〈連載「取り残される人たち」検証マイナ保険証〉②
従来の健康保険証の新規発行が終了し、2日からマイナ保険証を基本とする仕組みに移行した。制度移行の裏で、デジタル化の恩恵を受けられず、取り残される人たちを訪ねる連載の2回目。都内の高齢者施設を訪問した。
◆入所者は関心なし、家族は「どうすれば…」
12月5日、東京都葛飾区の特別養護老人ホーム「葛飾やすらぎの郷」。ほぼ1年ぶりの再訪だった。
ホーム2階の広い廊下では、入所者2人がイスに座って静かにアメリカ映画を見ていた。
3日前に健康保険証の新規発行が終了したが、入所者の間で話題に上ることもないという。
施設長の落合直人さん(48)は「そもそも施設側で管理しており、入所者にとって保険証は何の執着もない。関心がないんです」と話す。
ただ施設側はマイナ保険証の対応に頭を痛めてきた。入所者の家族からは「マイナンバーカードを作っていないのですが、結局はどうしたらいいですか」といった問い合わせも寄せられていたという。
◆悩みの末、わずか1カ月前に方針決定
「昨年、お話しした時点では、マイナ保険証になったら、どう管理しようかと悩んでいました」と落合さん。方針が決まったのは、わずか1カ月前のことだ。
「マイナ保険証は預からず、今の保険証の有効期限が切れたら、資格確認書を預かることに決定し、ご家族にもお伝えしました」
71~104歳までのお年寄り96人が利用するこのホームには、ショートステイを除くと91人が暮らす。
◆救急搬送時にはロッカーから取り出し
トイレ、食事、入浴など日常生活に何らかの介助が必要な人が7割を占める。程度の違いはあれ、認知症の症状がある人も多い。
入所者は全員、従来の保険証を使っており、施設側が事務室にある鍵付きのロッカーで管理してきた。
病院の受診には職員が同行するほか、夜間の救急搬送時には、当番の職員がロッカーから保険証を取り出して病院に同行している。
落合さんは「施設でマイナンバーカードを預かるのはリスクが高すぎる」と不安を口にする。
◆職員たちからは管理に否定的な意見が
施設を運営する社会福祉法人内の話し合いでは、マイナ保険証の管理を巡って職員から否定的な意見が相次いだという。
「不特定多数の...
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