日銀、ドル供給拡大へ金利下げ 米欧中銀と協調
国際金融市場での緊張の高まりをふまえ、日米欧の主要中央銀行は30日、市場へのドル資金供給を拡充するための協調対応策で合意した。米国が中銀にドル資金を供給するときの金利を0.5%引き下げ、金融機関がドル資金を容易に調達できるようにする。2008年のリーマン・ショック時に導入したドル資金供給の枠組みを大幅に拡充。欧州の債務危機がグローバルな信用不安を招き、金融機関の資金繰りが行き詰まるのを防ぐ。
協調策で合意したのは日銀、欧州中央銀行(ECB)、米連邦準備理事会(FRB)、英イングランド銀行、カナダ銀行、スイス国立銀行の6中銀。
日銀は30日夜に臨時金融政策決定会合を開き、ドル資金供給に関する措置を決めた。白川方明総裁は記者会見で「(中銀が)協調して資金供給で万全の体制をとっていることは市場の安心感につながる」と強調した。ECBはさらに民間銀行が従来よりも少ない担保でドル資金供給を受けられるよう制度を改正した。
協調策の柱となるのは米国と各中銀のドル資金融通。現在はFRB(ニューヨーク連銀)が市場金利に1%を加えた金利で各中銀にドル資金を供給するが、この上乗せ幅を1%から0.5%に引き下げる。各中銀は民間金融機関にドル資金を供給するときに金利を0.5%下げる。
中銀が低い金利でドル資金を大量供給する枠組みが整えば、金融市場でドル資金を調達するのが難しい銀行も資金繰りが容易になる。金融市場の緊張を映して急上昇しているロンドン銀行間取引金利(LIBOR)などの市場金利に低下圧力をかける狙いもある。
欧州の債務危機をきっかけに金融市場ではドル資金が取りにくい状況が続いていた。イタリアやスペインの国債利回りの上昇(価格下落)によって欧州の金融機関の信用不安が拡大。銀行がドル資金を手元に抱えるようになったため、一部の銀行は市場からドル資金を調達するのが難しくなっていた。
欧州市場のドルの貸出金利の指標であるLIBORは11月22日には約1年4カ月ぶりに0.5%を突破。ECBなどが実施しているドル資金供給でも民間銀行の応札が多く集まっていた。
主要中銀はドル資金の調達難が国際的な金融システム不安につながるのを懸念。08年秋のリーマン・ショック以来の金融危機に発展する事態を回避するため、ドル資金供給の拡充で合意した。
協調策はリーマン・ショック時に信用不安から金融市場でドル資金が足りなくなる事態になり、日米欧の中銀が実施。10年2月にいったん終了したが、その後のユーロ不安などを受けて10年5月に再開された。