ライフハッカー編集部 様

Microsoftの次期OS『Windows 10』には、新しいウェブブラウザが導入されるそうです。このブラウザのどんなところが新しいのでしょうか? 『Chrome』や『Firefox』のユーザーは、この新ブラウザに乗り換えるべきでしょうか? それとも、これは単に、デザインが一新されただけの『Internet Explorer』と捉えるべきでしょうか?

明日のMicrosoft Edgeより

明日のMicrosoft Edge様

幸いなことに、この新しいブラウザは『Internet Explorer』とはまったくの別物のようです。『Internet Explorer』の機能は、何年にもわたって改良が重ねられてきましたが、Microsoftはついにこのブラウザに見切りをつけることにしました。

Microsoftは4月29日~5月1日(米国時間)に開催したカンファレンス「Build 2015」で、次期OS『Windows 10』では、『Internet Explorer』に代わって『Microsoft Edge』が標準のウェブブラウザになり、『Windows 10』以降のOSでも新ブラウザを継続して使用していく予定だと発表しました。

『Microsoft Edge』は、開発期間中には「Project Spartan」という開発コードネームで呼ばれていました。もし今、あなたが『Windows 10』のプレビュー版を使っているのなら、すぐに『Microsoft Edge』を試すことができます。もちろん、皆さんが本当に知りたいのは、「新しいウェブブラウザは、現在使用しているブラウザの代わりになるのか?」という点でしょう。

以下は、米Lifehacker編集部が新ブラウザでいろいろな操作を試してみた感想です。当然ですが、ここで述べる評価は正式リリース前のプレビュー版に対するものなので、正式にリリースされるまでに改良される可能性があるという点に留意してください。

『Microsoft Edge』が搭載する、ユニークで役立つ機能

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Microsoftの発表によると、『Microsoft Edge』では、ユニークな拡張機能がサポートされるようです。そのうえ、開発者たちができるだけ簡単に、ほかのブラウザ用の拡張機能を『Microsoft Edge』に移植できる設計も目指されているようです。とはいえMicrosoftは、ほかのサービスから便利な拡張機能がリリースされるのをただ待っているわけではありません。ここでは、プレビュー版にすでに搭載されているいくつかの機能をご紹介しましょう。

  • ちょっとした質問にすぐ答えてくれる、パーソナルアシスタント「Cortana(コルタナ)」:この点については、これまでGoogleが「アンサーボックス」や「Google Now」風の検索補助機能を追加し、とても気の利いたサービスを実現してきました。しかし、そうした補助機能をすべて統合したアシスタントがあれば、それに適うものはないでしょう。『Microsoft Edge』では、テキストを選択して右クリックすれば、その文章に関連する情報をすばやく調べられます。言葉の定義のほか、右クリックした言葉が住所なら地図を、有名人の名前ならその人についての情報が現れます。Googleの検索機能とは違って、ページを切り替えたり、新しいタブを開いたりしなくても情報を表示できます。
  • 「アノテーション」機能と「リーディングリスト」機能により、従来の拡張機能の一部が不要に:『Microsoft Edge』では、ウェブページのスクリーンショットを保存し、その画像にメモを書き込めます。また、特定のウェブページを保存して後からオフラインで閲覧できる、「リーディングリスト」という機能も追加されました。『Chrome』や『Firefox』などで同じことをするためには拡張機能が必要ですが、『Microsoft Edge』では、その機能が標準で搭載されています。『Evernote』や『Pocket』のヘビーユーザーには、これはあまり意味のない話かもしれません。けれども、わざわざほかのサービスに登録せずに、ウェブ上の記事を頻繁に保存したいという人にとって、『Microsoft Edge』はまさにぴったりのブラウザでしょう。
  • 不要な広告や動画をカットして、記事を読みやすくする「リーディングモード」機能:記事を読もうとしている時に、巨大なバナー広告が現れたり、ページを隠すように動画が再生されたり、勝手に音声を流し始める不快な広告に遭遇したりすると、実に腹が立つものです。そうした広告は、誰からも必要とされていないし、好かれてもいません。ウェブページからテキスト以外の要素をすべて省いて表示させるブックマークレットは、しばらく前からいくつか存在していましたが、『Microsoft Edge』では、こうした機能もブラウザの標準機能になっています。

たいていの場合、ブラウザにはそれほど多くの機能は必要ありませんし、追加したい機能の多くは拡張機能でカバーできます。けれども、ウェブブラウザに機能をたくさん追加すればするほど、ブラウザの動作は重くなってしまいます。『Microsoft Edge』には、あまり多くの機能が追加されていませんが、実用的な機能が厳選されています。

『Microsoft Edge』は『Internet Explorer』とはまったくの別物

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『Internet Explorer』が長年にわたり批判されてきた点のひとつとして、ウェブの標準規格にうまく対応できておらず、ほかのブラウザとの互換性が低い点が挙げられます。つまり、『Chrome』や『Firefox』、『Safari』などで正しく表示されるウェブページでも、『Internet Explorer』で表示すると、正しく表示されないのです。『Microsoft Edge』では、この問題が解消されています。

『Internet Explorer』が多くの問題を引き起こしている原因の一部として、昔からHTML5との互換性が非常に低かった点が挙げられます。こちらの「HTML5互換性テスト」による評価では、最新版の『Internet Explorer』でも、555点満点中348点でした。ちなみに、『Chrome』のスコアは523点、『Firefox』は444点です。『Microsoft Edge』の現在のスコアは390点ですが、このスコアはほんの1カ月前と比較しても確実に伸びています。

このスコアは今後さらに伸びる可能性がありますが、これはMicrosoftが互換性を優先事項に掲げて開発を進めている証でもあります。つまり、『Microsoft Edge』では、ウェブサイトが正しく表示されない頻度が現在よりも少なくなり、ウェブサイトをMicrosoftの環境に対応させるために、開発者が余計な労力を費やす必要もなくなるということです。

まだ最低限の機能しか使えないけれど、なかなか悪くない

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現時点ではまだ、『Microsoft Edge』にはいくつかの機能が搭載されていません。例えば、タブをピン留めする機能や、ウェブサイトを匿名で閲覧する機能のような、現行のブラウザで人気のある便利な機能はまだないようです。もちろん現時点では、『Microsoft Edge』に関して客観的な評価を下すのは困難です。というのも、現在公開されているプレビュー版では、『Microsoft Edge』という名前すら表示されない状況だからです。『Microsoft Edge』はまだ、完成にはほど遠い状態です。

いっぽう、まだ完成していないということは、ソフトとして大きくなり過ぎていないということでもあります。例えば『Chrome』は、PCのシステムリソースを食い潰すブラウザとして悪名高い一面があります。『Chrome』が有名になる前は、『Firefox』にも同じ欠点がありました。そうなった理由はおそらく、私たちがウェブブラウザのさまざまな機能に頼り過ぎているからでしょう。とはいえブラウザには、システムリソースを際限なく使ってしまう性質があるのも事実です。

現時点で、『Microsoft Edge』は比較的機能が少なく、ソフトとしてのサイズも小さいため、スリムさという点では非常に優れたブラウザです。パワーユーザーにとっては、『Microsoft Edge』はこれまでのブラウザに取って代わる新しいツールにはならないかもしれませんが、代替用のブラウザとしては、軽量でとても優秀です。処理能力の低いノートPCや、家族と共用の古いPCを使っている人なら、『Microsoft Edge』はまさにぴったりのブラウザです。『Microsoft Edge』がこのままの路線で行くのかどうかは、実際にリリースされてみないとわかりませんが、現時点では、とても身軽で扱いやすいウェブブラウザと言えます。

言うまでもありませんが、この評価は、まだ正式なブラウザ名も表示されないプレビュー版の感想をまとめたものです。もしあなたが『Chrome』や『Firefox』でいくつもの拡張機能を使用しているパワーユーザーなら、おそらく『Microsoft Edge』にすぐに移行したいとは思わないでしょう。けれども、現時点では、このウェブブラウザはとても有望です。Microsoftは今、ブラウザの悪いところを削ぎ落とし、ゼロから基礎を作り直したうえで、本当に役立つ機能を追加しようとがんばっているようです。

ライフハッカー編集部より

Eric Ravenscraft(原文/訳:丸山佳伸、梅田智世/ガリレオ)

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