両面に融点の低い合金を張り合わせたクラッド材としても供給される。

強化方法

純アルミニウムは極めて柔らかく、完全焼きなまし状態での強度は約50N/mm2であるが、加工硬化、固溶硬化および析出硬化によって適当な硬さにすることができる。

調質記号

日本工業規格(JIS)[3]によって、アルミニウム合金の展伸材及び鋳物の質別について規定されている。

  • F - 製造のままのもの
  • O - 焼きなましたもの
  • H - 加工硬化したもの
    • H1 - 加工硬化だけのもの
    • H2 - 加工硬化後適度に軟化熱処理したもの
    • H3 - 加工硬化後安定化処理したもの
    • H4 - 加工硬化後塗装したもの
  • W - 溶体化処理したもの
  • T - 熱処理によってF・O・H以外の安定な質別にしたもの
    • T1 - 高温加工から冷却後、自然時効させたもの
    • T2 - 高温加工から冷却後、冷間加工を行い、さらに自然時効させたもの
    • T3 - 溶体化処理後、冷間加工を行い、さらに自然時効させたもの
    • T4 - 溶体化処理後、自然時効させたもの
    • T5 - 高温加工から冷却後、人工時効したもの
    • T6 - 溶体化処理後、人工時効したもの
    • T7 - 溶体化処理後、安定化処理したもの
    • T8 - 溶体化処理後、冷間加工し、さらに人工時効したもの(T3を人工時効硬したもの)
    • T9 - 溶体化処理後、人工時効し、さらに冷間加工したもの(T6を冷間加工したもの)
    • T10 - 高温加工から冷却後、冷間加工を行い、さらに人工時効したもの

脚注

参考文献

関連項目


アルミニウム合金

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/12/20 12:15 UTC 版)

粒界腐食」の記事における「アルミニウム合金」の解説

アルミニウム合金も粒界腐食問題となることがある。アルミニウム合金の場合は、粒界析出物生成され析出物周囲母相よりも貴あるいは卑であるときに粒界腐食が起こる。特に粒界腐食可能性ある種類として挙げられるのは、Al-Cu系、Al-Mg系、Al-Mg-Si系、Al-Zn-Mg系などのアルミニウム合金である。 Al-Cu系やAl-Cu-Mg系では、を含む金属化合物粒界析出し析出物周囲固溶不足するその結果析出物周囲足部分が著し腐食受けて粒界腐食したような状態になる。Al-Mg系やAl-Zn-Mg系では、Mg5Al8 や MgZn2 の化合物粒界析出する。これらの析出物周囲からの腐食加速作用を受けるため、結果粒界腐食する

※この「アルミニウム合金」の解説は、「粒界腐食」の解説の一部です。
「アルミニウム合金」を含む「粒界腐食」の記事については、「粒界腐食」の概要を参照ください。

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