コラム

日鉄「逆転勝利」のチャンスはここにあり――アメリカ人の過半数はUSスチール問題を「全く知らない」

2025年01月22日(水)16時20分
クリフス

「暴言」を吐いたクリフスのゴンカルベスCEO AP/AFLO

<クリフスCEOの暴言は焦りの表れ? 世論調査が示すアメリカと日本の温度差と、日鉄が一発逆転できる可能性>

昨年の米大統領選で共和・民主両党の立場が珍しく一致した問題が1つある。アメリカ第2の鉄鋼メーカーで株式時価総額80億ドルのUSスチールに対する日本製鉄の買収を絶対に認めないということだ。バイデン大統領もトランプ次期大統領も買収阻止に動いた。

一方で、この問題についての一般メディアの報道は驚くほど少なかった。USスチールは大統領選で最も重要な激戦州と特に深いつながりがある企業なのに、である。


私は何人もの著名な学者や元政府高官に分析や予測を尋ねてみたが、誰もが自信なさげに言葉を濁した。普段はメディア報道を常に把握している彼らの反応は、このニュースがアメリカであまり知られていないことを示唆するものだ。

実際、シカゴ大学の世論調査ではアメリカ人の58%がこの問題を「全く知らない」と答えた。「多少」あるいは「よく」知っていると答えたのは23%だけだ。

知っていると答えた人のうち、この買収が雇用の喪失につながると考える回答者は、そう思わない人の2倍に上った。一方、学者を対象にした世論調査では、雇用喪失につながらないという答えが一般国民の3倍近かった(エコノミストの間ではさらに多い)。この数字は一般国民に対する大統領の反対や選挙運動の影響の強さを物語る。82%のエコノミストが買収は米経済に悪影響を及ぼさないと考えているのに対し、同意見の一般国民は16%しかいなかった。

プロフィール

サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米大統領、ガザのパレスチナ人受け入れをヨルダンとエ

ワールド

米、ベトナムに貿易不均衡への対処要請 外交トップが

ビジネス

メキシコペソ下落、トランプ氏の対コロンビア関税受け

ワールド

アルゼンチン、ムーディーズが格上げ ミレイ政権で見
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプの頭の中
特集:トランプの頭の中
2025年1月28日号(1/21発売)

いよいよ始まる第2次トランプ政権。再任大統領の行動原理と世界観を知る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 2
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」で記録された「生々しい攻防」の様子をウクライナ特殊作戦軍が公開
  • 3
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが物議...事後の悲しい姿に、「一種の自傷行為」の声
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    「1日101人とただで行為」動画で大騒動の女性、アメ…
  • 6
    「ハイヒールを履いた独裁者」メーガン妃による新た…
  • 7
    ネコも食べない食害魚は「おいしく」人間が食べる...…
  • 8
    軍艦島の「炭鉱夫は家賃ゼロで給与は約4倍」 それでも…
  • 9
    カンヌ国際映画祭受賞作『聖なるイチジクの種』独占…
  • 10
    「後継者誕生?」バロン・トランプ氏、父の就任式で…
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵を「いとも簡単に」爆撃する残虐映像をウクライナが公開
  • 3
    日鉄「逆転勝利」のチャンスはここにあり――アメリカ人の過半数はUSスチール問題を「全く知らない」
  • 4
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 5
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 6
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 7
    被害の全容が見通せない、LAの山火事...見渡す限りの…
  • 8
    いま金の価格が上がり続ける不思議
  • 9
    「バイデン...寝てる?」トランプ就任式で「スリーピ…
  • 10
    軍艦島の「炭鉱夫は家賃ゼロで給与は約4倍」 それでも…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 5
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 6
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 7
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 8
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 9
    地下鉄で火をつけられた女性を、焼け死ぬまで「誰も…
  • 10
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story