能登半島地震、機動的に財政支出 予備費を1兆円規模に
政府は能登半島地震の復旧・復興支援で機動的に財政支出する方針だ。まずは緊急で水・食料、燃料・生活用品などを送るために47億円ほどを充てる。2024年度予算案を変更して予備費を1兆円規模に倍増し、被災状況を見極めながら順次国費を投じる。
予備費は自然災害や急激な景気悪化といった不測の事態に備え、使い道をあらかじめ定めずに毎年度の予算に計上する。
政府は9日の閣議で23年度予算の一般予備費から47億3790万円を支出すると決めた。23年度はおよそ4600億円が残る。3月末までは被害状況や現地からの要望に応じて追加支出が必要になればここから賄う。
4月以降は1月下旬召集の通常国会に提出する24年度予算案が財源になる。23年12月に閣議決定した時点で一般予備費は例年通り5000億円を盛り込んだ。
岸田文雄首相はその積み増しを鈴木俊一財務相に指示している。インフラ復旧や被災者の生活再建などの費用で追加支出を想定する。
石川県は9日、復旧・復興に関する要望書を政府に提出した。能登空港や鉄道網の早期復旧に向けた支援も要望した。首相は同県が開いた災害対策本部会議にオンラインで参加し「真摯に受け止め、可能な限りの支援策を用意するよう取り組んでいく」と述べた。
政府は一般予備費を増やした24年度予算案を近く閣議決定し直す。過去に当初予算案を決定後に変更した例は2019年度分がある。毎月勤労統計の不適切な調査で後から給付額が変わり、6億円ほど増やした。
積み増しの規模は16年4月に震度7が2度あった熊本地震を参考にする。岸田政権で筆頭首相秘書官の嶋田隆氏が当時の現地対策本部で対応した経験がある。首相は「半島といった地理的制約などを踏まえると熊本の例を超える財政需要も想定しておかなければならない」と話す。
熊本地震では発生直後に23億円の予備費を拠出した。5月に16年度第1次補正予算を編成し災害対応で7780億円を追加した。このうち予備費が7000億円を占めた。
8月には第2次補正予算を編成した。東日本大震災への対応も含めた災害対応に1兆4300億円ほどの費用を計上した。熊本向けの予備費は4100億円を減額し、具体的な復旧費用の財源に充てた。
災害の被害額や復興復旧費は見通しにくい。内閣府は16年5月時点で熊本地震による住宅や企業の生産設備、道路など「資本ストック」の被害額が2兆4000億〜4兆6000億円程度と試算していた。
11年の東日本大震災は直後に16兆〜25兆円と試算した。一方、実際に復興予算として投じたのは20年度までの10年間で38兆円超に上った。
能登半島地震は発生から9日目を迎えても道路の寸断状態が続く。停電や断水が続く家庭も多く、生活インフラの復旧のめどは立っていない。被害状況と復旧・復興の進捗を見極めながら財政需要も判断する。
2024年1月1日午後4時10分ごろ、石川県能登地方を震源とする最大震度7の地震が発生。気象庁は約4時間にわたり大津波警報を発令し、日本海側の広い範囲に津波が到達しました。各地の被害状況など最新ニュースをお届けします。