2024年8月、Googleは独占禁止法に違反する企業であるという判決が、ワシントンDCの連邦地裁で下されました。しかし、罰則が科されるまでには至らず、あとは独占の解消策を決める審理に持ち越されています。
そして今、アメリカ司法省はかなり野心的な目標の概要づくりを進めています。なかでももっとも困難と思われるのが、Googleに突き付けたChrome売却の要求です。
発端は、同社がAppleをはじめとするブラウザ開発企業に大金を支払って、Googleをデフォルトの検索エンジンにしてもらおうとしていたこと。
今回と似たケースは2001年にもあり、MicrosoftのInternet Explorerをめぐって反トラスト訴訟が起こされました。そして、Microsoftも、今回のGoogleも、事業分割の要求を突きつけられました。
結局、Microsoftの分割は実現に至らず、政府は同社と和解する道を選びました。しかし今回は前回と違って、少なくとも今のところ、司法省はGoogleを追い詰めることに全力を挙げているようです。
司法省は、11月20日午後(現地時間)に提出した23ページにおよぶ文書のなかで、Chromeブラウザの売却をGoogleに求めることを裁判所に提言。
さらに、Android内でのGoogle検索ツール優遇阻止規制に同社が従わない場合は、Androidも売却の対象とすることも求めています。
この提言には少し驚かされました。というのも、Googleが他社にお金を払ってそのエコシステム内でGoogle検索を優先してもらっていたという争点と、ChromeもAndroidの売却の件は直接的には関係ないからです。
政府がGoogleにChrome売却を求めているのはなぜか
司法省はこの野心的な提言を擁護するべく、Googleの分割で得られる効果について、こう主張しています。
Chromeを売却することで、検索の重要なアクセスポイントに関するGoogleの支配が永続的に阻止され、多くのユーザーがインターネットへの入り口として利用しているブラウザに、他社の検索エンジンが参入できるようになる。
言い換えれば、ChromeとGoogleが無関係になれば、Google検索をデフォルトにすべき理由が失われるわけです。これによりおそらく、ほかの検索エンジンが、多くのユーザーが利用するデフォルトブラウザに入り込むチャンスを手にすることに。
ただしこれだけでは、Googleがブラウザを提供する各社に(Chromeの新オーナーも含めて)、多額を支払い続けるのを食い止めることはできないでしょう。
そこで司法省は政府に対して、Googleがブラウザメーカーに何らかの補償を行なうことで(金銭の有無に関わらず)、Googleをデフォルト検索エンジンにしてもらうことを禁止するよう求めています。
同様に、司法省の規制が実現すれば、Googleは、みずからがアクセス権を持つGeminiなどのプラットフォームでも、自社の検索ツールを優遇することができなくなるでしょう。
また、検索結果やランキングシグナルといったデータを、少なくとも10年間は、「少ない費用で継続的に」他社が利用できるようにすることも義務付けられることになります。
そして、企業が検索順位に不当な扱いを受けることなく、自社のウェブサイトのデータを「AIによる概要(AI Overview)」に使用されることを拒否できるよう、Googleは許可する必要があるでしょう。