最近、「マンションの間取り」がどんどん進化してるって知ってました?
LDKが生まれ、和室がなくなり、キッチンも開放的に…。間取りの変化は、日本人の「暮らしの変化」そのものです。
例えば、ここに一般的な大型マンションの間取りがあります。
埼玉県の新三郷に実在するマンションの間取り。4LDKのファミリータイプ、採光良し、確かによく見るタイプの間取りです。80m²以上で角部屋というのがちょっとセレブな感じです。
ところが、同マンションのある階の角部屋だけは「ちょっと変わった間取り」をしています。なんでも「ある住宅コンペ」で最優秀賞を受賞したものが、そのまま採用されたのだとか…。
こちらがそのお部屋です。
なんだか不思議な間取り…。
ダイニングやリビングといったエリア分けがありません。コンペで最優秀賞をとったとはいえ、この間取りって何がすごいの?
家のなかに「通りみち」をつくる
この間取りの特徴は「シンプルさ」と「大胆な発想」にあります。部屋の設計者のコメントは以下のとおり。
住まいを「寝室」と「水回り」の2つのスペースに分け、残った余白部分を「通りみち」とした
と、通りみち!?
リビングやダイニングというエリア分けではなく、寝室と水回り以外の空間を「通りみち」にしたという大胆すぎる間取りだったんです。
へぇ…。
特徴はよくわかったのですが、そうすることで何がどう変わるの? 気になるのはそこですよね。
ラッパ状の空間が開放感のヒミツ
もう一度、プランをみてみましょう。
右上の玄関部分、ここから部屋に入ったときに「はじめに見えるもの」ってなんだと思います?
それは「外の景色」なんです。
玄関から大開口の窓まで遮るものがないため、一歩部屋に入るとテラスや外の樹木が目にとびこんできます。
この空間、おそらく図面以上の開放感を感じるはずです。その理由は、テラスに向かってラッパ状の「逆パースペクティブ」になっているため。目の錯覚もあって、実際よりも広く感じる空間なんです。
ただでさえ広い「通りみち」を最大限にいかしたプラン。壁を斜めにするだけで、こんな効果があるんですね。
床は光沢のあるタイルを使い「外の緑」が写りこむように計算されており、お部屋の「シンプル」さを引き立てています。まるで外と中の区別がなくなりそうな不思議な空間。角部屋という好立地ならではのプランです。
ゆるくツナガル、現代夫婦のくらしかた
この部屋には「現代の共働き夫婦の子育て住宅」というテーマがあります。それぞれが仕事を持ち、家では少しでも同じ時間を共有していたい。そんな現代の夫婦にはチラシでよく見かける「〜LDK」という考え方がフィットしなくなってきています。
この部屋の「通りみち」は、空間をカテゴライズしないことで、リビングになり、ダイニングになり、そして仕事場として自由に使うことができるというわけです。
可動式のパネルで仕切ってしまえば、プライベート空間だってつくれます。開ければ広々ワンルーム。ほどよくつながるぐらいが、いまどき家族のライフスタイルなのかも。
例えば、子供がよちよち歩きの頃は、夫婦のベッドの隣に「ベビーベッド」を置き、子供が大きくなれば1人部屋にして寝かしつける。
長い時間で変化していく「親子の関係」にも柔軟に対応してくれそうです。
寝室と通りみちは「小窓」でつながります。小窓を開ければ、光、音、風が家中を通るしくみ。共働きであるからこそ、家にいるときぐらいは目に見えるコミュニケーションをとりたくなるのかもしれません。
家のなかに「通りみち」をつくる。
このシンプルすぎる発想から作られた間取りには、現代の共働き家族にやさしくフィットするしくみがいっぱいつまっています。
次世代の住宅を、次世代の建築家とつくる住まい
ここまで紹介してきたこの物件、実は「三井不動産レジデンシャル」が開催する「三井住空間デザインコンペ」で最優秀賞を受賞した作品だったんです。
このコンペでは毎回テーマが提示され、最優秀賞である「三井住空間デザイン賞」に選ばれると、賞金100万円の他に、「部屋を再現する」という特典も。そのため「若手建築家・デザイナーの登竜門」として知られているコンペなんだとか。
参加者はボード1枚で作品をアピールしないといけません。同じようなアイデアだと埋もれてしまうし、ザハ・ハディドのようなものは住むにはちょっと…。どのようにして最優秀賞が決まったのか、興味のある人は公式サイトの「審査講評」を読んでみるとおもしろい発見がありますよ。リンクはこちらをどうぞ。次回、第9回のコンペは11月1日より募集開始。どんなテーマになるのか楽しみです。
今回紹介した物件は「一戸限定」で実際に販売もしていくとのこと。今度は住む人の感想も聞いてみたいですね。
コンペを主催する「三井不動産レジデンシャル」は、デザインだけでなくそれを生みだす人々との出会いを重視している会社。常に新しい発想を取り入れているからこそ、多様化していくライフスタイルに合ったマンションを提供し続けられるのかもしれません。
マンションの購入だなんてまだまだ先のことかもしれませんが、いまのうちから少しずつ勉強しておくのもいいかもしれませんよ。
[三井不動産レジデンシャル]
All Photo Credit : 新建築