名前が重要〜日経サイエンス2015年3月号より
命名によってその動物の運命が決まるかも
計画通りにことが進めば,セメント会社の仏ラファージュはマレーシアの石灰石の山を引き続き採石場とするだろう。同社にとっては従来通りの日常業務だが,カロパ・ラファルゲイ(Charopa lafargei)というカタツムリにとっては悪い知らせだ。最近発見されたこの腹足類はこの山にだけ見られ,その学名はラファージュ社にちなむ。当の生物を絶滅に追い込む可能性のある主体の名を取って命名された生物種はこれが初めてだ。
自社の名がついた生物を滅ぼすことに罪の意識が働くかどうかはまだわからないが(同社は一部地域に関しては採石を避けると表明している),生物種の命名には気を遣うべきだといえる。近年の研究で,人々が動物を保護したいと思うかどうかが,その動物の俗称に左右されうることがわかった。ジョージ・メイソン大学のチームは2012年の研究で,愛国的な名前やかわいらしい名前がついていると,人々の保護意識が刺激されることを見いだした。
今回のカタツムリを報告したチームは,これと同じ原理が働いてラファージュ社がラファルゲイを保護する気になることを期待している。■
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