関西 令和5年の展望

文化庁移転、空港活性化、観光施設充実‥ 飛躍の基盤整う年に

文化庁が移転する旧京都府警本部本館(手前)と新築棟(右奥)=京都市上京区
文化庁が移転する旧京都府警本部本館(手前)と新築棟(右奥)=京都市上京区

新しい年がやってきた。新型コロナウイルスの感染状況は依然予断を許さないものの、関西では、地域活性化が期待されるさまざまなプロジェクトが本格化。うさぎ年にふさわしい「飛躍」の年になりそうだ。今年の関西を3つのテーマで展望する。

注目集まる文化庁移転

3月27日、文化庁が京都で始動する。東京一極集中の是正というだけでなく、歴史的にも明治以来初の中央省庁の地方移転として注目される。

移るのは都倉俊一長官をはじめ、9課あるうち人事や会計を担当する政策課のほか、文化財や宗教を担当する計5課。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題で対応に追われる宗務課も含まれる。

入居する新庁舎は、昭和天皇の即位を記念して昭和2年に建てられた旧京都府警本部本館を改修、北側に新築した新棟とともに昨年12月に完成した。

受け入れ側の京都では機運を盛り上げようと府市、地元団体などが事務局を設けて広報PR活動などを展開する。京都商工会議所は明治・大正期の文人画家、富岡鉄斎の旧邸(京都市上京区)を文化交流拠点として整備中。オール京都で新たな「文化首都」をめざしている。

りんくうタウン再始動

関西国際空港のおひざ元、大阪府泉佐野市のりんくうタウン。訪日外国人観光客(インバウンド)の増加でにぎわいをみせていたが、新型コロナウイルスの影響でここ数年は足踏みを強いられてきた。今年は回復の兆しをみせてきた旅行需要も追い風に、再始動を目指す。

星野リゾートの新ホテル開業など新たなにぎわいづくりが始まるりんくうタウン=大阪府泉佐野市
星野リゾートの新ホテル開業など新たなにぎわいづくりが始まるりんくうタウン=大阪府泉佐野市

街の中心部、りんくうタウン駅前では、星野リゾートが新ホテル「OMO(おも)関西空港by星野リゾート」を年内に開業する。700室と府内でも有数の客室数。大浴場やサウナを備え滞在時間を伸ばして近隣への観光促進も目指す。

コロナ前までに、周辺ではホテルや通年のスケートリンク「関空アイスアリーナ」などが相次いでオープン。また、関空の第1ターミナルでは昨秋の国内線新エリアに続き、今年末には国際線でも新エリアが開業。新たなにぎわいづくりの基盤が整いつつある。

「OMO関西空港」の中里剛支配人は「街に滞在するきっかけになるよう、楽しさや価値を発信していきたい」と話す。

神戸空港 国際化へ本腰

関西国際、大阪(伊丹)、神戸の3空港のあり方を議論する「関西3空港懇談会」で、令和12(2030)年をめどに神戸空港(神戸市中央区)に国際線定期便を就航させ、大阪・関西万博がある7年に国際チャーター便の受け入れを解禁することが認められた。神戸市は今年から、国際化に向けた準備を加速していく構えだ。

2030年の国際化に向け、準備が本格化する神戸空港=神戸市中央区
2030年の国際化に向け、準備が本格化する神戸空港=神戸市中央区

空港施設は利用客の処理能力(キャパシティー)が足りておらず、ターミナル拡充が課題。市空港調整課によると、現状のターミナルは約1万7千平方メートルだが、同じ広さのサブターミナルを約90億円かけて整備する基本計画を策定。また、エプロン(駐機場)も現状10機分のスペースを約2倍の21機分に拡張する。

同課の担当者は「国際線専用の動線や、税関、検疫、入管の施設も必要となる。万博に間に合うよう整備を進めたい」といい、真の国際都市に向けた取り組みを本格化させる。

奈良公園に最高級ホテル

芝生を食む愛らしいシカたちと出会える奈良市の観光スポット、奈良公園。その西側に今夏、不動産大手・森トラスト(東京)が手掛ける新ホテル「紫翠(しすい)ラグジュアリーコレクションホテル奈良」がオープンする。

県と同社が連携した「歴史景観の魅力を引き出す周辺整備事業」の一環。周辺エリア(約3ヘクタール)は県有地で、四季の花で彩られる日本庭園「吉城園(よしきえん)」や、大正建築の旧知事公舎なども点在する。ホテル(延べ床面積約4400平方メートル、客室43室)は建築家の隈研吾さんが監修・設計し、8棟の建物で構成される。

同社の最高級クラスのホテルブランド「翠(SUI)」としては、京都市と沖縄県宮古島市に続いて3軒目となる。同社は「東大寺や興福寺にも近い観光の中心地で十分、宿泊客が見込める」と話す。

日本のアマルフィ進化

海沿いの斜面に家が密集し、イタリアの観光都市アマルフィを連想させるとして「日本のアマルフィ」とも呼ばれる和歌山市雑賀崎地区。旧小学校跡地で整備が進んでいた公園が今年3月にも完成する。日本遺産に登録されている和歌浦湾を一望できる観光スポットとして、人気を集めそうだ。

「日本のアマルフィ」とも呼ばれる和歌山市雑賀崎地区。新たな観光施設「レモンの丘」が整備される
「日本のアマルフィ」とも呼ばれる和歌山市雑賀崎地区。新たな観光施設「レモンの丘」が整備される

旧小学校跡地では、市や地元自治会などが連携し、アマルフィ特産のレモンにちなんで「レモンの丘」と名付け、観光スポットとして整備を進めている。

レモンの木の植樹をはじめ、遊具やベンチ、モニュメントなどを設置。新たな公園として生まれ変わる予定だ。

すでに在大阪イタリア総領事も現地視察に訪れるなど注目度は高まっており、市の担当者は「アマルフィというコンテンツを観光などに生かしていきたい」と意欲をみせる。

クラブハリエに新工場

国宝の彦根城などを押しのけて滋賀県で最も集客力のある観光施設といえば、和洋菓子製造の「たねや・クラブハリエ」の旗艦店で、作りたてのお菓子を味わえる「ラ コリーナ近江八幡」(近江八幡市)だ。年間200万人を超える観光客らが押し寄せる人気スポットに1月11日、「バームファクトリー」がオープンする。

洋菓子「クラブハリエ」は、従来のイメージを覆した、しっとりしたバームクーヘンが有名。バームファクトリーは、その名の通りバームクーヘンの製造工場。見学ができ、焼きたてを味わえるカフェも併設される。

建物は直径34メートルのまるい2階建てで、中央にはまるい吹き抜けの中庭があり、上空から見るとバームクーヘンの形になっているのが特徴。山本隆夫・クラブハリエ社長の「グーグルマップや衛星写真を使ったナビにバームクーヘンが出てきたら面白いのでは」との発想から生まれた〝夢の施設〟が具現化する。

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