軟弱地盤対策を巡って、沖縄県と国との対立が続く、沖縄県名護市の辺野古 新基地建設。国は今、設計変更を不承認とした県に変わって承認しようと「代執行」を行ってまで工事を押し進めようとしている。
その一方で、沖縄防衛局の設計変更にお墨付きを与えた政府の委員に、受注業者から資金が流れていた。
設計変更に向けた産官学の密接ぶりは、それだけではない。公共事業に詳しい専門家が「まるで出来レースだ」とまで指摘する、その実態とは―。(中沢誠)
【関連記事】「辺野古」軟弱地盤工事にお墨付き与えた委員に230万円 受注業者から資金提供 就任前にも570万円
設計変更の助言を受けるため、沖縄防衛局が設置した技術検討会の委員2人が、就任した2019年9月以降に、関連工事の受注業者から計230万円の奨学寄付金を受け取っていたことが、本紙の調べで明らかになった。4年前の本紙の調査では、就任前にも委員3人が受注業者から計570万円を受け取っていたことが判明している。
◆国の強権に玉城知事「対話を」
10月30日、国が県に代わって設計変更を承認する「代執行」に向けた訴訟の初弁論が、福岡高裁那覇支部で開かれた。
県の玉城 デニー知事は「対話による解決が最善の方法だという判断を示してほしい」と訴え、代執行まで持ち出して強権的に工事を進めようとする政府を批判した。
訴訟は即日結審した。高裁支部が「承認せよ」との判決を出し、知事が一定期間に判断しなければ、国土交通相が県に代わって承認することができる。
既に防衛局は、地盤改良工事の着手を見越して、関連工事の契約に踏み切っている。
◆軟弱地盤の存在伏せる裏で…
民意をないがしろにした姿勢は、軟弱地盤の対応にも色濃く現れている。
沖縄防衛局は2015年時点で、地質調査会社から「土木的問題の多い地層が厚く堆積」と軟弱地盤の報告を受け、設計変更の可能性まで指摘されていた。
市民団体メンバーの北上田毅さんが2018年3月、開示請求で軟弱地盤を裏付けるデータを入手。軟弱地盤の存在を問い質したが、政府側は明言を避け続けた。
その一方で防衛局は、業者には地盤改良を見据えた検討を指示していたことが、防衛局と業者との打ち合わせ記録に残っている。
2018年7月の打ち合わせ記録には、防衛局がこう指示していた。
「安全性照査の結果により、地盤改良等の対策工が必要となった場合には、施工方法の検討及び、環境影響の検討を実施するものとする」
2018年12月の土砂投入開始の2カ月前、防衛局は業者から検討結果をまとめた100ページ弱の報告書を受け取っていた。
報告書で業者は「一般的で施工実績が豊富な地盤改良工法により、護岸及ぶ埋立地の施工が可能である」と分析。海底に砂杭 を打ち込み、地盤を固めるといった今の設計変更の原案が記されていた。
政府が軟弱地盤の存在を認めたのは、土砂投入開始後の2019年1月末になってからだ。
◆技術検討会の要綱には「客観的」
設計変更を助言した技術検討会の運営要綱は、「技術的・専門的見地から客観的に提言・助言を行う」とある。
その委員を務める渡部要一氏と森川嘉之氏は、就任前年まで、建設コンサル大手の「日本工営」(東京)に技術指南する立場だった。
辺野古関連の設計業務の大半を請け負っている日本工営は、2016年から自社で辺野古工事の検討会議を立ち上げていた。
日本工営は「弊社のノウハウに属する」として会議の詳細は明らかにしないが、地質の専門家をメンバーにそろえてい...
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