IoTネジを洋上風力へ 巨大設備を遠隔で保守管理
ネジ製造のベンチャー企業、NejiLaw(ネジロウ、東京・文京)は、センサーを搭載したネジの風力発電設備への導入を目指す。ネジにかかる圧力をセンサーで感知し、故障部分の特定や故障の予防などに生かす。2025年度までの実用化を目指す。日本国内で洋上風力発電設備の建設が本格化する前に、実用化を進めたい考えだ。
ネジロウが開発を進めるのは「smartNeji」(スマートネジ)と呼ぶセンサーを搭載したネジ。あらゆるモノがネットにつながる「IoT」ネジだ。19年からカシオ計算機と本格的に共同開発を進めている。カシオの時計ブランド「G-SHOCK」で培った小型センサーの技術を活用している。ネジロウは工場や道路などのほか、風力発電設備や大規模太陽光発電設備(メガソーラー)など再生可能エネルギー発電設備へのスマートネジの導入を目指す。インフラ設備を遠隔で保守・管理するのが目的だ。
■独自技術でネジが緩まない
スマートネジはネジにかかる圧力などをセンサーで読み取り、データを送信する。収集したデータは人工知能(AI)で管理する。目視では分からないネジへの負荷もリアルタイムに遠隔管理できる。また、それぞれのネジにセンサーが組み込まれているため、正確に場所を特定できる。スマートネジが普及すれば、高齢化などで担い手が減るインフラ点検技術者の負担の軽減にもつながる。
スマートネジにはネジロウ独自の緩まない技術が導入されている。同社が開発した「L/Rネジ」は、右回りと左回りで締めるナットをそれぞれ組み合わせることで2つのナットがかみあい、緩まなくなるという。スマートネジに応用すれば、故障などの原因をネジの緩み以外に限定できるほか、データをより正確に読み取ることができる。
ネジロウは19年10月、電気工事などを手掛ける関電工と共同で研究開発を行う契約を結んだ。20年6月には風力発電設備への導入を目指す実証事業を始めた。まずは仮設の設備で検証を行う。ネジの規格などについて経済産業省の認定がとれ次第、実際の風力発電設備を使い実証を始める。
ネジロウは関電工と共同で新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の風車部品の高度化に関する補助事業への申請も検討している。
両社がスマートネジの導入を目指しているのは、国内で開発が本格化する洋上風力発電所だ。海上に設置する洋上風力は、現場に作業員を送ることが容易ではないため、遠隔管理の必要性が高い。関電工の野本健司常務執行役員は「スマートネジを洋上風力発電建設のスタンダードにしたい」と意気込む。同社は再生エネ発電所の建設や運営・保守事業を手掛けており、洋上風力発電にも事業を展開させたい考えだ。
(企業報道部 柘植衛)
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