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株価30%下落「SUMCO」売りか?買いか?長期投資家に必要な判断基準をプロが徹底解説=栫井駿介

SUMCO<3436>の株価が直近1ヶ月で約30%も下落しました。この急激な下落は多くの投資家に衝撃を与え、「売るべきか、買うべきか」という難しい判断を迫っています。今回は、同社の株価が大きく下落した理由や、なぜ戻りが悪いのか事業内容から分析していきます。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』栫井駿介)

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プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。

SUMCOの株価が1ヶ月で30%下落

SUMCO<3436>日足(SBI証券提供)

SUMCO<3436>日足(SBI証券提供)

この下落は、8月5日の日経平均株価の大幅下落を契機としています。しかし、SUMCOの株価下落は市場全体の動きを大きく上回っており、日経平均が戻りを見せる中で低調な動きとなっています。

30%という大幅な下落は、単なる市場全体の調整とは言い難く、SUMCOの事業や業績に対する市場の見方が大きく変化したことを示唆している可能性がある一方で、市場心理や短期的な要因が大きく影響していることもあります。そのため、冷静に企業の fundamentals(基本的条件)を分析し、長期的な成長可能性を見極めることが重要です。

株価が下落した理由とは?

2024年8月5日、日本株市場全体が大きく下落しました。この日、SUMCOの株価も大幅に下落しましたが、その後の回復が他の半導体関連銘柄と比べて遅れています。例えば、東京エレクトロン<8035>の株価は8月5日の下落後、徐々に回復傾向にありますが、SUMCOの株価は依然として低迷しています。

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出典:Yahoo!ファイナンス(青:SUMCO、緑:東京エレクトロン、黄:信越化学)

この「戻りの悪さ」は、SUMCOの業績や将来性に対する市場の懸念を反映していると考えられます。特に、半導体業界全体が直面している需要の減速や在庫調整の影響が、SUMCOにより強く現れていると市場が判断している可能性があります。

さらに、SUMCOの主力製品であるシリコンウェーハは、半導体製造プロセスの最上流に位置するため、業界全体の需要変動の影響をより早く、より強く受ける傾向があります。この特性が、現在の株価低迷に拍車をかけている可能性も考えられます。

また、SUMCOの株価の「戻りの悪さ」は、投資家の間で同社の中長期的な成長戦略や競争力に対する疑問が生じている可能性も示唆しています。特に、主要競合である信越化学<4063>との比較において、SUMCOの技術開発力や生産効率、顧客基盤の強さなどに関する懸念が強まっているかもしれません。

戻りが悪い理由は業績悪化が影響?

SUMCOの2024年12月期第2四半期決算短信によると、売上高は前年同期比10.1%減の1,982億円、営業利益は55.5%減の208億円と大幅な減益となっています。

この業績悪化の背景には、半導体市場の需要減少があります。特に、200mm以下のウェーハの出荷が低調であることが影響しています。200mm以下のウェーハは、主に成熟した技術ノードの半導体製造に使用されるため、新しい需要の創出が難しく、市場の変動の影響を受けやすい特徴があります。

さらに、SUMCOの業績悪化は単なる一時的な現象ではなく、構造的な問題を抱えている可能性があります。例えば、主要顧客の需要予測の誤りや、競合他社との技術競争における遅れなどが考えられます。これらの要因が、市場の信頼回復を遅らせている可能性があります。

一方で、SUMCOの株価のPER(株価収益率)は昨年度の業績に対して約10倍と、一見割安に見えます。しかし、この「割安感」は必ずしも買いのサインとは限りません。現在の業績低迷と今後の不透明な見通しを考慮すると、慎重な判断が必要です。

PERが低いことは、必ずしも企業の価値が低いことを意味しません。むしろ、市場が企業の将来成長に対して懐疑的であることを示している可能性があります。そのため、PERだけでなく、ROE(自己資本利益率)やフリーキャッシュフローなど、他の財務指標も併せて分析する必要があります。

また、SUMCOの業績回復の見通しが不透明なことも、株価の「戻りの悪さ」の一因となっています。半導体市場は急速に変化し、新技術の登場や需要の変動が激しいため、長期的な予測が困難です。このような不確実性の高い環境下では、投資家はより慎重になる傾向があり、それが株価に反映されていると考えられます。

Next: 短期的には市場環境の変動の影響を受けやすい特徴も

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