<ウージの下で さよなら>琉球音階では歌えぬ 沖縄の無念に寄り添ったヤマトンチュの「島唄」

2022年3月21日 06時00分 有料会員限定記事
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島唄を歌う宮沢和史さん

 ザ・ブームのヒット曲「島唄」は、ドレミのレとラのない琉球音階でほぼ構成されている。「ほぼ」と書いたのは例外のフレーズがあるためだ。 
 〈ウージの森で あなた と出会い ウージの下で 千代にさよなら〉
 幼いころサトウキビ(ウージ)畑で出会った男女がサトウキビ畑の下の洞窟で永遠の別れ、つまり自決をしなければならない—。

◆「死に追いやったのは日本軍」

 作詞作曲した宮沢和史さん(56)は「この部分は琉球音階で歌ってはいけない、(伴奏の)三線さんしんも弾けないと感じました」と明かす。「死に追いやったのは『日本軍』であって、彼ら彼女らの無念を思うと琉球音階は使えなかったんです」

沖縄返還50年や島唄などについて話すミュージシャンの宮沢和史さん

 甲府市生まれ。三線の音に魅せられ沖縄を訪れ、ひめゆり平和祈念資料館で、学徒だった語り部の話を聞くうち自分への怒りが込み上げてきた。「県民の4人に1人が犠牲になった歴史も知らずにいた自分が恥ずかしくて…」
 アンケート用紙に「歌をつくって、また来ます」と記入した。その答えが「島唄」。発表したのは沖縄の本土復帰20年の1992年だった。
 ことし5月15日で沖縄が日本に復帰して50年。ミュージシャンの宮沢さんに、ヒット曲「島唄」に込めた思いを聞いた。

◆表面上はラブソング

 宮沢さんは「島唄」の完成後も、「ヤマトンチュ(本土の人間)の自分が沖縄の歌を歌って良いのか悩んだ」という。そんな時、会う機会ができたのが喜納昌吉さん(73)だ。「花」「ハイサイおじさん」などで沖縄の心を歌い続ける喜納さんに「島唄」について話すとこんな言葉を贈られた。「魂まで自分のものにして歌に込めているなら、もうコピーじゃない」
 「島唄」の歌詞はダブルミーニングという手法をとっている。表面上は、沖縄の情景と男女の別れを描いたラブソングだが、すべての歌詞にもう一つの意味が込められている。「風を呼び 嵐が来た」の風や嵐は「米軍」。そして「ウージの森で…」は集団自決を描き、「このまま永遠とわ夕凪ゆうなぎを」では、永遠の平和を願っている。
 「より多くの人に聞いてもらい、歌ってももらえるようにダブルミーニングにしました。長く歌われるうちにもう一つの意味も分かってくれればいいと思ったし、音楽は音楽として鑑賞するものなので、しばらくは説明もしないできた」

◆沖縄への尊厳欠く政府

 スタンダード曲として沖縄でも受け入れられるようになってからは、県...

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