芸能人はいつまでも若くいるのが仕事、
戦国武将は天下統一するのが仕事
松田聖子さんは野心家か?
ひとりさんはマイクを手にとって話を始めた。
「この前、テレビを見ていたら、『女性で一番、野心家は誰ですか?』っていうアンケートをとっていたんだよね。
そしたら、ほとんどの人が『松田聖子さんです』って答えていたんだよ。
だけど俺が思うに、松田聖子ちゃんって、何歳になっても綺麗でいたいんだよな。
50代でも、30代に見られていたいから、聖子ちゃんはものすごく努力しているんだよ」
一人さんの口から、いきなり松田聖子ちゃんの話が出たので驚いた。
私はテレビで見る聖子ちゃんを思い浮かべた。
確かに聖子ちゃんは驚異的に若くて可愛い。
あのスタイルを維持するために、運動だってしているだろう。
顔の筋肉を衰えさせないためにも、表情筋を鍛えたりもしているんだろう。
一人さんは話を続けた。
「聖子ちゃんみたいに、『いつまでもキレイでいたい』っていう目標に向かって努力する人を、世間では『野心家だ』って言うんだよ。
でも、聖子ちゃんは自分の夢に向かって、行動しているんだよね。
『いつまでもキレイでいたいわね』って言いながら、何もしていない人は、ただ夢見てるだけなんだよね。
あのね、この世は戦場なんだよ。
自分の目標に向かって、行動して、夢を実際に叶えようとする人にとっては、日々、戦いなんだよ。
芸能人だったら、『いつまでも若く、綺麗でいたい』って思って、それに向かって行動することが仕事なんだよ。
戦国武将だったら、天下統一することが仕事なんだよ。
それをやらないやつの方が、おかしいんだよ」
そこでひとりさんは一旦話を切って、皆の方を向いて、こう言った。
「いいかい?
夢に対して実際に行動する人間を野心家って言うんだよ。
だから野心は持った方がいいんだよ。
押し出し持って、野心持って行動すると、この世の中が面白くてしょうがなくなるからな。
人生、面白くないやつは、押し出されているんだよ。
ただ、叶いもしない夢を見ているんだよ。
『夢なんか、叶うものじゃない』って言いなが、人生諦めていくんだよ。
わかるかい?
押し出すの。
それから野心持って、毎日、少しずつでも努力していくんだよ」
「・・・・・・」あまりのひとりさんの迫力に、店内は一瞬、静まり返った。
でも次の瞬間、「ひとりさん、俺やります」「私も、今日から野心もちます」とお客さんから、次々と声が上がった。
一人さんの話は、人の心を動かす。
一人さんの話をほんの3分聞いただけで、「よおし、やるぞ」というような思いが突き上げてくる。
私の心も、熱く煮えたぎっていた。
「自分の夢に向かって、実際に行動する人を、野心家という」
ひとりさんのこの言葉に超納得した。
今まで野心家と言うと、なんかギラギラして、心に企みを持っていて、損得勘定で行動するような人だと思っていた。
でも、真の野心家は動的で諦めない人。
人が何を言おうとも、自分の人生を思う存分生きる人。
私も、目標に向かって、常に努力していく、野心家でありたい。
私はまた、心のネジをしっかりと締め直した。
「押し出しちゃいけない」と言っている人も、成功していない
ひとりさんは再びホットプレートの前に立つと、こういった。
「よし、今日はリッチ焼きをやるぞ」
お客さんから、「やった」と一斉に喜びの声が上がる。
リッチ焼きというのは、一人さん独特のお好み焼きのような料理だ。
ちなみにこの料理の名も、一人さん独特のジョークからつけられた。
リッチー焼の他にも、「ファンの会」では、プラスチックのお皿のことを「プラチナの皿」と言ったり、紅しょうがのことを「赤いキャビア」と言ったりする。
ひとりさんがそういうたびに、お客さんは大爆笑。
常連さんになるとひとりさんが「プラチナの皿持ってきて」とか「赤いキャビアちょうだい」と言った途端に、プラスチックの皿を取ってきたり、紅しょうがをさっさと渡せるようになる。
ひとりさんとお客さんの間で、そんなゲームのようなジョークが飛び交うのも、「ファンの会」ならではのお楽しみである。
ひとりさんは手際よくリッチ焼きを作り始めた。
リッチ焼きの具は、なんとキャベツと紅しょうがだけ。
それを、多めの水でゆるく溶いた小麦粉に混ぜる。
太白ごま油をたっぷり引いたホットプレートに金を流し入れ、こんがりと焦げ目がつくまで焼いていく。
「リッチ焼のおいしさのポイントは、シンプルで味が綺麗なこと。
タネは、小麦粉だけで作った方が絶対にうまいんだ」
私はこれを最初に聞いた時、「え~、そうかな?」と密かに思った。
だって、具材はキャベツと紅生姜だけ。
肉もイカも入っていないお好み焼きなんて。
せめてかつおだしでも入れた方が、おいしくなりそうなものだ。
でも、焼きあがったリッチ焼きを食べてみて、びっくりした。
カリッと焼いた生地は香ばしくて、キャベツの甘みとさっぱりした紅しょうがが効いていて、何枚でも食べられる。
私が今まで食べたお好み焼きの中で、一番美味しい。
やっぱり、ひとりさんは美味しいものをよく知っている。
ひとりさんは「これとこれを掛け合わせたら、絶対に美味しくなる」ということが本能的にわかるそうだ。
そしていつもこういう。
「料理っていうのは、シンプルに調理した方が絶対にうまいんだよ。
キャベツにはキャベツの、紅しょうがには紅しょうがのうまみっていうのがあるんだよな。
それが神様が作ってくれたら、『神の味』なんだ。
それぞれの個性を活かして料理していると、すごく美味しいものができる。
だからリッチ焼きには、むやみに出しなんて入れてはダメ。
水と小麦粉だけがいいんだよ」
一人さんの話は、雑談ですから、間の取り方、ユーモアセンス、ジョーク、どれをとっても楽しくて、ためになる。
ひとりさんは再びマイクをとる、「ファンの会」の店長のかんちゃんの方を向いて、こういった。
「いいかい、かんちゃんは塾長だから、みんなを幸せにしていく先生なんだよな。
その塾長が押し出されているようだったら、熟生も押し出されちゃうんだよ。
塾長とか、先生とか、人を引っ張っていく立場の人は、意識して押し出ししなきゃダメなんだよ。
指輪をつけたり、ヴィトンのバッグを持ったり、ローレックスの腕時計をしたりね。
それで貯金ができたら、赤いベンツでも買って、さっとお店まで乗り付けていく。
そうすると、それを見たお客さんが、『こんなすごい人から買うんだ』って、びっくりして感激するよね。
わかるかい?
お客さんが一歩下がるぐらい、押し出すんだよ。
そうやって、押し出しをしながら、お客さんには、とことん丁寧に優しくする。
そのギャップで、お客さんが惚れ惚れするんだよ」
かんちゃんは力強く、「はい、ひとりさん。僕、押し出します」と答えた。
ひとりさんは話を続けた。
「みんなもね、相手に押し出されちゃだめだぞ。
俺がなんでこんなことを何度も言うかって言うと、みんなは『星出しちゃいけない』って育てられているんだよな。
『目立っちゃいけない』とか、『派手にしちゃいけない』とか、
『高そうな物をつけたら、成金みたいで品が悪い』とか、そういう風に言われてきただろう?
だけど、そう言っている人も、成功していないんだよな。
言っていることが正しかったら、その人は成功しているはずだよな。
言っていることが正しくないから、成功していないんだよ」
「あ・・・・・」私はひとりさんの言葉を聞いて、長年の疑問が解けたような気がした。
実は私の母も、「あんた、目立ちすぎる服装はよしなさいよ」とか、
「清楚で品のいい格好をしているのが一番なのよ」とか、ずっとそう言われてきた。
でも、母には悪いけれど、そういう母は、何か授業で成功を成し遂げたわけではない。
母に、その教えを教え込んだおばあちゃんだって、成功しているわけではない。
一見、突拍子もないようなことを言っているように見えるひとりさんは、事実、ぶっちぎりで生涯納税額日本一の大富豪なのだ。
一人さんの言うことは、全く常識とは違ったところにあるから、最初は驚くようなことばかりだ。
でも、私は、子供の頃からひとりさんを信じていた。
そして一人さんの言う事を実際にやってみたら、あれよあれよという間に、「成功者」と呼ばれる立場になっていく自分がいる。
「ひょっとして、今世間一般で言われている常識と、『真の幸せになる方法』は、全く別のものなのかもしれない」私は密かに頷いた。
一人さんの言うことが、世間一般の常識からずれていようと、普通の人からすると過激なことであろうと、私の心は決まっている。
ひとりさんを信じて、何があっても最後までついていく。
一つ確実に言えることは、一人さんが教えがなかったら、私は今よりずっと不幸の道を歩いていたということだ。
ニコニコしながら、リッチ焼きをみんなに進めている、日本一の大実業家を見ながら、私はそんなことを考えていた。
追伸 押し出ししないままでいると、退場が待っている!
一人さんは新小岩の住宅街を、すたすたと歩いて行った。
そして、繁華街に入る。
私はとにかく、ひとりさんの後を追っていった。
すると、繁華街に「餃子の王将」があった。
ひとりさんはその看板を指さして言った。
「みっちゃん、この看板、よく見てごらん」
私は「餃子の王将」の看板をじっと見て、「餃子の王将ですよね」と言った。
この看板から、ひとりさんは何を言いたいのか、さっぱり分からなかった。
「あのね、みっちゃん。
『餃子の王将』って、餃子も美味しいけれど、王将ラーメンとか、焼きそばとか、ニラレバ炒めも美味しいよね」
「はい、美味しいですね、ひとりさん・・・・・・」
ひとりさんが何を教えようとしているのか、ますますわからない。
「でも、看板には『餃子の王将』としか書いていないよね。
これって何でだと思う?」
「さあ、何ででしょう」私は突然の首をひねった。
そんなこと、考えてみたこともなかった。
「それはね・・・、その方が目立つし、お客さんに覚えやすいからだよ。
要は、これも押し出しなんだよ」
ひとりさんは私の持っていた水を飲みながら、こんな話を始めた。
「『餃子の王将』っていう看板を見て、お客さんは『そうだ、餃子食べたいな』と思ってお店に入るよね。
そうすると、お店のメニューには、いろんな料理の名前が書いてある。
それを見て、『あ、ラーメンも美味しそう』『あ、焼きそばも美味しそう』『うわあ、レバニラもあるんだね』となるんだよ。
それで『餃子と一緒に、他のメニューも頼んでみよう』という気持ちになる。
この流れがいいんだよ。
物を売る時は、売りになるもの、ひとつに絞って押し出すんだよ。
その方が、お客さんは覚えやすいし、わかりやすい。
わかりやすいことが、お客さんへの最高の親切なんだよ。
だから、売りになるものをひとつ選んで、でっかく目立つように看板に書く。
これも押し出しなんだよ」
「うわあ、そうだったんですね!
だから『餃子の王将』って書いてあるんですね」
私はようやく、一人さんの言いたいことを理解した。
今まで気がつかなかったけど、「王将」の看板にはそんな工夫がなされていたんだ。
ひとりさんは話を続けた。
「こうやって『餃子の王将』は押し出しているんだよ。
そうすると、お客さんの記憶に残るよな。
お客さんに、お店の存在を覚えてもらおう。
これが商いの第一歩だよね。
一番いけないのは、『あそこにお店があった気がするけど、なんだったけな・・・・』って、お客さんの記憶に残らないことなんだよ。
よく『お店がなくなっちゃったけど、何のお店か覚えていない』っていうのがあるよな。
あれ、すごく悲しいよな。
あれってね、実は『退場』って言って、神様に退場もらったんだよ」
「神様に退場をもらった?
それってどういうことですか、ひとりさん?」
聞きなれない言葉を耳にして、私は目を丸くして、思わず一人さんに問いかけた。
私は全身の力を耳に集中させて、一人さんの言葉を待った。
斉藤一人さんのお話を纏めました。
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