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エイリアンシリーズ完全解説

2017年9月、新作『エイリアン:コヴェナント』公開にあわせてザ・シネマではシリーズ過去全作を総力特集。同時に徹底解説を試みる。

年表・相関図

一作ごとに独自のカラーを持つ『エイリアン』シリーズだが、世界観は繋がっており、各作品に共通するワードや通底する事柄がいくつか存在する。
それらを関連づけることで、エイリアン・ユニバースに対する理解を深めていただきたい。
(注/ネタバレを含みます)

『プロメテウス』

  • エリザベス・ショウ(ノオミ・ラパス)

    人類考古学を研究する博士。考古学者である両親の影響を受け、自らも同じ道を歩む。太古の昔にエンジニアが地球を訪れていたことを発見し、それを立証するためにプロメテウス・プロジェクトに参加することになった。リプリーを踏襲した女性ヒロイン。

  • ピーター・ウェイランド(ガイ・ピアース)

    巨大企業ウェイランド・コーポレーション社長。「プロジェクト・プロメテウス」を推進し、エンジニアが存在するといわれる衛星に調査チームを送り込む。惑星捜索船プロメテウス号の航行時には、既に亡くなったことになっていたのだが……。

  • アンドロイド デヴィッド(マイケル・ファスベンダー)

    ウェイランド・コーポレーションから派遣されたアンドロイド。ウェイランド社長から実の息子として教育され、森羅万象に精通している。しかし、遭遇したエンジニアを相手に謎めいた行動をとる。

  • プロメテウス号の乗組員たち

    ウェイランド・コーポレーション選抜の科学者たちを中心に、操縦チームや同社の監督官、そしてアンドロイドの計17名で編成された調査チーム。エンジニアを捜索するために惑星LV-223(LV-426)に向かうが、そこで恐ろしいモノと遭遇することになる。

  • エンジニア

    彫像のように均整のとれたヒューマノイド型の異星人。不毛の惑星に生命の種を宿し、人類を創造したとされる神のごとき存在。

  • ジャガーノート

    エンジニアが建造した馬蹄型の宇宙船。直径約360m、高さ約75mと、プロメテウス号の二倍の大きさ。『エイリアン』に登場したジャガーノート号と基本的には同じ外観で、同一型と解釈できるが、細かいところに違いが見られる。

  • 操縦室と操縦席

    ハイパースリープ室も兼ねた、ジャガーノートの操縦室。長距離の移動を想定された作りになっている。これらを見ると『エイリアン』で同操縦席に搭乗し、スペース・ジョッキーと呼ばれていた異様な外観の化石は、宇宙服を着て操縦をしていたエンジニアであることが分かる。

  • エイリアン

    エンジニアが作った黒いスライム状の生物は、人間に寄生すると「トリロバイト」という多足型の生命体として人の体内から生まれる。そのトリロバイトがエンジニアに寄生して生まれた「ディーコン」は、長い頭部と細長い手足、そして二重構造の口を持ち、その容姿は何かを想像せずにはおれない。

『エイリアン:コヴェナント』

最新作『エイリアン:コヴェナント』は、『プロメテウス』と第1作『エイリアン』のミッシング・リンクをつなぐ重要作。この作品で、我々がよく知る“エイリアン”がその姿を現し、それがどのようにこの世に誕生したのかまでが解き明かされる。

『エイリアン』

  • リプリー(シガニー・ウィーバー)

    ノストロモ号に乗船する二等航海士。乗組員らと資源を牽引して地球に帰還する際、エイリアンと遭遇する。仲間たちが次々とエイリアンに殺されていくなか、最後まで生き残り、恐るべき怪物に戦いを挑む。本作ではラストネームのみの表記。

  • アンドロイド アッシュ(イアン・ホルム)

    ノストロモ号の科学・医療主任。エイリアンの捕獲、保護を主張するが、それはウェイランド・ユタニ・コーポレーションの極秘命令であり、彼はその指令をまっとうするための、同社製アンドロイドであることが途中で明らかになる。

  • 乗組員たち

    ノストロモ号にはダラス船長を筆頭とし、一等航海士のケイン、二等航海士のランバートとリプリー、機関士のパーカーとブレット、医療主任のアッシュら7人の乗組員が乗船していた。加えてジョーンズという名の飼い猫も船内にいる。

  • ノストロモ号

    ウェイランド・ユタニ社が所有する巨大貨物船。宇宙資源の輸送を目的とし、巨大な精錬所を牽引している。映画では惑星セダスから2000万トンの鉱石を積み、地球へと向かっていた。

  • ジャガーノート

    惑星LV-426に置き捨てられていた謎の遺棄船。エイリアンの卵の巣窟となっており、この時点では何者の宇宙船で、どのような経緯を経てこの惑星に存在するのかは明らかにされていない。

  • スペース・ジョッキー

    ジャガーノートのコクピットにいた謎の異星人。生体反応はなく、胸部を破られた痕跡があり、化石となっていた。異様な外観は肉体が露出したものなのか、それともスーツを着用したものなのか、この時点では不明である。

  • ゼノモーフ

    ノストロモ号に侵入してきた異星生物。ケインの体内から生まれたチェストバスターが、わずか数時間で2m近くに成長したもの。凶暴な本性を剥き出しにして、ためらうことなく人間を襲う。

『エイリアン2』

  • エレン・リプリー(シガニー・ウィーバー)

    エイリアンに襲われたノストロモ号の唯一の生存者で、ハイパースリープ状態のまま57年間も宇宙を彷徨っていたところを保護される。しかしエイリアンの存在が確認されたことをきっかけに、再び惑星LV-426へと赴くことになる。

  • アンドロイド ビショップ(ランス・ヘンリクセン)

    ウェイランド・ユタニ・コーポレーション製のアンドロイド。スラコ号の操縦を担当する先任将校だが、『エイリアン』におけるアッシュの一件があったために、リプリーは彼に対する拭いがたい疑念を抱えている。

  • スラコ号の乗組員たち

    軍事輸送船スラコ号には、入植者の救助、ならびにエイリアンの殲滅を目的とする宇宙海兵隊員たちと、リプリーの行動を監視するウェイランド・ユタニ社の社員バーグらが乗船し、惑星LV-426を目指す。

  • ジャガーノート

    ウェイランド・ユタニ社により、惑星LV-426の入植者たちは現地探索を奨励され、遺棄船ジャガーノートと遭遇する。だが、それは再び、エイリアンの悲劇を呼び覚ますこととなるのだ。

  • エイリアンクイーン

    産卵をおこない、エイリアンを数多く生み出す女王。種の生存をかけ、リプリーとの一騎打ちを迎える。

『エイリアン3』

  • エレン・リプリー(シガニー・ウィーバー)

    惑星での戦い(『エイリアン2』)の後、スラコ号に紛れ込んでいたエイリアンによって非常事態が発生し、救命艇で監獄の惑星フィオリーナに送り込まれる。ニュートやヒックス伍長ら他の生存者は死亡。生き残った自分は、フィオリーナで囚人たちと共にエイリアンと戦う。

  • アンドロイド ビショップ(ランス・ヘンリクセン)

    スラコ号の非常事態によってリプリーと共に惑星フィオリーナに不時着するが、半壊し、機能停止となる。だが、この惑星からの送信を受けてやってきたウェイランド・ユタニ・コーポレーションの社長によって、このアンドロイドをめぐる衝撃的な事実が明らかになる。

  • 惑星の囚人たち

    惑星フィオリーナの流刑植民地に住む、25人の囚人たち。彼らは全員が凶悪犯だが、悪環境にいる不遇を宗教に頼ることで紛らわしている。お互いに協調性はないが、同地に潜入してきたエイリアンに対し、団結して事態に備える。

  • 流刑工場

    惑星フィオリーナの流刑植民地にある巨大工場。働く受刑者たちの更生と、金属精錬、主に核廃棄物容器用の鉛を造るために存在する。所有はウェイランド・ユタニ社。

  • ドッグエイリアン

    犬に寄生したことで、宿主の遺伝子を受け継いだ形で成長したエイリアン。四足歩行の特性を活かした素早い動きで、蜘蛛のように壁を這い回ることもできる。

『エイリアン4』

  • エレン・リプリー(シガニー・ウィーバー)

    正確には本当のリプリーではなく、惑星フィオリーナに残されていた血液サンプルから生み出されたクローン。エイリアンの特性を併せ持ち、人間離れした体力と、オリジナルのリプリーの記憶を共有している。

  • アンドロイド コール(ウィノナ・ライダー)

    アンドロイドが自らを改良して作り出した新モデル。軍のリコールを受けて回収された数少ない一体で、政府と軍によるエイリアンの悪用を阻止するため、正体を秘密にしてベティ号に乗り込む。

  • 乗組員たち

    民間輸送船ベティ号に搭乗する6人の乗組員たち。彼らは軍のエイリアン実験にまつわる極秘物資をオリガ号に運び入れていたが、エイリアンの脱走に巻き込まれ、クローンリプリーと一緒にオリガ号を脱出しようとする。

  • 『エイリアン3』から200年後となる本作の時代では、ウェイランド・ユタニ・コーポレーションは買収され、同社と契約を結んでいた軍が独立。有事のさいの秘密兵器やワクチンの開発など、政府と結託してエイリアンの研究を進めている。

  • ニューボーン

    卵を産まない、生殖機能を持つエイリアン・クイーンから誕生した新生命体。クイーンを殺し、クローンリプリーを母親とみなして、脱出寸前のベティ号まで彼女を追う。

『エイリアン vs プレデター』
『AVP2 エイリアンズ VS.プレデター』

「AVP」シリーズは、お馴染みのエイリアンや聞き覚えのある名前のキャラクターが登場しはするが、番外編的なスピンオフと見なした方がいいだろう。ここまで確認してきた「エイリアン」正伝シリーズと明らかに食い違う設定があり(エイリアンが古代マヤ文明の地球に存在した、ウェイランド社長が21世紀の人、etc)、これを「エイリアン」シリーズのタイムラインにそのまま持ってくると矛盾をきたすことになるからだ。

年表

エイリアン史を時系列に沿って俯瞰すると、その起源や人類が犠牲となるプロセスは悲劇を超え、もはや壮大の一語に尽きる。試験には出ないが、シリーズへの理解を深めるために、ここはぜひとも把握しておきたい。(注/ネタバレを含みます)
【紀元前32〜20億年前】
■エンジニアが巨大宇宙船ジャガーノートに乗って地球に到来。自分たちのDNAを地表に蒔き、人類の誕生をうながす。
(プロメテウス)
【紀元前35000年】
この頃、エンジニアが人類とコンタクトをはかり、文明を授けていたことが当時に描かれた壁画から判明。
(プロメテウス)
【西暦2023年】
■ウェイランド社のピーター・ウェイランド社長が、TED(テクノロジー・エンタテインメント・デザイン)カンファレンスで講演。アンドロイドの商品化と惑星の植民地化を推し進めるイノベーターとして注目される。
(プロメテウス〈宣伝プロモーション映像〉)
【西暦2089年】
■エリザベス・ショウ博士、スコットランドの古代遺跡で星図を発見する。
■ショウ博士らの乗ったウェイランド社のプロメテウス号が、惑星LV-233に向けて出発する。
(プロメテウス)
【西暦2093年】
■プロメテウス号、惑星LV-223(LV-426)に到着。調査を始めるが、エンジニアの開発した生物兵器(エイリアンの雛形)に次々と殺されていく。
(プロメテウス)
【西暦2094年】
■ショウ博士とアンドロイドのデヴィッドの乗船したジャガーノートがLV-223を脱出。ここに来てはいけないという信号を発信させる。
(プロメテウス)
【西暦2104年】
■オリガエ−6に向かう途中の入植船コヴェナント号がニュートリノ・バーストの事故に遭い、ジェイコブ船長以下47名が死亡。
■コヴェナント号、「カントリー・ロード』を奏でる謎の発信音を傍受。発信元を探ったところ、移住可能な惑星の存在を確認する。
■コヴェナント号の乗組員は調査のため、LV-426に降り立つが、現地で謎の生物=エイリアンの襲撃を受け、同惑星を脱出したはずのデヴィッドと遭遇する。
(エイリアン:コヴェナント)
【西暦2124年】
■宇宙貨物船ノストロモ号、地球への帰還航行中、発信者不明の信号を傍受。針路を変更し、発信先の惑星LV-426に調査のため着陸。
■LV-426でノストロモ号の乗組員は、ジャガーノートと化石状の巨人(スペース・ジョッキー)を発見。
■調査時に乗組員のケインがエイリアンに寄生され、彼の体内から出てきたエイリアンが乗組員を次々と殺害。
■最後に残ったリプリーがエイリアンを排除し、地球への帰還のためハイパースリープに入る。
(エイリアン)
【西暦2159年】
■ウェイランド・ユタニ社が惑星LV-426に開拓者を移住させるが、少女ニュートの一家がエイリアンと遭遇し、彼女の父親が寄生されてしまう。
(エイリアン2)
【西暦2179年】
■宇宙空間を彷徨中の避難船ナルキッソス号が発見され、ハイパースリープ状態のリプリーが無事に保護される。
■通信が途絶えた惑星LV-426に調査のため、ウェイランド・ユタニ社が顧問としてリプリーと宇宙海兵隊を送り込む。
■任務遂行中の宇宙海兵隊がエイリアンの奇襲を受け、植民での籠城を余儀なくされる。そして激しい攻防戦を繰り広げ、リプリーと開拓団の生存者ニュート、宇宙海兵隊のヒックス伍長ならびにアンドロイドのビショップが生き残り、ドロップシップで脱出する。
(エイリアン2)
【西暦2270年】
■リプリーの乗る宇宙船スラコ号が、フィオリーナ161流刑惑星に墜落。そのさいニュートとヒックス伍長が死亡し、アンドロイドのビショップは機能を維持できなくなる。
■宇宙船に潜んでいたフェイスハガーによって新種のエイリアンが誕生し、囚人たちはエイリアンとの戦いを強いられる。
■ウェイランド・ユタニ社は現地にビショップと同型のアンドロイドを送り込み、体内に幼虫を宿していたリプリーを捕らえようとするが、リプリーはエイリアンもろとも溶鉱炉に身を投げる。
(エイリアン3)。
【西暦2470年】
■宇宙船オリガ号内で、リプリーのクローンが再生される。DNAはエイリアンによるバイオ兵器開発をもくろむ軍が、流刑惑星フィオリーナでエイリアンから採取したもの。
■リプリーと共にエイリアンも復活し、乗組員の多くが犠牲となる。リプリーはかろうじて生き残った宇宙貨物船ベティ号の乗組員たちと共に戦い、そしてエイリアンに占拠された船内から脱出し、地球へと向かう。
(エイリアン4)
尾崎一男(おざき・かずお)
映画評論家&ライター。主な執筆先は紙媒体に「フィギュア王」「チャンピオンRED」「映画秘宝」、Webメディアに「ザ・シネマ」「映画.com」などがある。併せて劇場用パンフレットや映画ムック本、DVD&Blu-rayソフトのブックレットにも解説・論考を数多く寄稿。また“ドリー・尾崎”の名義でシネマ芸人ユニット[映画ガチンコ兄弟]を組み、TVやトークイベントにも出没。

■参考文献・資料(発行順)
季刊シネフェックス3『エイリアン』バンダイ(1984)
H・R・ギーガー/田中克己 訳『ギーガーズ・エイリアン』トレヴィル(1986)
ロードショー11月号第一付録『エイリアン2大全集』集英社(1986)
DON SHAY“cinefex 27 ALIENS”(1986)
ザ・テレビジョン臨時増刊『エイリアン2』角川書店(1986)
CINEFEX 1『エイリアン3』トイズプレス(1993)
アンドリュー・マードック&レイチェル・エイバリー/石川順子・訳『メイキング・オブ・エイリアン4』ソニーマガジンズ(1998)
CINEFX18『エイリアン4』トイズプレス(1998)
アレック・ギリス&トム・ウッドラフ・Jr./村上清幸 訳『エイリアンvs.プレデターメイキングブック ーADIのクリーチャー・エフェクトー』エフエックス(2004)
レベッカ・キーガン/吉田俊太郎 訳『ジェームズ・キャメロン 世界の終わりから未来を見つめる男』フィルムアート社(2010)
イアン・ネイサン/富永和子 他 訳『エイリアン・コンプリートブック』竹書房(2011)
ポール・スキャンロン&マイケル・グロス/池谷律代 訳『ブック・オブ・エイリアン』小学館集英社プロダクション(2012)
マーク・サリスバリー『プロメテウス アート・オブ・フィルム』ヴィレッジブックス(2012)
シネフェックス日本版NUMBER26『プロメテウス』ボーンデジタル(2012)
H.R.Giger“ALIEN DIARIE 7|8”PATRICK FREY(2013)
マーク・ソールズバーリー『エイリアン|アーカイブ』ボーンデジタル(2014)
SIMON WARD“ALIENS THE SET PHOTOGRAPHY”TITAN BOOKS(1016)

■映像資料(リリース順)
スペシャルコレクションLD『エイリアン』パイオニアLDC(1995)
スペシャルコレクションLD『エイリアン2 完全版』パイオニアLDC(1992)
Blu-ray『エイリアン・アンソロジー』20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン(2010)
Blu-ray『エイリアンVS.プレデター』20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン(2012)
Blu-ray『AVP2 エイリアンズVS.プレデター』20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン(2012)
Blu-ray『プロメテウス 4枚組コレクターズ・エディション』20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン(2012)
  • プロメテウス新録吹替

  • シリーズ概説

  • 四監督論

  • 年表・相関図

  • 生体図鑑

  • AVP

  • プレゼント

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