“反脱原発”民主千葉県議も現職の東電社員 給料フタマタ疑惑に「僕の判断では言えません」
東電の現職社員で民主党・千葉県議会議員の天野行雄氏。東電を休職しているのか否か、給料を貰っているのか否か、質問した(下)が回答せず。休職せずに給料を貰っている可能性がきわめて高い。 |
- Digest
-
- 経歴詐称疑惑の安斉議員
- 質問状にはナシのつぶての天野”東電社員”議員
- 「僕のほうでは答えられないんです」
- 議員報酬と政調費・献金・給料――合計で年5千万円弱か
- 東電子会社から税金で車をリース
- 「脱原発に反対」に「発送電分離反対」
- 「勝手に書いたら困る」と言われても…
- “反脱原発”発言は「僕の意見じゃない」?
- 「説明責任ないんですか?」「…」
経歴詐称疑惑の安斉議員
「(元)東京電力社員」
福島第一原発の事故が深刻さを増していた2011年4月に行われた統一地方選で、杉並区議に立候補し2期目の当選をした安斉昭氏(民主党)の経歴について、東京新聞電子版はそう書いている。
ところが実は「元」ではなく、現職の東電社員として給料をもらっていた。「原発推進」杉並区議は現職の東電社員だった!議員報酬+東電給料+労組献金で実質年収4千万円」で報じたとおりである。東京新聞が間違ったのか、安斉氏が誤った情報を流したのか、経歴を詐称したのかどうかは不明だが、少なからぬ有権者が安斉氏を「元」東電社員だと考え、それを参考に投票行動に出たことは間違いない。つまりだまされたわけだ。
この点を安斉氏は、杉並区議会議員という公職にある身として公式に釈明する責任がある。だが残念なことにいまのところ筆者の取材はいっさい拒否、メールの問い合わせ機能が付いていたホームページやブログも19日夜以降接続できなくなってしまった。「ノーコメント」で貫くつもりなのか。だとすれば有権者を甘くみすぎているのではないか。他人ごとながら心配になってくる。
安斉氏が杉並区監査委員という重責を担っていることについては、区議会議員の間で問題視する動きがでている。「安斉氏は監査委員を辞任すべきだ」という声もあり、杉並区議会の真価がためされているといえる。
質問状にはナシのつぶての天野”東電社員”議員
さて、東電に雇われて東電からカネをもらっている社員が、給料をもらいながら議員をやる。この「東電“フタマタ”議員」について、筆者は引き続き調査を行っているところだ。集計ができ次第報告したいが、その中で千葉県議の天野行雄氏のケースにぶつかった。
天野行雄。千葉県議会議員。民主党所属で現在2期目。経歴に東京電力入社とある。安斉氏のときと同様に「退社」との記載はない。現職社員ではないかと思われた。
事実を確かめるため、筆者は1月12日、天野議員の事務所に以下の質問状をファクスで送った。質問は4点。
2 東京電力を退職、または休職している場合は、その時期・理由。
(以下、東京電力に在籍している場合)
3 東京電力から給与・賞与・手当を現在も受け取っているのか。
4 東京電力での勤務先、勤務内容。
5 東京電力に在籍していることを有権者に公表していますか。
1週間後までの回答にご協力を、と付け加えたが、結局天野議員からは何の連絡もなかった。
しびれを切らした筆者は、ひとまず議会事務局に電話をかけた。男性職員が出た。
議会事務局 千葉県議会事務局です。 三宅 天野行雄議員のことですが、現職の東電社員かどうかそちらで把握されていますか。議会事務局 はい、天野議員は東電社員と聞いています。
意外であった。天野県議が現職東電社員であることを議会事務局の職員はあっさりと話してくれた。広く知られているようだ。この点、杉並区の安斉氏とはやや事情が違う。
筆者は引き続き尋ねることにした。社員とわかれば次は休職の有無だ。給料が払われているのかどうかを知りたい。
三宅 天野議員は東電を休職中なのかどうか、そこはご存知ですか。議会事務局 東京電力社員とまではお聞きしていますが、(休職しているかどうか)そこまではわかりません。
休職のことは議会事務局ではわからなかった、県議会議員をする一方で東電から給料をもらっているのか、あるいは休職してもらっていないのか。天野氏が東電“二股”議員かどうかを判断する焦点はこの点に絞られた。
天野行雄千葉県議の政治団体「天野ゆきお後援会」2010年分政治資金収支報告書。統一地方選を控えた2010年12月に原発推進の立場をとる東電労組と表裏一体の東電労組政治連盟から775万円の献金を受けている。 |
「僕のほうでは答えられないんです」
1月19日朝8時すぎ、千葉市稲毛区にある自宅に電話をした。千葉県選管に届け出た政治団体「千葉文化経済フォーラム」(天野行雄代表)に記載された連絡先と同じである。
「はい。天野ですが」と低い男性の声がした。筆者はまず質問状の件から切り出した。
「後援会事務所のほうに質問状をお送りしたんですが、見ていただけましたか?」
「はい」と天野氏は答えた。たしかに届いていたようだ。天野氏はこう続けた。
「三宅さんの書かれたもの、ブログなどを拝見しましたが、そんな関係のなかで三宅さんが判断することだとおもいますので。私から言うというのはちょっとできません
この先は会員限定です。
会員の方は下記よりログインいただくとお読みいただけます。
ログインすると画像が拡大可能です。
- ・本文文字数:残り7,018字/全文9,029字
東電二股議員の天野氏は、東電子会社のテプコーユ(東電リースと名称変更)と車のリース契約を行い、毎月4万4000円の支払いの半分を税金である政務調査費で払っていた。実質的に車を購入しているのと変わらない。
テプコーユは東電100%出資の子会社で、役員は東電本社の役員が兼任している。東電の有価証券報告書より。
天野行雄千葉県議が反対意見を述べて不採択になった、脱原発を求める意見書。
千葉市稲毛区にある天野ゆきお千葉県議の後援会事務所。家賃も政務調査費で支払われている。東電の現職社員であることは看板などからはうかがい知れない。
Twitterコメント
はてなブックマークコメント
東電じゃなくてもこういうのはダメだと思うが、他にも出てきそうな予感。
"議員として委員会で発言しながら「個人の意見じゃない」と言う。サラリーマンそのものだ。ならば委員会で言ったのは東電の意見だったのか、そんなふうに思えてきた"
天野氏は委員会では脱原発を求める意見書採択案に反対し、県政務調査費を使って東電子会社から車をリース契約
現役東電社員が、東電をやめたと嘘ついて給料もらいながら政治活動していたというのが酷いな。車を借りるときは東電子会社から借りるっつーのも。
facebookコメント
読者コメント
そもそも、どうでもいい些末な問題だが、結局、ガセとは。関係者にどれだけ迷惑かけたことか。よく調べてから、ほざくことだ。
重要なのは有権者を欺いてはいないかどうか。どの利権を代表する者なのか表明されているならば構わない。党方針と意見が食い違う事はあっていい。でなければ個人を選ぶ必要などなく党代表と得票総数のみでいい。強行採決や除名処分こそが有権者を冒涜する行為と思う。
代議士とは主権者の代表であり単純な公務員=公僕とは違う。宗教団体や労働組合もその思想・利権の代表であり民主主義としては妥当。ただ議員の業務に専念せず会社員であり続ける事が妥当とは思えない。しかし小規模自治体でろくに給与も出ない状態や自営業等で本業を放棄できない場合もある。その余裕のある者しか被参政権を行使すべきではないのだろうか。現実問題に直面する者が政治に参加してこそ社会は前進する。
杉並区議の場合と同じで、会社から給料を貰うことは、日本国憲法第15条で言うところの「すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない」の精神に反するのではないかと思う。しっかり追求され、そして、有権者はしっかり判断し行動すべきだと思う。
これ東○村の村議も組合から現役の原発職員が出てると聞きました。
日本中の電力会社が、毒饅頭を盛って、イエスマンをバラマイテ悪の限りを尽くしている。決定だな・・・
案の定、他でも出てきたね。東電以外の電力会社はどうなのだろう?まだまだ出てきそうで怖い。
記者からの追加情報
その後の取材で、天野議員が千葉県の条例に基づく資産公開で、給料所得を1200万円あまりと申告していることがわかった。県議の歳費だけという計算で東電から給料が出ていない可能性が考えられたので、2012年2月20日夜、天野氏の自宅に電話連絡をとり、あらためて確認を求めた。出張中だとのことで不在だったが、家人を促した結果、ようやく「給料は(千葉)県のほう一本でやっている、とのことです」との回答が得られた。
天野氏の言葉を信用する限り、休職中とみられる。本稿はあくまで執筆時点で取材を尽くした結果であることをお断りしたい。新事実に基づき、現在は「天野県議は東電を休職中とみられる」と見解をあらためる。ただ健康保険や年金の掛け金などの費用は東電から出ている可能性がある。また、天野県議がなぜ当初の取材に対して「給料はでていない」などと明言しなかったのか事情は不明である。
2012年2月22日 三宅勝久
本文:全約9200字のうち約7100字が
会員登録をご希望の方はここでご登録下さい
新着のお知らせをメールで受けたい方はここでご登録下さい(無料)
企画「原発問題から見える日本」トップページへ
企画「その税金、無駄遣い、するな。」トップページへ
本企画趣旨に賛同いただき、取材協力いただけるかたは、[email protected]までご連絡下さい。会員ID(1年分)進呈します。