ダイムラー、不正疑惑の渦中で無償修理 欧州300万台
【フランクフルト=深尾幸生】独ダイムラーは18日、欧州でディーゼル車300万台以上を無償で修理すると発表した。ここ数年で欧州で販売したほぼ全ての「メルセデス・ベンツ」ブランドの車両が対象となる。費用は2億2千万ユーロ(約280億円)の見込み。同社は先週、100万台以上のディーゼル車で違法な排ガス操作をした疑いを報じられていた。早期に対策を打ち出すことで、事態の沈静化を急ぐ。
18日に開いた取締役会で決めた。ダイムラーは「(以前から準備していたものではなく)比較的短期間での決定」と説明したが、排ガス不正を指摘した報道とは「無関係の独立したもの」と主張した。ディーター・ツェッチェ社長は声明で「世の中のディーゼル車を巡る議論で顧客を不安にさせている。ディーゼル車の運転手を安心させる措置だ」と述べた。
ダイムラーは独フォルクスワーゲン(VW)の不正発覚後、排ガス制御装置を修正するため独自に小型車など24万7千台のソフト改修を始めていた。今回の措置はその拡大と説明する。
300万台の規模は2016年のダイムラーの世界販売台数に匹敵する。最新の排ガス規制の「ユーロ6」と1世代前の「ユーロ5」に対応したディーゼル車のほぼ全てを修正する広範なものになる。
無償修理の具体的な内容はソフトウエアの更新で、1時間程度で終わるという。排ガス中の有害物質である窒素酸化物(NOx)を減らせるように排ガス制御装置などのプログラムを書き換えるとみられる。所有者への通知などは数週間以内に始める。
シュツットガルト検察は5月、ダイムラーの主要拠点の捜索に入った。有力紙「南ドイツ新聞」は12日、ダイムラーが08年から16年までに欧州と米国で販売した主力車種が規制を大きく超過する有害物質を排出したことが捜索の理由だと報じていた。
今回の決定の後もダイムラーは「不正は犯していない」という立場を維持する。米国で2兆円を超える制裁金などを支払うVWは欧州や米国などで販売した1100万台に不正を認めている。
欧州ではパリやミュンヘンなどの大都市でディーゼル車の乗り入れを禁止する議論が広がる。不信と将来への不安が重なりディーゼル車の新車販売は低迷している。