川崎市立中学校の生徒が昨年8月、所属する運動部の担当教諭による厳しい指導で心理的に追い詰められた結果、自宅マンションの非常階段3階から飛び降り、脊髄を損傷する大けがを負っていたことが、分かった。18日の市議会一般質問で、立憲民主党の押本吉司議員が対応をただし、市教育委員会の池之上健一教育部長は、指導について「不適切だった」と認めた。
◆「待て、逃げるな」「うそついたらリモコン投げるぞ」
押本議員によると、教諭は「文武両道」を意識した指導に賛同し、夏休みの宿題をお盆休み明けの16日に確認するとしていた。宿題を終えていなかった生徒は21日、教諭から連絡を受けた保護者に促され、部活の開始時間より遅れて登校。校門で教諭に見つかって「待て、逃げるな」と怒鳴られ、相談室に行くよう指導を受けたという。
生徒は普段利用しない相談室で1時間以上待たされた上、教諭に「うそついたらリモコン投げるぞ」と言われ、投げるそぶりを複数回されたり、机をたたかれたりされた。生徒は宿題について尋ねられ「家に忘れました」と返答し、「取りに帰れ」と言われたため家に向かった。しかし、帰宅はせず、自宅マンションの非常階段で柵を越えて飛び降りたとされる。一命は取り留めたものの、今も車いす生活を余儀なくされている。
生徒はその後の聞き取りに対し、飛び降りた時の心境について「逃げ出したい」「死にたい」などと考えていた、と話したという。
◆学校側は保護者に意向確認も詳細な調査も行わず
文部科学省が生徒の指導方法などをまとめた「生徒指導提要」では、不適切な指導の例として「威圧的、感情的な言動で指導する」「児童生徒が著しく不安感や圧迫感を感じる場所で指導する」などが挙げられている。市教委は答弁で、教諭の指導は「生徒指導提要の具体例に当てはまる不適切なものと捉えている」との見解を示した。他の学校の部活動では宿題指導をしていないと確認した、としている。
学校事故の対応に関する文科省の指針では「教育活動に事故の要因があると考えられる場合には、保護者の意向に配慮した上で学識経験者らが参加した調査委員会で詳細調査を行う」とされている。しかし、学校側は保護者の意向を確認せず、詳細な調査は行っていないという。(北條香子)
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