俳優松重豊(61)が監督・脚本・主演を務めた「劇映画 孤独のグルメ」(上映時間1時間50分)が公開された。「腹が…減った」「店を探そう」などのセリフでもおなじみの人気グルメドラマが満を持して映画化。自身が初めてメガホンも取った意欲作に「見たらおなかがすく1時間50分になった」と自信を見せている。(近藤正規)
孤独のグルメ 原作・久住昌之、作画・谷口ジローによる同名漫画が原作。輸入雑貨商を営む主人公・井之頭五郎が、営業先で訪れた土地で見つけた食事処で、独り自由に食す様子を描く。2012年にテレビ東京系で連続ドラマがスタートした。映画では、日本のみならずフランスや韓国を舞台に、五郎が”究極のスープ探し”の旅に出る。共演に内田有紀(49)、磯村勇斗(32)、杏(38)、オダギリジョー(48)ら。
◆ポン・ジュノ監督にオファーしたが…
さまざまな映画やドラマに出演してきた名優だが、今回は役者や監督として取材やイベントなどで語ることになり「わが子のことのように言葉も選んでしゃべらなきゃいけない。今までは適当にやっていたんだろうな」と苦笑い。構想から始まり「この2年間くらいは映画のことしか考えていない日々が続いた」という。
当初は監督として、「パラサイト 半地下の家族」のポン・ジュノ監督(韓国)にオファー。松重は同監督が手がけた映画「TOKYO!〈シェイキング東京〉」(08年)に出演した縁があった。ドラマの世界観を踏襲しながらも、観客にはドラマと切り離して考えてもらいたくて同監督に頼んだが、スケジュールが合わず断念。最終的に自身がメガホンを取ると決意した。
◆「ヒロトに迷惑をかけたのがトラウマ」
約40年前に映画監督に憧れ上京した松重。東京・下北沢の中華料理店「珉亭(みんてい)」でアルバイトを始めるが、偶然にも同じ日に働き始めたのが後にロックバンド「ザ・クロマニヨンズ」を結成する甲本ヒロト(61)だった。当時、甲本主演で8ミリ映画を作ろうとするも、資金が調達できず頓挫。「自分のふがいなさで製作中止になってしまって、周りの人や特にヒロトに迷惑をかけたというのが大きなトラウマだったので、映画監督をやりたいなんて二度と言っちゃいけないものだと完全に封印していた。本当に40年間、口にしたこともなかった」という。
しかし「ポン・ジュノさんに断られた日になぜだか自分で撮るかと口をついて出ちゃった。40年間言ってなかったことも忘れたくらいの勢いで言っちゃった」と「監督・松重豊」誕生を振り返る。「40年の借りを何とか返すことができないか」と主題歌はザ・クロマニヨンズに依頼した。
◆東アジア各国でも人気 食べ物ドラマの「伝道師に」
「孤独のグルメ」の魅力を聞くと「これだけ食べ物を主人公にしたドラマは今までもなかった。食べ物に対する興味は尽きないし、それがドラマに落とし込まれている」とした上で、「物語というよりもうまそう、食べたい、腹減ったということだと思うので、この映画を見ておなかがすかない人はいないという1時間50分にしたかった」と強調した。
「孤独のグルメ」は韓国をはじめ、台湾や中国でも人気。「食べ物のドラマを作るということにかけては僕らのチームは非常にたけているので、海外からのオファーがあれば皆を連れてやりたい。東アジアでスタッフとともに食べ物ドラマ、映画を作るような伝道師になれたらなと思っています」とさらなるワールドワイドな展開も視野に入れている。
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