パナマ文書の衝撃

「タックスヘイブンはもう古い」と金融のプロはせせら笑った 租税回避とマネーロンダリングの主流はいま…

パナマ文書のリストが公表されたICIJのホームページ
パナマ文書のリストが公表されたICIJのホームページ

アイスランドの首相が辞任するなど、タックスヘイブン(租税回避地)の実態の一端を暴き、世界中に波紋を広げているパナマ文書だが、「大した情報ではない」との見方も金融関係者の間では根強い。パナマ文書に記載された名前は、報道した国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)も認める通り、大半は合法な用途で使ったとみられている。金融業界のプロは「悪事を隠す方法はいくらでもある」として、パナマ文書以上に深い闇を語り始めた。

怪しい名前がぞろぞろ

指定暴力団幹部の親族が名前をつらねる企業の役員、資本のハイエナとも呼ばれる金融ブローカー、準暴力団関係者…。10日にICIJが公開したパナマ文書のデータベースからは、日本人だけでもさまざまな名前が現れる。

いずれも、タックスヘイブンとして有名な英領ヴァージン諸島やアフリカ東部沖の島国セーシェルなどに設立された会社の実質所有者や株主。国内の市場で相場操縦などさまざまな経済事件への関与を取り沙汰された人物らが、タックスヘイブンを巧みに使ってきたことがうかがえる。

データベースによると、2014年3月にセーシェルで設立された会社の株主は、川崎市在住の男性。捜査関係者によると、この男性が役員を勤めていた川崎市の会社は、指定暴力団稲川会最高幹部の親族が一時、役員に名を連ねており、暴力団と関係が深いとみられる。

パナマ文書のデータベースで出てくるのは名前だけではない。10年以上前に東京地検特捜部が相場操縦容疑で摘発した経済事件で、対象となった企業の株式取得に使われた英領バージン諸島の会社の名前も記載されていた。

ほかにもグレーな企業御用達となってきた会計事務所と同名の会社など、経済事件で取り沙汰された関係者や関係会社がちらほら見られる。

最近の主流はミクロネシア

「金融取引でタックスヘイブンを使うのは当たり前のこと。罪に問われることはなく、騒いでいるのは素人だけ」

外資系証券会社のトップを長く務めた元幹部は、今回の騒動をそう切って捨てる。ICIJも、名前が載っていたからと言って違法行為に手を染めているとはかぎらないことをパナマ文書のデータベースにも明記している。

そもそも、タックスヘイブンに会社を設立しても、いまの日本の税法では「タックスヘイブン対策税制」があり、企業が法人実効税率20%以下の租税回避地につくった実体のないペーパーカンパニーについて、課税もできる。

無論、設立をだまっていれば隠すこともできなくはないが、元幹部は「そもそも日本の税制は解釈の幅が大きく、なんでも当局との交渉で進む。万が一、設立を隠していた人がいたとしても、税の申告漏れ程度のあつかいにしかならないのではないか」と分析する。

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