「日本で生活保護をもらう外国籍の人間はずるい」「不正受給しているに違いない」「外国人への生活保護を廃止せよ」――昨今、SNSでよく見かけるこれらの意見に、為政者たちはほくそ笑み、裏でこっそり「いいね」を押しているに違いない。本来なら真っ先に生活保護を受けるべき困窮日本人たちが、受給をはばむ役所や国に対して怒らず、自らの正当な権利を行使もせず、あさっての方向に恨みをぶつけて満足しているからだ。これに関して、本当の問題は「日本人の生活保護受給率が低すぎる」点にあると指摘するのは元国税調査官で作家の大村大次郎氏。データをよく分析することで、わが国の欺瞞が浮き彫りになるという。(メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』より)
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:“外国人のほうが生活保護受給率が高い”は本当か?
日本社会を分断する「生活保護を受ける外国人はずるい」キャンペーン
「外国人のほうが生活保護を受けやすい」「日本に住む外国人は生活保護を受けている人が多い」と言われているのを、最近よくネットなどで見かけます。
本当にそうなのか、データで確認してみたいと思います。
まず、外国人が生活保護を受けられるのかどうか、法律的な面で確認しましょう。
日本の法律では、本来は外国人には生活保護を受ける権利はないということになっています。
が、人道的な見地から、永住者、特別永住者(主に戦前から日本にいた韓国、朝鮮、台湾の人とその家族)、日本人の配偶者、定住者については、生活保護を支給するということになっています。
定住者というのは、難民認定などで日本に一定期間住むことを認められた人です。留学や就労ビザで来日したような人には、支給されないことになっています。
次に、生活保護の支給割合を見てみましょう。日本人の生活保護受給率は約1.6%です。それに対し、外国籍の生活保護受給率は約2.3%となっています。日本人の約1.5倍も外国人のほうが受給率が高いのです。
しかも、この数字は、日本に住む外国籍のすべての人との割合を示しています。実際には日本に住む外国籍のうち、約半数は生活保護の受給資格はありませんから、外国籍で生活保護受給権がある人の受給率は、おおむね6~7%程度になります。
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本当の大問題は「日本人の生活保護受給率が低すぎる」点にある
つまり、日本人よりも外国籍の人のほうが、生活保護受給率は約3倍も高いということになります。これだけを見ると、「外国籍の生活保護受給率は高い」というのは、ある意味、事実だと言えます。
しかし、さらにデータをよく分析すれば、実は「外国籍の生活保護受給率が高い」のではなく「日本人の生活保護受給率が低すぎる」だけ、という実態が浮かび上がってくるのです。
そこで実際に、日本人の生活保護受給率が、ほかの先進国と比べてどうなのかを数字で検討してみましょう。
はたして日本の生活保護は、先進諸国と比べて多いのか少ないのか、充実しているのかいないのか。
日本人は皆、日本の社会保障は先進国並みと思っています。しかし、これは大きな勘違いです。驚くべきことかもしれませんが、日本は他の先進国と比べて、生活保護の支出も受給率も非常に低いのです。