世界有数の過密空港として知られる羽田空港で2日に起きた日航機と海上保安庁の航空機の衝突事故。国土交通省は3日、日航機と海上保安庁の航空機、管制官との交信記録を公表した。交信そのものに大きな問題は見られないが、実際には海保機が滑走路まで進んで衝突事故が起きており、海保機の機長(39)が、管制官の指示をどうとらえたかが今後の焦点となりそうだ。
国交省によると、管制官は滑走路ごとに担当が割り当てられ、地上から航空機に対し、英語で指示や許可を与える。滑走路と駐機場の間の走行を担当する管制官も別におり、細分化されている。事故が起きたC滑走路は当時、2人の管制官が担当し、両機に指示を出していた。
交信記録では管制官が2日午後5時45分に海保機に英語で、「1番目。C5上の滑走路停止位置まで地上走行してください」と指示し、海保機長は「滑走路停止位置C5に向かいます。1番目。ありがとう」と回答。海保機はその後、滑走路に進入し、日航機と衝突した。
元日航機長の土井厚氏によると、離陸する航空機は通常、緊急時にも余裕を持って停止できるよう滑走路全体を使って離陸するが、海保機は滑走路の途中を指す「C5」から離陸する「ショートフィールドテークオフ(短距離離陸)」を要望していたことが読み取れるという。この状況から土井氏は「海保機は早めに離陸したいという状況だったのではないか」と分析する。
さらに、土井氏は海保機長が「1番目」と復唱している点について、管制官は離陸の順番が1番目という意味で伝達していたが、「海保機長は1番目と復唱しており、急ぐ思いもあり、1番目と言われたから入っていいと錯覚した可能性がある」と推察する。
また、管制官は日航機の次に到着する便に対し、減速を求める指示を出している。土井氏は「管制官は日航機を着陸させた後に海保機を離陸させようとしていた。プロペラ機でも安全に出発できるよう次の到着便にゆっくり来てくださいと指示している」とする。
土井氏は、事故は一つの間違いではなく、さまざまな原因が連鎖して起きるとし、「海保機長が管制官の指示をどう判断したのか、海保機のボイスレコーダーがあるなら検証する必要がある」と述べた。(大渡美咲)