【連載53】サイボウズ社Sakitoさんが語るエンジニアコミュニティ活動で得た成功体験

こんにちは!TECH Street編集部です。

連載企画「ストリートインタビュー」の第53弾をお届けします。

「ストリートインタビュー」とは

TECH Streetコミュニティメンバーが“今、気になるヒト”をリレー形式でつなぐインタビュー企画です。

企画ルール:
・インタビュー対象には必ず次のインタビュー対象を指定していただきます。
・指定するインタビュー対象は以下の2つの条件のうちどちらかを満たしている方です。

“今気になるヒト”佐藤さんからのバトンを受け取ったのは、サイボウズ社 Sakitoさん。

ご紹介いただいた古川さんより「Sakitoさんを推薦します。若手だと思っていたらあっという間に技術組織を牽引するような立場になり、キャリアの話を聞いてみたいと思ったためです。あとよくイベントで一緒になるのですが、毎回技術の話ばかりしててキャリアの話は聞いたことがないなと思ったからですね。」とご推薦のお言葉をいただいております。

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Sakito さん

サイボウズ株式会社 開発本部 kintoneプラットフォーム プロダクトデザイン部 部長/フロントエンド 副部長 

2019年サイボウズに中途入社。フロントエンドエキスパートチームに所属し、2022年にはデザインシステムチームを立ち上げ、2023年から2024年にかけてkintoneのデザイン責任者とデザイン室のリーダーを務める。2024年からはプロダクトデザインとフロントエンドのマネージャーとしてプロダクトと全社のデザイン組織づくりやプロセスの改善を手がける。

 

エンジニアとしてのSakitoさんの原点

ーーまずは、現在のSakitoさんを形作る原点をお聞かせください。

Sakito:2015年に新卒でSESの派遣営業をしている会社に入社しましたが、そこを退職した後、スタートアップのIT企業に入社しました。そのスタートアップでは、営業からマーケ活動、採用などいろんな業務を担当させてもらったのですが、その中で、コーダーとしてwebサイト制作をすることになり、それがエンジニアとしての原点だと思います。

 

ーーそれまでwebサイト制作の経験はあったのでしょうか?
いえ、ありませんでした。私が入社したときにWeb制作の案件が来て、人手が足りないということで、たまたまコーダーとして働くことになったのです(笑)
未経験の素人でしたが、動画教材を見ながら、実際に手を動かしてwebサイトを作りました。試用期間の3か月までにやらなければクビになると思い「なんとしてもやらなければならない」という背水の陣で臨みましたね。


ーー未経験の状態からいきなり、エンジニアとしてはたらくのは大変ではありませんでしたか?
最初の方は、できなくて怒られることも多かったので、エンジニアを続けることに不安がありました。しかし1年ほど経ち、徐々に知識の点と点が繋がり、楽しくなってきました。

広島から東京のエンジニア勉強会に参加し、学んだことを広島に伝える

ーーどのようにして、エンジニアとしての知見を広げられたのでしょうか?

当時は私は広島に住んでいたのですが、月に2~3回ほど、東京の勉強会に広島から行っていました。東京の勉強会で学んだことを社内勉強会を開いてアウトプットしたり、広島でもエンジニアのコミュニティがあったので勉強会を自ら開いて、東京で学んだことをアウトプットしました。

あるテーマの勉強会に参加する時は、そのテーマに詳しい人に聞きに行ったり、もしくは、勉強会を開催する時は、そのテーマに詳しい人を呼ぶ、ということしていました。そこで知らない知識を学んだり、社外のコミュニティを作って学ぶことができたので楽しかったです。

 

ーーコミュニティ活動をしよう、と思われたきっかけはなんだったのでしょうか?
最初はネット記事で「東京にエンジニア勉強会というものがあるんだな」と知り、興味を持ったので東京のコミュニティに参加しました。そしたら「自分の知らないことをこんなに教えてくれる人がいるのか!」と驚きました。

当時、広島でもエンジニア勉強会はあったので、それなら「自分の学びたいことを聞ける場をつくればいい」と思い、自ら開催するようになりました。自分で勉強会を開催したことで、知識を得られただけでなく、素晴らしいのエンジニアの方々とたくさん知り合うことができたので、それも財産だと思っています。

スタートアップ企業から、規模の大きな会社でエンジニア経験を積むため、ヤフーへ入社

ーーSakitoさんは、その後どのようなキャリアを歩まれたのですか?

スタートアップの次は、大規模な会社で働きたいという想いが湧き、ヤフー株式会社に入社しました。
ヤフーに入社した背景として、スタートアップの会社で働いていた時は、社長と採用基準や人事制度など一緒に考え、試行錯誤していたのですが、「大規模な会社ではどうやっているのだろう?」や「規模の大きな会社でエンジニア経験を積んでみたい」という想いが湧いたためです。
そして、Webエンジニアを募集していて、大規模な事業に関われる会社を受け、ヤフーに入社することができました。

 

ーーヤフー入社後の環境やどういった役割だったかなどをお聞かせください。
ヤフーでは、デザイン部のフロントエンドのチームに所属し、toB向けの広告入稿システムを担当しました。技術範囲としてフロントエンド周りが中心でしたが、自分と同じような領域に興味がある人が何百人といる環境だったので、刺激がありました。

また、入社してすぐに新卒に教える機会がありました。人に説明するというは自分の中で、しっかり言語化しないといけないので「なぜこの技術とこの技術は違うか」などと、人に説明する力がつきました。

社外の活動では、東京のエンジニア勉強会に参加するだけではなく「登壇したい!」と、思うようになりライトニングトーク(LT)を週に2~3回ほどするようになりました。「LTで話すためにインプットする」そして「LT登壇でアウトプットする」という、 サイクルを1年以上続けていました。すると、勉強会に参加されている優秀なエンジニアの人たちが「ここの技術は、いまこうなっているよ」などと指摘してくれたりすることも増え、業務にも活かすことができるようになりました。

エンジニア勉強会に登壇することで生まれた好循環

ーーエンジニア勉強会にとても献身的なSakitoさんですが、「登壇したい」「開催したい」という思いはどこから生まれるのでしょうか?

広島で自ら勉強会を開催して、そこで得た成功体験が大きいです。自ら登壇すればいろいろな人とコミュニケーションをとることができて知識がブラッシュアップされていきます。
また、自分が興味あることを発信すると、自分と同じ興味のある人が集まってきてくれるので、楽しいです。それと、人と知り合う以外にも「雑誌に寄稿しないか」など、いろんな方面で声がかかるようになったのもやり続けられる源になったと思います。


ーーエンジニア勉強会に参加することで、本業に活かせることはあるのでしょうか?
元々は、本業のためというよりも自分のためではありましたが、本業にも結果的に活きていきました。僕のチーム以外のヤフーの社員が、私の登壇をみて「この前言っていたのやろうよ」と、声をかけてくれるなど社内でも関係性ができたのが大きかったです。また、勉強会登壇を通して社内の人にも知識を還元できたと思います。

サイボウズに入社した経緯とは

ーーその後、現在のサイボウズの入社はどのような経緯だったのでしょうか?

社内外のコミュニティ活動を通して、サイボウズのフロントエンドエキスパートチームの人たちと知り合う機会があり「すごく楽しそうだな」「ヤフーとはまた違った環境の会社で働いてみたい」という想いが湧き、サイボウズの方に誘っていただいて入社しました。

誘っていただいた2名の方は、現在の開発本部長とReact界隈で有名な方なのですが、その方々と一緒に働けるのが楽しそうだな、という思いがありました。

「ヤフーとはまた違った環境の会社ではたらいてみたい」という想いの背景には、ヤフーのような大規模な会社では、ボトムアップからの提案に、素早く動くことが難しい場面がどうしてもあるかと思います。そのため、次に挑戦する会社では、スタートアップと大規模企業の中間くらいの規模で、ある程度自分で裁量権を持って働きたいという気持ちがありました。


ーー入社後にはどのようなお仕事をされてきましたか。
入社後フロントエンドエキスパートチームに2年ほど在籍しましたが、その間にフロントエンドの刷新プロジェクトが始まり、デザインシステムチームのプロジェクトオーナーを任されることになりました。また、サイボウズ全体のデザイン室も立ち上げました。
現在は、主務としてkintoneのプロダクトデザイン部の部長、さらにプロダクトデザイン戦略部の部長、フロントエンドの副部長とデザイン室のリーダーをやっています。
とにかく働く人たちにとって、どれだけチャレンジングで成長できる環境や未来を用意できるかが私のミッションだと自覚しています。何かを作っていくことであったり、やりたいことややるべきことを見つけ、実行するのはメンバーに任せます。人・モノ・お金を動かすなど、メンバーだけで解決することは難しい部分を私が担い、メンバーが楽しいと思えるデザインや技術を活かせる環境を作り、戦略を立てる、というのが期待されている部分だと思っています。


ーーSakitoさんをご紹介してくださった古川さんから質問を預かっています。「開発マネジメントとして何を大切にしているのでしょうか。」そして「フロントエンドのICをやり続けるのは難しいと感じているか?」についてもお聞かせください。

エンジニアとデザイナー、どちらのマネージャーもやっていますが、両方ともメンバーには、モノづくりに対して集中をしてほしいと思っています。メンバーにはモノづくりに最大限の力を発揮してもらいたいため、それを上へ伝える交渉などは私の役割だと思っています。例えば経営陣や開発の人以外に、なぜやっているかを通訳するなど、きちんとメンバーの仕事を伝えることを意識しています。
フロントエンドのICを続けることは自体はできると思っていますが、「IC=コミュニケーションをとらず、自分のつくりたいものをつくるだけでいい」という話ではないと思っています。
フロントエンドの人は、インターフェースを作っているので、バックエンドやデザイン、PMなどの意見をまとめる役割になりやすいと思っています。そのため、フロントエンドのICを続けるためには、そういったコミュニケーションスキルは必要かと思います。

どの会社に行っても活躍できる人材になる、という意識を持って働く

ーーありがとうございました。最後に、これからの時代にエンジニアとしてどのように立ち回るべきか、読者に向けてメッセージをお願いします。

実を言うと、私は当初マネージャーをやりたくないと思っていた人間です。なぜなら、マネージャーになればコードが書けなくなるから楽しくない、という考えがあったからなのですが、今は考えが違います。

これまでの全ての経験において、どんなことでもやりがいは見つけられますし、やってみたら楽しいことがあります。ITという「変化が目まぐるしい業界」にいるのですから、「これしかやりたくない」と頑固になると自分の可能性を狭めてしまいますので注意が必要です。

それと、これは常に自分自身も意識していることなのですが「自分が今の会社ではなくて、どの会社に行っても活躍できる人材でありたい」ということは考えています。この意識は、みなさんも持っておくと良いかと思います。

 

ーー貴重なお話をありがとうございました。それでは、次回の取材対象者をご紹介いただけますか。

microCMSの柴田さんをご紹介します。microCMSを立ち上げた方ですが、もともとヤフーで働いていた時の同僚です。柴田さんには、会社をつくる中でやってよかった点と失敗したなという点をエンジニア視点で語っていただきたいです。エンジニアが会社を作って成功させたのは珍しいと思うので、ぜひお聞かせいただければと思っています。

 

以上が第53回 サイボウズ株式会社 Sakitoさんのインタビューです。
ありがとうございました!
今後のストリートインタビューもお楽しみに。 

 

(取材:伊藤秋廣(エーアイプロダクション) / 撮影:古宮こうき / 編集:TECH Street編集部)

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