米軍普天間 飛行場の名護市辺野古 移設を巡り、軟弱地盤工事に伴う設計変更にお墨付きを与えた沖縄防衛局の「技術検討会」の委員2人に、関連工事の受注業者から資金が流れていた。
設計変更を巡っては、沖縄県と国との間で対立が続く。
県の担当者は14日、本紙の取材に「中立性、公正性、科学的に疑問符が付くような業者と委員の関係性はいかがなものか」と指摘。設計変更の決定プロセスに疑問を投げかけた。
一方で防衛省は国会で、報道の事実確認すら「逐一把握する立場にない」と拒んだ。(中沢誠、谷岡聖史、三輪喜人)
◆防衛大臣は「公正性に影響ない」
この日は参院の外交防衛委員会でも、本紙が報じた技術検討会委員への資金提供問題が取り上げられた。
「設計変更を評価した技術検討会の構成員が、受注業者からお金をもらい、かつ改良工事の設計段階から議論に関わっていた。こういうのを出来レースと言うんじゃないですか」
「設計変更を評価した技術検討会の構成員が、受注業者からお金をもらい、かつ改良工事の設計段階から議論に関わっていた。こういうのを出来レースと言うんじゃないですか」
「こうした技術検討会の議論、あるいはそこで出た結論は信頼に値するのか」
立憲民主党の小西洋之参院議員が追及した。
これに対し、木原稔防衛相は「議事録を見たが、変な誘導はないと認識しており、特に問題があるとは考えていない」と反論。公表されている技術検討会の議事録に残された委員の発言内容を引き合いに出し、議論の公正性を繰り返し訴えた。
その上で、「法律に基づく審議会は、審議の結果に基づいて政策に勧告等を行うもの。技術検討会は法律に基づかない、助言をいただくものという観点から、議論の公正性、中立性に影響があるとは考えていない」とした。
本紙が、技術検討会の委員8人のうち、寄付金の受け取りの有無が確認できたのは、情報公開請求制度のある大学や研究機関に所属する6人だけ。防衛省側は「各委員の研究活動を逐一把握する立場にない」とし、全委員の寄付金の有無を調べる考えはないとした。
2人の委員が就任の前年まで1年余りにわたって、設計変更に関わった設計業者に技術指南を行っていたことについては、防衛省側は「民間企業の自主的な取り組みには逐一コメントする立場にない」と言及を避けた。
辺野古工事に関する技術検討会 土木工学の専門家ら8人の委員で構成。設計変更に関して専門的見地から技術的な助言を得るため、防衛局が委員を選んで2019年9月に設置した。6回の会合を経て、防衛局は20年4月、専門家からも理解を得られたとして、県に設計変更を申請。防衛省によると、申請後も解散せず、県から意見を求められた際などに適宜、委員から助言を得ているという。
◆沖縄県にも「検討会の委員が言っているから」
沖縄県は「調査が不十分」として防衛局の設計変更を不承認にし、国と法廷闘争が続いている。
防衛局は2020年4月、設計変更を県に申請した。
県によると、申請された設計変更が妥当か判断するに当たり、4度にわたって防衛局に質問を重ねたという。
県が質問すると、防衛局からは幾度となく「技術検討会の委員が問題ないと言っているので問題ない」との回答が返ってきたという。
その一つが、軟弱地盤が最深部の「B27」地点での調査だ。
防衛局は、「B27」地点の地盤の強度を調べず、他の調査地点のデータから推定して設計を行っていた。
審査の過程で、県も「B27」地点で実測していないことの妥当性を防衛局に尋ねているが、そのときも「技術検討会の委員が…」という返答だったという。
◆「公正性に疑い持たれること自体問題」
県海岸防災課の与儀喜真副参事は「資金提供のような報道があると、個人的には設計変更の内容が疑わしく思えてくる。ただ、たとえ影響がなかったとしても、議論の公正性、中立性に疑いを持たれること自体が問題だ」と話す。
本紙の調査では、辺野古の埋め立てや護岸の工事を受注した業者から、委員8人のうち少なくとも3人が就任前に計570万円、就任後にも2人が計230万円の奨学寄付金を受け取っていた。また、委員2人は、就任前年まで1年余りにわたって、設計変更に関わった設計業者に技術指南していた。
設計変更を巡っては、県が軟弱地盤の最深部で地盤強度を調べていないことなどを理由に不承認とした。その後、国との間で法廷闘争となったが、県が敗訴。現在、国は知事に代わって承認する「代執行」を求めて提訴しており、年内にも判決が出るとみられる。
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辺野古の軟弱地盤問題 埋め立て予定地の海底で、軟弱地盤が確認されたとして、沖縄防衛局は2020年、沖縄県に設計変更を申請した。県は承認せず、国との間で法廷闘争になった。国は知事に代わって承認する「代執行」に向けて提訴し、既に結審している。防衛局の設計変更では、海底に約7万本の砂杭などを打ち込み、地盤を固める改良工事を計画している。総工費は2.7倍の9300億円に膨らむ。仮に代執行が認められ、国が地盤改良工事に着手しても、普天間返還は2030年代半ば以降となる見通し。
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