ギズモード・ジャパンより転載:夢よりも事業化へと舵を切った?
GoogleがGoogle X配下にあった自動運転車開発プロジェクトをスピンオフし、これからはAlphabet傘下の「Waymo」という会社で進めることを発表しました。Google Xのプロジェクトといえば、Google Glassとか気球インターネットとか人工皮膚とか、とにかくすぐにお金にはならなそうなものが粒ぞろいでしたが、自動運転車に関してはこのフェーズを卒業させたんですね。
WaymoのサイトのFAQには、次のステップについてこう書かれています。
次のステップは、みなさんに日常のお使いや仕事の中で、自動運転車を試していただくことです。
完全自動運転からの軌道修正
ただ新しい門出に水を差すようで申し訳ないんですが、今回の発表前、The InformationがGoogleの軌道修正について、内部の情報を元に詳細な記事を公開していました。その記事によると、Googleはこれまでハンドルもブレーキもない完全自動運転の車を目指していたんですが、今いったんそれをあきらめようとしているらしいんです。
でももちろん、自動運転車の夢を完全に捨てるわけではないようです。今年5月に発表したFiat Chryslerとの提携などを通じて自動運転車の開発は続けるんだけど、その車にはハンドルとかブレーキはついたままになりそうということです。つまりとりあえず、自動運転機能はあくまで人間のサポートとして作るのであって、全自動で動いてくれる車の実現はもうちょっと後でいいことにする、ようです。
The Vergeがこの点についてWaymoのCEOに就任したJohn Krafcik氏に確認したところ、「あまり明確には答えなかったが、完全自動運転技術には引き続きコミットしていると断定的に言っていた」そうです。なので完全自動運転を完全に捨てるのではなく、あくまでタイミングをずらすだけ、ということなのだと思われます。
舵を切った背景は
The Informationによれば、軌道修正の判断をしたのは、Googleの持株会社であるAlphabetのラリー・ペイジCEOとルース・ポラットCFO。彼らはハンドルやブレーキのない車を作ろうとするアプローチは「非現実的」だと考えたんです。現在の米国の規制では、車にはハンドルやブレーキが必要とされています。
彼らが判断を急いだ背景には、自動運転技術をめぐる競争の激化があると思われます。ペイジ氏が自動運転車開発のアイデアを抱き始めたのは2007年で、そこから社内コードネーム「Chauffeur(運転手)」プロジェクトが始まりました。でもGoogleにインスパイアされるように、既存の大手自動車メーカーもこぞって自動運転車の開発に取り組んでいきました。
また、Uberのトラビス・カラニックCEOに至っては、Googleに自動運転プロトタイプに乗せてもらったことがきっかけで、自社での自動運転技術開発を決断したそうです。Googleがのんびり夢を追っている間に、他のもっとギラギラした会社が参入してきてしまった感じです。
自社開発の難しさ
The Informationによれば、判断の分かれ目は今年始めにあったようです。既存のLexusをベースにしたプロトタイプはこれまでのテストで傷みが出ていて、新しいプロトタイプを作る必要がありました。当時の状況はこう説明されています。
次のプロトタイプに関し、Googleには3つの選択肢があった。もっとも野心的なのは、「コアラ」(訳注:このプロトタイプ)のように端から端まで自社でデザインすることだ。次に難しいのは、既存の自動車ブランドと協力し、Googleのセンサーやソフトウェアを製造プロセスの中に組み込みつつ、ハンドルやペダルは付けないことだ。そのためには自動車メーカー側に、少なくない労力が求められる。またはGoogleが自動車メーカーに対し、Googleの技術を既存の自動車モデルに統合させるべく協力することもできた。
そして結局選ばれたのは一番最後の道、つまりGoogleがFiat Chryslerに協力して技術を提供することでした。Googleは、自社で車を作ることの難しさ、特に既存の製造設備を持った自動車会社と競争できるスケールでやっていくことの大変さに気づいたんです。
これはAppleが学んだといわれることと同じです。Appleもまた、自社で自動運転車のハードウェアまで全部作るのではなく、ソフトウェアにフォーカスしつつあるといわれています。
ライドシェアサービスの方向性も
方向性を変えたことで、Chauffeurプロジェクトには新たなアイデアが生まれました。それが、2017年までに自動運転車を使ったライドシェアサービスを立ち上げることです。The Informationによれば、今Fiat Chryslerで開発中の自動運転プロトタイプの出来が良ければ、それを使った「ロボタクシーサービス」なるものがローンチされるかもしれません。
ただし自動運転タクシーサービスだって、そう簡単には作れません。それを実現するには、Googleが自動車メーカーに対して自社のソフトウェアをインストールしてもらうだけじゃなく、自動車メーカーが自前のライドシェアサービスをねらっていないかどうか確認する必要があります。そのうえで実際に車のネットワークをいちから作り、市場テストして...と進むわけです。
とはいえ、これらはThe Informationが接触した匿名の情報源による話なので、Chauffeurプロジェクト、またはWaymoの全貌を表しているとはいえません。Waymoのウェブサイトでも、完全自動運転を実現することを強調しています。いずれにしても、いつかは誰も運転しなくていい未来が来ると信じて引き続き見守りたいです。
image by Waymo
source: Waymo, The Information, The Verge
Christina Warren - Gizmodo US[原文]
(福田ミホ)