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- 2024/05/08 掲載
「偽造マイナンバー」で増えるSIMハイジャック、個人情報を守るために“やるべきこと”
「偽造マイナンバー」による詐欺事件が増加
ある都議会議員が「スマートフォンを乗っ取られた」という注意喚起的なポストをXに投稿した。所持していたスマートフォンの契約キャリアを切り替えられ、身に覚えのない支払いやパスワード変更通知を受け取ったという内容だ。一連のポストによると、家族も同じ被害に遭い、ショップや当局への相談・通報などを行ったという。現在、スマートフォンやSIMの契約は、本人以外が行うことは非常に困難となっている。原則として店頭などで本人確認ができない限り、新規の契約はできないようになっているのだ。
その本人確認にマイナンバーカードを使うことが増えているのだが、今回の事件では「偽造したマイナンバーカードが利用されたのでは?」という推理や主張がソーシャルメディアで話されている。
実際、この事件の前に、労務管理クラウドサービスで15万件以上の情報漏えいインシデントが発覚している。そこには、マイナンバーカードの情報も含まれていたといい、このような事件も、マイナンバーカード偽造説を補強したかもしれない。
もう一件、気になる事件が3月に起きている。札幌市で70代の女性が、1,400万円もの詐欺被害にあったというものだ。「口座情報が漏れている。悪用されたので口座を凍結する。こちらの自分名義の口座(インターネットバンキング)にお金を移してくれ」という指示に従い自分名義の口座に送金したところ、その口座は無断で開設されたもので自分ではアクセスできず詐欺とわかったのだという。
この事件でも偽造したマイナンバーカードが利用されたのではないかといわれている。マイナンバーカードの累計発行枚数は9000万枚を超え、死亡廃止分を引いても人口比率70%に達している。金融機関などでも本人確認にマイナンバーカードを使うところが増え、その悪用は広がりつつある。
なぜ?マイナンバーカードが悪用される理由
先に挙げたような事件は、マイナンバーカードの脆弱性や欠陥が原因の1つといわれている。メディアやネットで、簡単に偽造できてしまうカードを本人確認に使うことへの疑問や批判を見ることも珍しくない。
だが、事件の本質はマイナンバーカードの仕組みや機能の問題ではない。たしかに、スマートフォンの契約やインターネットバンキングの口座開設に偽造したマイナンバーカードが利用された可能性は高い。
しかし、ここでいう偽造は、下手をするとただのコピー機でコピーしたようなもので「偽造」と呼べるような代物ではない。生のクレジットカードや偽造パスポートがアンダーグラウンドマーケットで普通に売られている時代だ。マイナンバーカードも券面の印刷情報だけならいくらでも偽造、模造する方法がある。
事件の原因は、本来ICチップの中身の情報で本人確認すべきところを券面の名前や番号、顔写真を目視、またはシステムによる単純な画像比較で済ませているところにある。
このレベルの偽造は、運転免許証や健康保険証でも簡単で、マイナンバーカードを使わないようにしても防げる詐欺ではない。
つまり、悪いのはマイナンバーカードではなく、その使い方や運用方法だ。上記2件のインシデントでNGとすべきは、マイナンバーカードの目視確認だけで契約や口座開設を許してしまうショップやオンラインバンキング口座のシステムである。ここを間違えると正しい問題解決にならず、犯罪者を利するだけだ。 【次ページ】誤ったKYCがなりすましの「抜け穴」に
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